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2017年04月06日19:43

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「FFXIV」影の安らぎ光の涙(小説)

シロガネ
この話の光の戦士(主人公)。
ミコッテ族身長最小値のちびっこ。

オボロ
忍者のギルドマスター。


この話には「蒼天のイシュガルド」終盤に起こる事を中心に描かれているのではっきり言っていないにせよそういう事が起こるのだとわかる表現がされております。
速い話がネタバレを含んでおりますので、ご注意ください。
あと、書いてる本人にはそのつもりはないですが腐臭がするかもしれません←
ではでは本編どうぞ〜。

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影の安らぎ光の涙


 その日。久方ぶりに姿を現した彼の様子は、それまでの彼の雰囲気と同じように見えていたが…まったく異なる物だった。

 日が沈むころに現れたシロガネの様子に気づいたのは恐らくオボロただ一人。
 他の者と普通に会話をしていた彼をじっと見ていると、その視線に気づいた彼はほんのわずかに、びくりと体を強張らせていた。
 しかし、すぐさま何事もなかったかのようにオボロに向かって頭を下げ。
「お久しぶりです、オボロ様」
 彼がこの、ドマの忍び達が拠点としている船着場の平屋へ姿を現したのは随分と久しぶりの事。
 それまでの間、いったい何があったのか。
 忍びの情報網があれば、そんなことはオボロには筒抜けだった。
「ああ。息災で、何より」
 だが、オボロはただ一つ頷いて彼を受け入れる。オボロの言葉に、シロガネはほっとしたように小さく息を吐いていた。


 日が落ち、辺りを静寂が包み込む。
 近くに川があるこの船着場の平屋では、規則正しい水の流れる音が聞こえているが。それも穏やかな背景音楽だ。
「…随分と、長い旅をしたのだな」
「ええ、ですが。仲間の助けもあり再びここへ戻ってこれるようになりました」
 そんな中、二人は肩を並べ彼の冒険譚を肴に酒を飲み、談笑していたが。
「…それだけでは、なかろう?」
「っ…」
 オボロの言葉に、今度は目に見えて、シロガネの体が大きく揺れた。
 オボロにじっと見つめられ、思わず視線を外した彼の表情はどこか弱々しく。
 どのような窮地に追い込まれても前を見て足を止めずにいる"光の戦士"と呼ばれているそれとは程遠かった。
「……。」
 そんな彼から視線を外したオボロは、今度はそばに控えていたヨウメイに視線を送る。
 それを受け、ヨウメイは一度頭を下げると風のようにその場から消えた。
「…お主は、今夜は泊っていくのであろう?…この地の酒"わいん"と言ったか…は旨いのだが、どうも酔いが回るのが早くてな。少し仮眠をとるとしよう。しばらくはどんな話し声がしても目が覚めぬだろうなぁ」
 ヨウメイが消えたことを確認したオボロは、芝居がかった口調でそう言うと。胡坐をかいたままシロガネに背を向け、わざとらしい寝息を立て始めた。
 そんなオボロの突然の行動に、一瞬呆気にとられていたシロガネは小さく笑う。
 これが、オボロの優しさだとすぐに理解したからだ。
 "光の戦士"として各地を飛び回り、様々な事をしてきたシロガネは…人前で、弱音を吐くことができなかった。
 いや、きっと仲間は弱音をこぼしても受け入れてくれるだろう。
 だが彼自身が己にそれを許さなかった。
 どんな時でも前を向き、歩みを止めず、己の信じた道を突き進む。
 "英雄"と呼ばれ、どんな困難にも立ち向かう姿を示さなければならない、と。
 だが。
「…オボロ様…。寝て、しまわれたのですか?…ならば、話し相手のいないこれは…独り言だ…」
 そう、前置きして。
「…イシュガルドに赴く際も色々とありましたが…かの地でも、様々な事がありました…」
 暁の事、クリスタルブレイブの事、ウルダハの事。
「何度も危険な目に合いました。ですが、危機に陥るたび…俺を…俺なんかのことを"盟友"と言ってくれる人物が、何度も助けてくれたのです」

 時々妙な事を口走っているが、初めて会った時から自分の事を信用し、力になってくれていた友。
 いつも笑顔で、まっすぐで、己の信じた道を突き進んでいた人。

「…そんな友が…散りました。俺を…庇って…」
 敵の背後からの攻撃に、間に割って入り盾でそれを防ごうとした。
 だが、その一撃はあまりに強力で。その盾を、友の体を貫き…。
「…彼は、英雄に悲しい顔は似合わないと、俺には笑顔でいる方が良いと…だ、だから、俺は…笑って…」
 その時の事を思い出しているのか、シロガネの声が震えている。
「お、俺がっ、あの、時。ちゃんとっ、まわり、見て、たら…っ。俺がっ…。俺のっ、せい、でっ…」
 はじめは震えているだけだった声も、嗚咽が混じりはじめ。
「……。」
 それを黙って聞いていたオボロの背に、とんっと何かが当たる感覚が。
 それが何かなどと考えずとも、背後にいるシロガネが背に額を当てたのだとすぐ理解し、甘受する。
 今、この場に誰もおらずとも…泣き声が、姿が見えないとはいえすぐそばに控えているヨウメイやビャクブ、そして目の前にいるオボロに聞かれようとも、泣き顔だけは見られるわけにはいかないという彼の意地がそうさせたのだろう。
 平屋でのシロガネの泣き声は、幸いにして近くを流れる川の音が消してくれる。
 彼が泣いたという事実を知っているのは、この平屋にいる数人だけの密事。
 他の誰も、知る必要はない。

