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2016年11月23日14:25

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第五話:人の心を宿せし者【その2】

【創作まとめ】
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【前回】
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闘志を取り戻したオーガインに対し、オベロンのガトリングガン再び火を吹く。
離れて戦っていては不利になると判断したのだろう、オーガインは左右にジグザグに走りながら被弾を散らし距離を詰める。

「オベロン、ヒートロッドだ」
「ラジャ」

オベロンの背部に取り付けられたバックパックが展開し、中からヒートロッドが取り出し右腕に装着され、迎撃態勢を整える。

「鬼閃角(きせんかく)ッ!」

対するオーガインも左腕のパイルバンカーの杭を槍のように引き出しボディ目がけて振り抜くが、オベロンはそれをヒートロッドを縦に構え軌道を逸らす。
だがオーガインはそのまま勢いに任せ、すれ違いざまに膝蹴りを繰り出しオベロンを吹き飛ばす。

「迷いがなくなった分、勢いに乗った攻撃を繰り出すねえ」

博士は二人の改造人間の戦いを楽しそうに観戦している。
彼にとっては改造人間同士の戦闘データさえ採取できれば、どちらが勝っても構わないので気楽なもんね。
オベロンが勝てばそのままデータを持ち帰ればいいし、オーガインが勝った場合は私がデータを持ち帰るだけだから。

「おおおおおッ!」

一見すると闘志を取り戻し勢いに乗っているオーガインが押しているようにも見えるが、その実、オベロンの方が有利に進めている。
その理由は簡単、オーガインには手軽に使用できる射撃武器が装備されていないからだ。
距離があけばオベロンにはガトリングガンがある。
無理に接近戦で対抗せずにヒートロッドで上手く攻撃をいなし、距離をとる。
そしてガトリングガンで狙えばいい。
一撃必殺の威力こそ無いが、確実にオーガインの装甲は削られていくわけだ。
一方、オーガインは接近戦に持ち込むにしても、常にヒートロッドの攻撃を警戒しなければならないため、パイルバンカーを引き出した状態で戦うしかない。
パイルバンカー特有のゼロ距離からの爆発的一撃が使えない以上、決め手に欠けるわけね。
プラズマレーザー砲もあるにはあるが、俊敏に動くオベロンに対し瞬時にロックオンすることが出来ずにいる。
一瞬でもオベロンの足を止めることが出来れば勝機が見えてくるのだけれど、同等のスペックである以上一方的な展開を期待するのは無理があるわ。

「うーむ、オーガインよ」

しばらく二人の戦いを観戦していた博士がオーガインに呼びかける。
また心理戦で彼の心を挫く作戦なのだろうか。

「僕はもっとこう、血沸き肉躍る改造人間同士のド迫力バトルが見たいわけなんだが、君の戦い方って地味だよね」

まさかのダメ出しだった。
この人は戦闘中に何を考えているんだか。

「どういう意味だ?」

何度目かの接近戦を試みながらオーガインは困惑するように答える。
そりゃ敵からダメ出しされたらそうなるわよね。

「なんて言うかね、君って内蔵武器を使った地味な戦い方しかしないよね?」

言われてみればそうね。
今までの彼の戦い方を思い返しても、パイルバンカーやマイクロミサイルといった、内蔵武器を使って戦っていることが多いわね。
せいぜいワイヤーアンカーを補助的に使うくらいで、それだってオーガインの内蔵装備といえばそうなるわ。

「もっとさ、なんて言うか、内から湧き出る不思議なパワーとか無いの?」

とんだ無茶振りが飛んできた。
機械工学を操る天才科学者の言葉とは思えないわ。

「漫画やアニメじゃないんだ。そんな不思議なパワーがあるわけないだろ!」

オーガインもふざけるなと言わんばかりに抗議している。
まぁ、真面目に戦闘しているところに不思議パワーとかスピリチュアルなこと言われると怒りたくもなるわよね。

「ホントにそうかな? 色々お膳立てしてあげたんだけど、何も感じない?」

お膳立て?
博士はオーガインに対して何かしたとでもいうの?
私はこの倉庫に入ってからの一連の戦闘を思い返す。
オーガインとオベロンが戦っていたわけだけど、途中から博士が言葉巧みに心理戦をもちかけ、オーガインの心を一度は挫いた。
その後、私が発破をかける形でオーガインを励まし、再び闘志を持ち直したわけだが。
もし博士の心理戦がオーガインの心を挫くためのものではなかったとしたら?

