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2017年02月25日23:30

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極私的RADIOHEAD論

るんるん…「IN RAINBOWS」/RADIOHEAD



現在、最も影響力のあるビッグなUKバンドといえばRADIOHEADだろう。

1993年にデビューしたときは、当時、隆盛していたブリットポップバンドの中でも“Creep”のみがヒットした地味な存在であったが、「OK COMPUTER」での大成功からの彼らのサクセスストーリーはご存知の通り。

その、1993年に発表されたデビュー作「PUBLO HONEY」を聴くと、「KID A」以降のRADIOHEADしか知らない人は、少しびっくりするんじゃないだろうか。

このアルバム、実に聴きやすい、ポップでキャッチーなギターポップアルバムである。

本作に収録されている“Creep”は、トム・ヨークのボーカルといい、曲の雰囲気といい、「OK COMPUTER」あたりに通じる陰鬱な雰囲気も感じるが、それ以外の曲はビックリするぐらい聴きやすく甘いメロディに満ちている。

ただ、特徴がないのも事実で、実際、この頃の彼らは“Creep”1曲の一発屋になりかけていたのは、なんとなくわかる気がする。

続く2nd「THE BENDS」は「PUBLO HONEY」の延長線上にある、ギターポップなのだが、このアルバムはその1曲1曲が驚異的に完成度が上がっている。

代表曲といってもいいであろう“Just”や“High And Dry”あたりの有名曲はもちろん、そのほかの曲もキャッチーながら独特の浮遊感と哀愁のある、非常に充実した出来になっている。

前作では青臭さが感じられたトム・ヨークのボーカルは、現在にも通じるあの堂々とした歌いまわしになっとり、3本のギターを有効に使ったアンサンブルもこのアルバムから本領発揮といったところである。

聴きやすさと、ギターが鳴っているロックとしての聴きごたえという点では、このアルバムはピカイチで、彼らのロックサイドの名盤としてもっと評価されてもいい一枚ではないだろうか。

このアルバムで、彼らは特に英国で成功をおさめ、いよいよビッグな存在になっていく。

その地位を確立させたのは、「NEVERMIND」や「(What's The Story)MORNING GLORY?」と並んで90年代の名盤と評される「OK COMPUTER」を発表する。

このアルバムは、メンバー自身も世間では受け入れられるか不安を感じた、というほど陰鬱で悲哀な雰囲気を醸し出したアルバムなのだが、メンバーも想定外の大成功を収めるに至る。

基本的には「THE BENDS」の延長線上にあるものの、冒頭の“Airbag”のギターからして聴き手を絶望の淵に突き落とすような迫力だし、続くのがあの“Paranoid Android”なんだからこの時点でお手上げだ。

“Exit Music(For A Film”と“Karma Police”の絶望的な暗さは、ちょっとほかには真似できないし、“No Surprises”の幻惑されるような浮遊感も美しい。

このアルバムは間違いなくロックが到達した一つの頂点であり、それと同時にRADIOHEADがギターをかき鳴らすロックバンドだったのは本作までで、次作からはいよいよRADIOHEADがRADIOHEADらしくなっていく。

その問題作「KID A」が発表されたのは、奇しくも2000年。

ここで彼らが提示したのは、ギターをほとんど排除した、アンビエントを思わせる音世界だった。

キャッチーな要素を極力排除した、聴き手を試すような作風なのは間違いなく、冒頭の“Everything in Its Right Place”からして挑みかかるようなキーボードの音が聴き手を刺激し、その後も全編でアンビエントの世界が広がっていくのだが、ラストに収録された“Motion Picture Soundtrack”のハープの美しさで、最後は聴き手の心をさらっていってしまう。

2000年以降のロックを彼らが提示した作品といっても過言ではなく、結果、このアルバムはシングルカットもミュージックビデオの作成も行われずリリースされ、英国では1週間で30万枚を売り上げ、全米では初となる1位、日本でもオリコン総合チャートで3位を獲得し、天文学的な大成功を収める。

その後、約1年という短いスパンで発表されたのは「AMNESIAC」。

前作とそれほど発売期間が空いていないこと、ジャケットも類似していることから「KID A」の兄弟作のような作風かと思われたが、ここで彼らはまたしても良い意味で期待を裏切る。

たしかにアンビエントな作風は感じられるものの、ここではギターをはじめピアノやストリングス、パーカッションなど生楽器が大胆に導入されている。

その美しさが結集した“Pyramid Song”や、ジャズ風のアレンジがおしゃれな“Life in a Glasshouse”など、アンビエントとエレキギターをはじめとする楽器のアンサンブルが融合した音世界は現在までの彼らのスタイルのひな型といってもいいだろう。

続いて発表された「HAIL TO THE THIEF」は「AMNESIAC」のスタイルを継承した作風となった。

おそらく同一の作風を継承したのは初めてではないかと思う。

このアルバムではその作風に自信をもった彼らの迷いのなさが如実に表れている。

「IN RAINBOWS」はその作風の中でも、エレキギターの存在を前面に出した、ライヴ感あふれる作品で、3本のギターがおりなすギターリフが非常にカッコいい。

この作品でも彼らは、まさにエレキギター奏法の限界のひとつに挑みかかったのではないかと思われるほどエキサイティングだと思う。

そのエキサイティングなアティチュードは「THE KING OF LIMBS」でも垣間見られる。

ギターロックバンドとしてのRADIOHEADの凄味は「IN RAINBOWS」と「THE KING OF LIMBS」に現れているんじゃないかと思う。

最新作「A MOON SHAPED POOL」は「THE KING OF LIMS」のようなエキサイティングな作風とは一線を画す、美しいアンビエントな世界が広がった作品となった。

このアルバムはトム・ヨークの歌うメロディの質にこだわった印象があり、キャッチーとは一線を画す、独特の美しさを持ったアルバムだと思う。


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