「イスラム」に揺れる米社会=寛容性への挑戦に−大統領選
米バージニア州でイスラム教団体「ムスリム・ソサエティ」が運営するモスク(イスラム礼拝所)を訪れるイスラム教徒=6日
11月投票の米大統領選で争点の一つに浮上したのは、米社会が「イスラム教」といかに向き合うかだ。共和党候補のドナルド・トランプ氏(70)は、国内外で相次ぐテロを受けてイスラム教徒の入国一時禁止案などを主張。大多数が異議を唱えるものの、国内のイスラム教団体は「2001年の同時テロ以降、風当たりは最悪」と訴える。
オバマ大統領は過激派組織「イスラム国」(IS)などのテロ組織を非難する際、あえて「イスラム過激派」という言葉を用いない。西洋文明とイスラム教の戦争をあおるISの策略にはまることになるためだ。
米メリーランド州ボルティモアのモスク(イスラム礼拝所)を訪問したオバマ大統領(右から2人目)=2月(ホワイトハウス提供)
◇「納得できない」
「宗教的な動機は明白なのに、なぜイスラムのテロリストと呼ばないのか」。バージニア州リッチモンドの軍関連組織で働くティナ・ハウチンズさんは9月、オバマ大統領との対話集会で直接ただした。ハウチンズさんは07年5月、当時19歳だった息子のアロンさんをバグダッドでの爆弾テロで亡くしている。
オバマ氏は「ISはイスラム教徒を殺害している」などと丁寧に語った。ハウチンズさんは取材に対し、「全てのイスラム教徒が悪でないことは理解するけれど、納得はできない」と打ち明けた。
民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(68)もオバマ氏に同調。これに対して、トランプ氏は「イスラム過激派と言うべきだ」と激しい批判を展開する。
米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏=21日、ノースカロライナ州(AFP=時事)
◇憎悪犯罪が激増
米モンマス大学が9月に行った世論調査によると、「イスラム教徒の米国入国禁止」に全体の74%が「反対」と回答した。一方、カリフォルニア州立大学が全米20州で調査したところ、15年に起きたイスラム教徒への「憎悪犯罪(ヘイトクライム)」は前年比78%も増加している。
背景にあるのは、昨年11月のパリ同時テロや12月のカリフォルニア州サンバーナディーノの銃乱射など国内外のテロへの不安だ。移民・難民を拒む世界的な風潮も相まって、トランプ氏が「米国第一」を掲げて他者の差別を正当化する「むき出しの大衆迎合主義」(オバマ氏)は、米国を体現してきた寛容性を大きく揺さぶっている。
◇「米国が試されている」
バージニア州のイスラム教団体幹部で米国生まれのリズワン・ジャカ氏(44)は12年11月の前回の大統領選前、イスラム指導者らと共にトランプ氏と会合を持った。イスラム教は平和を追求しているなどと説明すると、トランプ氏は「私はイスラム教徒を愛している」と答えたという。
ジャカ氏はトランプ氏の一連の差別発言について「人々の恐怖心をあおっている。ただ、本質はビジネスマンでコメディアン(喜劇役者)だ」と見る。その「コメディアン」であるトランプ氏の言葉は、ジャカ氏の子供を含む地域のイスラム教徒への嫌がらせを助長している。
「コーラン(イスラム教の聖典)によると、神は耐えられない試練は与えない。米国が今、試されている」(ジャカ氏)。(ワシントン時事)(2016/10/22-15:15)
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http://www.jiji.com/jc/article?k=2016102200163&g=use
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