ボヤッキ―Ｚの「幽霊の命もこれっきり」江戸小話

夕涼みに来た若者たちが、集まって話していました。

「何でも西寺（さいじ→京都）の墓地から、幽霊が出るんだってな」

「おお、そうよ。みんな怖がって、近頃は人っ子一人、通らぬそうだ」

すると、力自慢の男が言いました。
「幽霊ごときで情けない。おれが行って、退治してくれるわ」

「退治って、大丈夫か？」

「大丈夫。任せておけ」男はポンと胸をたたくと、お酒を一杯ひっかけて出かけました。


墓地に着いた男は大きな墓石のかげで、幽霊が出るのを今か今かと待ちました。

するとうわさ通り、夜中になると、ヒュードロドロドロと、墓石のすき間から幽霊が出てきて、ふらふらと墓地のはずれの方へ出かけていきます。

「今だ」
男は用意してきた粘土を取り出すと、幽霊が出てきた墓石のすき間に押し詰めて、また墓石のかげに隠れました。

しばらくして幽霊は戻ってきましたが、墓石のすき間がなくなっているので墓に戻ることが、出来ません

ヒュードロドロドロ

幽霊は何度もためしましたが、どうしても墓に戻ることが、出来ません。

やがて一番鶏が鳴き始めると、幽霊はへなへなとしゃがみ込んで言いました。

「ああ、私の命も、もうこれっきりだ」



ちゃんちゃん





教訓＝幽霊もセカンドハウスを持つなり、住宅難には早めに「穴吹興産」に相談すべしモンミ





（１４．８．１４）