「どういうことだ?」

博士の言葉に困惑するオーガイン。
っていうか、最初からずっと困惑しっぱなしね。

「何も感じないなら、もういいよ」

博士はずっとオーガインの心を煽っていた。
もしその目的が心を挫くためのものではないのだとしたら・・・・・・怒り?
博士はオーガインの怒りに火を着けようとしていたのだとしたら・・・・・・
あり得る。
充分過ぎるほどあり得るわ。
博士はオーガインに眠る鬼の血を目覚めさせるのが目的だったということね。

「オーガイン、怒りを爆発させなさい!」
「だから、どういうことなんですか!?」

私は咄嗟に叫んでいた。
何故ならオーガインとオベロンは同等のスペックを有している。
オーガインに鬼の血が秘められているのなら、同様にオベロンにも秘められている。

「もう遅いよ。オベロン、ウエポンシステムを解除しろ」
「ラジャ」

博士の言葉に呼応し、オベロンはオーガインから距離を置くと背部のバックパックとともに左右の腕に装着された武器を切り離すと、ズドンと重々しい音を立て、地面に土煙をあげながらバックパックが落下する。
いったいあのバックパックにどれだけの武器が収納されていたのか。

「君が今までの戦いの中で、何も進化していなかったというのは残念だよ」

博士は天を仰ぎ右手で顔を覆い、なんだか悲劇に酔いしれているようなポーズをとっている。
相変わらず自分に酔いたがる人ね。

「オベロン、ブラッドフォーム起動だ」
「ラジャ」

返事をするや否や、オベロンの体が細かく振動しながら、動力炉の回転数が上がった時にする、キーンという音が響き渡る。
ブラッドフォーム。
それは改造人間に秘められた鬼の血を目覚めさせ、強力な力を引き出すための姿。
ブラッドフォームが起動したということは、おそらくオベロンの脳内で大量のノルアドレナリンとドーパミンが分泌されているはず。
本来ならアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンが脳内で分泌されることにより、人は喜怒哀楽を感じ取ることが出来る。
その中でも少量のアドレナリンに対し、大量のノルアドレナリンとドーパミンが分泌された時に現れる感情は・・・・・・怒りと憎しみ。
この二つの脳内物質がエナジーリキッドと混ざり合うことで化学反応が起こり、オーガブラッドが生成される。
生成された鬼の血は改造された機械の肉体を駆け巡り、爆発的な能力を発揮させるのだ。
その反応として、ナノマシンで構成されたオベロンの白いボディは、赤黒い血の色へと変色していた。
これが改造人間、オーガシリーズの超過駆動の姿である。

「なんだ、そのおぞましい姿は・・・・・・」
「終わりにしよう、やれ」
「ラジャ」

困惑するオーガインをよそに、返事をしたオベロンは一瞬でその姿を消す。
いや、この場合は視認不可能なレベルで動いたと言うべきね。
そして消えた瞬間には、オーガインのボディへ拳がめり込み、その衝撃に獲物を十数メートル吹き飛ばす。
もはや決められた性能しか発揮されないウエポンシステムよりも、素手の拳の方が威力があるということね。

「いったい何が起きたと言うんだ」

人間なら即死級の一撃だが、オーガインは辛うじて上体を起こす。
しかしその瞬間にはオベロンが回り込み、彼の右足の爪先が顎を捉え、力任せに機械の肉体を天高くへと誘う。
そして機体が最高点へ到達する頃には再び先回りをし、今度は両腕をガッチリ組み合わせ鈍器となった拳を打ち下ろす。
その威力はまさに落雷の如く地面に突き刺さり、あたり一面に土煙を巻き上げさせる。
圧倒的パワー、圧倒的スピード、そこから繰り出される氷のように冷静で的確な攻撃。
その全てがオーガインを大きく凌駕し、蹂躙する。

「解ったかい? これが改造人間の力だ!」

今日何度目かの博士の笑いがこだまする。
人間なら、怒りと憎しみに囚われれば冷静な判断力を損なう。
しかし改造人間なら、いや、脳改造を受け感情を持たない改造人間なら、必要な脳内物質を機械的に分泌させ、制御することが出来る。
それは脳改造を受けずに感情を内包した改造人間であるオーガインには不可能なこと。
感情があるからこそ、怒りと憎しみに囚われ、冷静な判断力を見失う。
そして戦場という、一瞬の判断ミスが死をもたらす世界では致命的なシステム。
私はオーガインが石動雷馬であるがこそ、このシステムを彼に伝えなかった。
感情を持った彼にとっては、欠陥システムに他ならないから。