 その後、泣き止んだシロガネはオボロから離れ、その渇いた喉を潤すかのように酒を飲み…そのまま眠ってしまった。
 彼が眠りに落ちる直前、本当に酔っぱらってしまっていたようで、今はオボロの胡坐をかいた膝を枕にすやすやと寝息を立てている。
 そんなシロガネの髪を撫でながら、猪口を煽るオボロの傍に。ヨウメイが姿を現した。
「彼を寝所へ…」
「いや、しばらくはこのままだ。どうにも離してくれそうにないからな」
 布団が敷いてある所へ運ぼうとするヨウメイの言葉を遮り、そういったオボロの姿をよく見れば。確かに眠っているシロガネの手はしっかりとオボロの足を掴んでいる。
 なるほどこれは簡単に外れそうにない。と納得し、ヨウメイは薄手の掛布団を用意する。
「…シロガネ様は…まだお若いのに、随分とつらい旅をされているのですね」
 布団を彼にかけながら呟いたヨウメイの言葉に、猪口を口元へ運んでいたオボロの手が止まる。
「若いと言っても、私とそう変わらぬぞ?」
「あっ…そういえば…」
 オボロは非難する様に言ってはいるが、その口元は笑っている。そして、それを言ったヨウメイも申し訳なさそうにではあるが、小さく笑い。
「…どうにも、この方を幼く見てしまっているもので…」
「本人が起きていれば、斬られても文句は言えんぞ?」
 それを聞き、ヨウメイがひえっと小さく声を出し顔を蒼くする。その様子にオボロはくすくすと笑って、己の膝を枕にしている彼の頭を優しく撫でた。

 しばらくの間、オボロは一人で酒を飲んでいたのだが。
「…しかし……」
 ふいに、小さく漏れた声に空いた皿などを片付けていたヨウメイが動きを止める。 
「…死者に対しどうこう言うのもあまり良いものではないが…彼の盟友という御仁は、なかなかにして酷な事をする」
 本当に小さな声での呟き…本人としては、声に出しているつもりはなかったのだが。
 ヨウメイが動きを止めていることに気づき。そこで初めて声として出てしまっていたのだとオボロは小さく苦笑して。
「…言葉は、時として呪いとなる。本人にその気がなくとも、強烈な場面での言葉は強力な呪となり相手を縛り付けてしまう…」
 そして、猪口を煽りもう片方の手で眠っているシロガネの頭を撫で。
「…もう、人前で泣くことはできぬだろうな」
 もちろん、今回の場合言葉を放った当人に非も罪もない。言葉の呪と言うモノは受け取る側の問題でもある。
 シロガネはその言葉を受け、己自身に呪をかけた。
 まっすぐ前を見据えるため。"光の戦士"と"英雄"と呼ばれその期待を背に突き進むため。己の信じた道を歩むために。
「………忍びとは、光に寄り添う影である」
 オボロは眠っているシロガネを起こさぬよう、優しい手つきでその頭を撫でながら。
「光が強ければ強いほど、影も色濃いものになる。ならば…その影で、泣き顔を隠してやれば良い。今日の様に、な…」 そう言ってオボロはシロガネの頬に残る涙の痕を優しく撫で、そして。 
「酔っぱらいの戯言だ。忘れろ」
「はっ」
 オボロの言葉を受け、ヨウメイは頭を下げ何事もなかったように食器の片づけを再開した。


 早朝、身支度を終えた彼は船着場の平屋を後にする。
「挨拶もしないとは、薄情ではござらんか?」
 平屋に向かい頭を下げ、歩き出そうとした彼の背に声がかけられ、その体がびくりとはねた。
「お、オボロ様…」
 そう言えば、いつも入口に立っているビャクブがいないとこの時思い至り、最初からこっそりと抜け出すつもりだったことがばれていたのだと気づいた。
「…行くのだな」
「……はい」
 シロガネが向かおうとしているのは、友の仇が向かった先。
 そこは普通ではたどり着けない場所ではあるが、そこへ向かう方法も手段も手に入れた。
「…もしかしたら、俺はもうっ…!?」
 しばらく黙っていたシロガネが何かを言おうとしているのを、オボロが手を彼の目の前に出して遮った。
「忍びの道は、刃と心で為すがもの。儚き心は儚き刃に、虚ろう心は虚ろう刃に。強く正しき忍びの道は、強く正しき心の先に…。お主の修行の成果、楽しみにしているぞ」
 そう言って笑みを見せるオボロに、シロガネも笑みを返し。
「はい!では、行ってまいります!!」
 つい最近忍びの修業を始めたとは思えぬ身のこなしで、彼はオボロの前から姿を消し。
 あとに残されたオボロは、朝焼けに染まる空を静かに見上げた。

END

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オボロ様が好きすぎて書かずにはおれんかった…。
あの方も大好きなんだけどね、あのシーンであんなこと言われたらもう、あ…主人公泣けないやん…って思ってしまったわけで。
オボロ様に代弁していただきましたw
しっかしオボロ様の口調難しいな!
ござるってどこに入れたらいいんだ!!?←
あと、話書く上でオボロ様の事調べたら24歳と知ってさらにふぁっ!!?ってなったw


…忍びが光に寄り添う影ってのは速鳥(討鬼伝)っぽいな。
っていうか言ってたかもしれん←

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コメント

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