Ｙ君がピンチです。

　Y君を週２回，水曜日と金曜日に１時間ずつ面倒を見ています。教室から取り出して，わたしの小部屋で個人的にケアをしています。
　勉強はできません。運動もできないし，とりたてて自慢できるようなことは何もありません。勉強はできないのでやる気もありません。わたしのところへ来ても，今のところは毎時間遊んだり話し相手になったりするだけです。
　そのＹ君はいろんな場面でいまピンチです。教室ではいろいろとちょっかいを出され，いじられているようです（見方によってはいじめかもしれません）。それなのにわたしたちは有効な手助けができません。

　Y君はわたしのところに来ると，「腹へった」といつも言います。今日は１時間目でしたが，そんなときでも「腹へった」です。朝は何も食べていないと言います。それどころか，
「何も食べていないし，何も飲んでいない」
　そう言います。たぶん朝ご飯が用意されていないのだと思いますが，Y君ははっきりそうは言いません。昨日の晩ごはんは何を食べたの？，と聞くと，「嫌いなものだったから食べなかった」と言いました。
「昨日の夕方，コンビニでファミチキとスープを食べて，コーラを飲んだ。それから何も食べていない」
　Ｙ君は母子家庭で母と子ひとりです。おそらく晩ごはんも朝ご飯もつくってもらっていないと思います。でも，Ｙ君はそうは言いません。「好きなものじゃなかったから食べなかった」と言います。
　Ｙ君のお母さんがどういう人かはわかりません。いろいろと想像をめぐらすとネグレスト（育児放棄）かと思われますが，本人はあくまでも母親をかばいます。彼にとっては唯一の保護者ですから当たり前といえば当たり前です。
　わたしから見てＹ君はいま，相当緊迫している状況にあります。唯一の保護者である母親からは，たぶん食事さえ満足につくってもらっていません。何も面倒を見てもらってないと言っても過言ではないでしょう。
　でも，本人は「困っている」と言いません。言わない以上わたしたちはほとんど有効なアクションがとれません。学校も，民生委員も，児童相談所もみんなそうです。本人（家庭）の意向を無視しては行政機関はほとんど何も手出しできないのです。

　事件や事故が起きなければいいがと心配ですが，何もできません。