「せっかく君のことを思って、嫌な役を引き受けて煽りまくったのに、本当に残念だよ」

土煙の収まった現場には、無惨にも地面にめり込んだオーガインが姿を現す。
とてもじゃないが、戦闘続行は不可能に見える。

「ふざけるな」
「お? まだ生きているのかい?」

オベロンは力任せにオーガインを地面から引き抜き立ち上がらせると、アッパー気味に拳の連打を繰り出す。
それはオーガインの体を打ち抜くたびに持ち上げ、彼の足は地面から浮き上がる。
それほどのラッシュ、圧倒的連打。

「怒りと憎しみによる力がなんだ」

無数の拳に打ち付けられ、オーガインの装甲はボコボコに変形し、各部のヒビからエナジーリキッドが漏れ出し飛び散り、返り血のようにオベロンに降り注ぐ。

「そんな感情、いくら束ねたところで正義の心は折れやしないぞ!」

オーガインはオベロンの胸板を蹴り上げ舞い上がると、エアスラスターを使って一直線にオベロンへと突き進む。

「オーガインキィィィックッ!」

気合い一閃、起死回生の飛び蹴りを繰り出すが、当たる寸前にオベロンの姿が掻き消える。
そして着地した後ろに現れ、裏拳がオーガインを襲う。

「だが圧倒的だ」

その光景に勝ち誇る博士。
どう足掻いてもブラッドフォームに覚醒したオベロンには勝てないの?

「それでも、負の感情に俺は屈しないッ!」

力任せに拳を揮うがオベロンには掠りもしない。

「人の心を、怒りと憎しみで縛るなッ!」

オーガインの拳をするりと躱し、カウンターの一撃を叩き込むオベロン。
それでもオーガインは倒れない。
もはや気力だけで立っていると言えるだろう。
そして、それは感情を持たないオベロンには不可能な領域。

「人の心の可能性は、無限大なんだああああッ!!」

限界を超えた精神が奇跡を起こす。
感情を持たない改造人間の可能性を凌駕する。
オーガインの叫びが無形の力となり、不思議な力場を発生させオベロンを拘束する。

「まさか!? これはもう一つの可能性、オーバーイマジンシステムなの?」

人の想いを形にする力。
脳改造を受けて感情を持たないオベロンには決して発動することの出来ない閉ざされた可能性。
人の心を持ち続け、信じ続けたオーガインが到達した進化の可能性。

「今よオーガイン、今こそやっちゃいなさい!」

オーガインの両肩のアーマーが、オベロンの攻撃によってひしゃげたアーマーが、ギギギと重い音を鳴らしながら展開する。
そこには工学兵器特有のレンズが現れる。

「くらえ、雷閃光ッ!」

見えない力場に拘束され身動きが取れないオベロンを、ロックオンすると同時に照射される光。
それはビームではなくレーザー。
雷を纏いし閃光は光の速さで空間を焼滅させる。

「おおおおおおおツ!」

空気を揺るがし、粉塵を焦がす臭いが充満させ、光の束が憎しみを薙ぎ払う。
魂を体現するような雄叫びが終わる頃、光の束も収束した。
そこには圧倒的ラッシュでオーガインを蹂躙した両腕を失った、オベロンが立ちつくしていた。
失った両腕の付け根からは大量のオーガブラッドが噴き出し、鬼の血の恩恵が失われていく。
血は薄まると覚醒状態が収まり、元の白いボディに戻ったオベロンは片膝を地につき沈黙する。


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「見事だったよ。まさかあの状況でオーバーイマジンを発動させるとはね」

拍手をしながら近づいてくる博士。

「君を・・・・・・君の可能性を残しておいて正解だったね」
「褒められても嬉しくもないな。さて、お前を逮捕させてもらうぞ」

だがオーガインは動かない。
いや、限界を超えたバトルにより、一日二発しか撃てないプラズマレーザー砲でエネルギーを使いきり、動けないと言っていいだろう。
それだけ今回の戦いが激しかったということね。

「すみません桜子さん、自分の代わりに手錠を掛けていただいていいですか?」
「私、民間協力者で正式な警察官じゃないから逮捕権持ってないわよ?」
「え?」
「うん、手錠とか持ってないし」

私はおどけるように両手をひらひらさせて見せる。
私に逮捕権がないのは勿論だが、仮にあったとしても博士を逮捕させるわけにはいかない。
それが特機とシャドール、両方に在籍する私の任務でもあるのだから。

「えー、せっかく苦労して追い込んだのにどうするんですか?」
「いや私に言われても困るわよ」

とりあえず私はポケットから携帯を取り出し、外で待機している特機のメンバーに連絡を入れるフリをしよとするが・・・・・・

「・・・・・・あ」
「どうしたんですか?」
「プラズマレーザー砲の電磁波で携帯壊れてる」

プライベート用の携帯は別にあるからいいとして、これじゃ応援を呼ぶこともできないわね。
さあ博士、今のうちにここから逃げてくださいね。
と、目配せをしてみたが、当の博士はどこ吹く風やら、全く気付いてない様子。
何で? あんた今結構なピンチなはずなのよ?

