「生業と便乗」

　沖縄の高江や辺野古で基地反対運動をしている多くの「プロ市民」と言われる人たちは、沖縄の地元の方ではなく、「基地建設妨害」を目的とする「支援団体」からの資金を得て「地元民」に成りすまして、「抵抗運動」を繰り返すことで生活を成り立たせているものと言われています。その背景には「基地の存在によって仕事を得て暮らす多くの沖縄県民」と、「基地の存在の被害を強調して多額の補償金を得ている沖縄行政」。「それを固定化してマッチポンプを繰り返す沖縄タイムスと琉球新報」とがあり、「基地の仕事で給料を得ている人たち＝生業」に対して、「基地反対に便乗して資金を得ている人たち＝便乗」と言う構造に見えています。

　この構造は何も沖縄に限ったことではなく、日本にもアメリカにもあります。ただ、アメリカの「新自由主義」は「便乗を際限なく拡大していくことを許す」物であり、日本はもともとそうではなく「公正」とか「正義感」と言った「倫理観」に支配されてきたため自動的にブレーキがかかり、一見「生業」で成り立っているかのように見えるだけではないかと思います。このような視点で見ると、今回のアメリカの大統領選挙で見えてくるのは、民主党の８年間は「便乗」であって、「政治」は「資産家やウオール街」によって買収され、政治家も「クリントン財団」など「口利き」などで莫大な資産を築き、反対に国民生活は極端な格差拡大に傾き、移民や難民の受け入れによって、雇用が奪われ低賃金が固定化され、中間層の減少を招き、犯罪が多発して多くの死者を出しました。その間、国際紛争や外交でも「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言し、覇権を放棄したため、国際貿易においても多くの障害が発生し、世界全体の景気が低迷し、こぞって金融緩和したために、アメリカ国民にとっては「犯罪増加」「景気低迷」「所得の低下」を招きました。

　ここをトランプさんは突いたわけです。一握りの資産家やウオール街に便乗した「オバマ政権」が国民の生活向上よりも、「資産家べったりの政治」をしていて、「国民の生業を守る事」をないがしろにした現状を憂いて、「国民主権」を取り戻すことを声高に叫んだ。「プロ市民」ならぬ「プロ政治家の腐敗」を取り上げて、素人の「生業経営者」が「国民の生命財産を守る」政治をすると必死に訴えた「構図」に外なりません。これに対して、ヒラリーさんは「敗北宣言」でもおっしゃったように、「アメリカは自由の国だ、そこにはアメリカンドｌリームがあり、誰でもガラスの天井を行き破ることができる。自分は失敗したが、早い機会に若者が突き抜けてほしい」と演説しました。彼女の眼には「自分が大統領になると言うアメリカンドリームの達成」しか見えずに、国民の暮らしを国民と共によくするという「生業＝使命」を忘れていたのではないか？と思います。

　マスコミもこれまでアメリカの政治が「便乗体制」で成り立ってきたために、国民の「生業」の視点からの主張を「暴言」と錯覚して、トランプさんを異端視してきましたが、その演説内容を見る限り普通の政治家のように耳障りよく言いくるめるのではなく、生々しく現実の身近な問題をがなり立てる素人のトランプさんをこき下ろしてきましたが、誠実に自分の思いを語っているだけで、何一つおかしなことは言っていません。テレビの街頭インタビューで多くの方が「トランプさんは今まで誰もが言いたくても言えなかったことをズバリと言ってくれたから支持した」と言っていてことが印象的でした。

http://www3.nhk.or.jp/news/special/2016-presidential-election/republic3.html

　翻って、我が日本ですが、やはりアメリカのように「政治」が「経済界に買収されてはならない」と言う事から、「政党助成金」を税金から払い、その上に別途「政務調査費」を払って、「政治が資産家から買収されない」ようにしてあるのに、それでも「政治献金」は無くならず、「法人税を引き下げて、国民の財布から直接取り上げる消費税を引き上げる」ことを止めません。外交面でも「北朝鮮が５回目の核実験を成功させ、ミサイルが日本の排他的経済水域に打ち込まれても、核保有国として認めず、家のすぐそばで火事が起きているのに火事と認めません。中国や北朝鮮のミサイル基地を叩く能力を持たないし、ドイツのようにアメリカの核兵器のボタンを押す権利をアメリカにもらう事もしません。習近平や金正恩がトルーマンより善人だという保証もありません。

　今度トランプさんに、「日本も核開発しろ！」「防衛費全額負担しろ！」と言われて、「エッ！」ってびっくりしている我が国の平和ボケも相当なものです。日本もそろそろ「便乗型政治」から脱却して、国民主権の「生業型政治」にまじめに取り組むべき時が来ているのじゃないでしょうか？