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2017年03月12日01:03

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経済談義第29回:需要供給の例としてのヤマト運輸

経済談義シリーズ第29回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



前回から為替の説明を始めたところ、ですが、今日は少し寄り道してニュースの話題です。


宅配最大手のヤマト運輸の労働組合が、荷物の取り扱い量を減らすよう会社に要求したというニュースが話題になっています。
ヤマト運輸の荷物量抑制に「賢明な判断」と賛同の声
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=4453802&media_id=29
ヤマト運輸がひどい人手不足に陥っていて、過重労働に耐えかねた労働組合が荷物の取り扱いを減らすよう会社に要求した、と報じられています。


経済学の観点からとらえると、これは需要と供給の問題だといえます。需要と供給についてはこの連載で詳しく説明しましたが、今回のヤマトの問題はそのよい実例になっています。

ヤマト運輸が供給しているのは荷物の配達というサービスです。
ネット通販の拡大などにより配達サービスの需要が増える一方、若者の減少などにより配達員のなり手が減ってきています。
結果として、需要超過、深刻な供給不足の状態になっているというのが現在の状況です。


経済学の教科書が教えるところでは、このような状況では、以下のような仕組みで、価格を媒介として需要と供給が自動的に調整されます。
・需要が増えれば市場価格が上昇し、
・市場価格の上昇は経営者の投資意欲を刺激します。
・市場価格の上昇はまた、給与相場の上昇につながりますので人材の流入を促します。
・需要と見合うレベルまで供給の増加は続くことになります。

特に、アベノミクスの理論的背景であるケインズ理論では、景気は需要と供給のバランスによって決まるものであって、不景気の原因は需要不足であると説きます。そして、政府が需要を強制的に作り出すことにより景気はコントロールできるというのがケインズ理論の骨子です。

ですから、需要増加で供給不足という今の状況は、本来ならアベノミクスが望むところのはずです。


ところが、今回のヤマトのケースではこうした好循環にはつながっていません。宅配の需要は増加しましたが、宅配の価格は上昇していませんし(これから検討するようですが)、配達員の給与も増えていませんし、ですから配達員に転職しようという人も増えません。
それどころかむしろ、重労働に耐えかねて辞職する人が続出し、残されたメンバーがさらに苦しくなるという悪循環です。

これはおそらくは、これまでの記事で説明した、需要と供給の絶対的な不均衡に陥っていて、ケインズ理論の限界が露呈している可能性が高いと僕は考えています。需要さえ増えれば日本は救われるなどという能天気なリフレ理論は、日本ではもはや破たんしているのです。


つぶやきにも書きましたが、次のような逆説がこれからの日本では顕在化してくると思います。
これから日本は超高齢化社会に突入していくわけですが、ケインズ経済学の観点からいうと、お年寄りは生産せず消費だけをするので、純粋な需要発生装置としてモデル化できます。すなわち、世の中が年寄りばかりになれば需要不足が解消して永遠に好景気が続くことになります。
そんなおかしなことが起こるなどと、世の中のケインズ学者は果たして考えているのでしょうか、一度意見を聞いてみたいところです。



連載バックナンバー:
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1942875057&owner_id=277042
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