「さて、君のデータをいただくとしようか」

博士はポケットから携帯用ハードディスクとUSBケーブルを取り出し、オーガインににじり寄る。
その表情は満面の笑みで彩られ、動けないオーガインを見て楽しんでいるようだ。
あ、変態の顔になってる!

「お、おい、それ以上近づくな! 俺のデータは桜子さんにしか開示しないんだよ!」
「何か誤解を受けそうだから、その言い方やめてくれる?」

私はオーガインが動けないことをいいことに、小キックの連打を叩き込む。

「あれ? 何で自分が最大のピンチに陥ってるんですか? いや、前から後ろからとかやめてくださいよ」

前からはにじり寄る博士、後ろから小キックを連打する私。
先ほどまで超絶バトルを繰り広げていた超戦士には見えない狼狽えようね。

「優しくするから、さぁ力を抜くんだ・・・・・・挿れるよ?」
「あヒんッ」

なんかBLっぽい会話をしながら、首筋のUSBコネクタにケーブルが差し込まれる。

「やだッ、俺の全部が・・・・・・桜子さん以外、誰にも見せたことのない俺の全部が、嫌なのに全部見られちゃううううッ」
「へっへっへっ、良いではないか良いではないか」
「アンタたち、いい加減にしなさいよッ!」

何だこの会話。
放っておくとどこまでもおぞましく気持ち悪い会話が続きそうだったので、二人まとめて大キックを叩き込む。

「痛いじゃないか、桜子君」
「痛いじゃないですか、桜子さん」
「ハモんな!」

この二人、本当に敵同士なの?
さっきまで殺し合いをしていたなんて思えないくらい仲いいんだけど。
だいたい今回の戦闘データは私が回収して博士に渡すんだから、なにも今回収する必要ないんだけど。

「ふっふっふっ、万が一の可能性を考えて、隣の部屋に隠れておいた甲斐があったな。まさかこんな千載一隅のチャンスが舞い込んでこようとはな」

不満そうにこちらを睨み返す博士とオーガイン。
この二人、本当は仲いいんじゃないだろうか。
そして実は私の方がこの二人にはめられてるんじゃないだろうか。
そんなアホな勘繰りをしてしまいそうよ。

「だがどうする? 僕を逮捕するため、桜子君に応援を呼ばせに行くと、君のデータは抜かれ放題だ」
「おのれ・・・・・・」
「かと言って僕をずっと監視していても応援は来ない」
「ちくしょう・・・・・・」

二人は私の考えなどよそに、楽しそうに会話をしている。
天才とアホは紙一重というが、二人ともアホの部分が意気投合しているようね。

「このチャンスを活かして、私が新たに四大長になり代わってやる」

とはいえ、二人の会話をずっと聞いているのもアホらしい。
今回の作戦は深夜に実行しているので、いい加減眠いわ。
そろそろ切り上げて帰りたいんだけどな。

「さあどうする? おとなしく僕にデータをよこすんだ」
「お前の自由になんてなってたまるか」
「身動きできない君が凄んだところで全然怖くないもんね」
「くそっ、動け俺の体!」

博士にも早めにお引き取り願って、今日はもうお開きとするか。
そして明日はゆっくり寝よう。
朝から晩までよく頑張ったよ私。

「その為にもこの場にいる全員を殺して証拠隠滅する・・・・・・ってお前ら人の話を聴けッ!」
「うるさいよ!」
「今それどころじゃないんだよ!」
「さっさと終わらせたいんだから黙りなさいよ!」

三者三様に怒鳴り返す。
って誰?

「お前ら、人を散々馬鹿にしおって・・・・・・このブラックサタデー総帥が直々に始末してやる!」

怒りに肩を震わせるブラックサタデー総帥は、オベロンに誘拐されたはずの岡田教授だった。
この人、なにやってんの?

【その3へ続く】
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