１６日は 「Original Copy」
「彷徨のゆくえ」
「国のない国旗」
「国境に生きる〜難民キャンプの小さな監督たち〜」
１７日は 「凱里ブルース」
「ぼくは詩の王様と暮らした」
「【ショートナイト】アニメセレクション」を観に行きました。
「Original Copy」 ’15 (独･印)
監督：Florian Heinzen-Ziob，Georg Heinzen
高層ビルのこちらに取り残されたようなムンバイの旧市街の古い 〃 映画館。
そこで働く看板描きの老人に密着したドキュメンタリー。
よく調べずに行ったら英語字幕のみだったので 詳しい内容の把握に自信なし(笑)。
しかし主人公の仕事はかつて日本の町々で普通に見られたもので、
そのプロの仕事ぶりに魅せられる。上手いのよ！
資料を見て描くわけでもない馬とかヘリとか人とか。
歩いて行ける範囲に映画館が何軒もあって
そこにこういう手描き看板があったよなぁ…
この間の「漫勉」で池上遼一が看板屋に勤めてたと言っていたけれど
マンガ家で看板屋経験してる人他にもいたような気がする。
絵心のある中卒，高卒の就職先だったのかも。
ドイツ人監督の作品なのだけれど
この絵看板ってヨーロッパにはないんだっけ？？
タバコがね、実にうまそうだったよ。
「彷徨のゆくえ」 ’15 (印･仏)
監督･脚本：グルヴィンダル･シング
84年インド パンジャーブ州
シク教徒過激派弾圧に乗り出したインディラ･ガンジーは
シク教徒である自らの警護官によって暗殺される。更なる報復が生まれる。
過激派と政府軍 二つの脅威に晒され
不安に慄き極度の緊張を強いられる普通の人々の暮らしが
静かに摑まえられている。
戦闘や銃撃戦が描かれるわけではないのに
真綿で首を絞めるように閉塞して行く世界に生きる人々の
苦しい息づかいが伝わってくる。
ひたすら忠実に吠え続ける犬が哀れだ…。
「国のない国旗」 ’15 (ｲﾗｸ)
監督･脚本：バフマン･ゴバディ
前作「サイの季節」の隙のない文学色とは違って
半ドキュメンタリー 半フィクションみたいな構造の映画は
時にとぼけて 時にユーモラスに現実をフィクションに異化するかに見せて
フィクションを
ＩＳに蹂躙されるクルド人という現実へ攫って行ってしまう。
クルド人の苦境を静かに詠み
何も為さない世界の無関心を告発する映画である。
空を泳ぐ凧にかぶさる爆撃機の映像に震える。
「国境に生きる〜難民キャンプの小さな監督たち〜」 ’15 (ｲﾗｸ)、
ゴバディが立ち上げたプロジェクトにより
クルド難民キャンプの８人の子どもたちが自らの生活を撮ったショートフィルム。
子どもたちとその家族が置かれた過酷な生活―
そこに至るまでの悲惨な体験―
クルド人の悲劇を知れ！という強力なメッセージを受け取るための映画なのだ。
映画は消費されない。
世界を変えるためのツールなのだ。
ゴバディは子どもたちにそう教え
次世代を鼓舞している。
「凱里ブルース」 ’15 (中) 監督･脚本：ビー･ガン
ロカルノ映画祭 現代映画人部門 最優秀新人監督賞
ナント三大陸映画祭 金の気球賞(ｸﾞﾗﾝﾌﾟﾘ)
中国南西部 貴州省東部の町 凱里から鎮遠へ旅する中年男を追うカメラは
肌にまとわりつく湿度を映しながら
彼の生活の点景を綴るのだが、
中盤 鎮遠へと向かう４２分のワンシーンワンカットから観客を幻惑へと誘(いざな)い
記憶を詩で語るのだ。
こんなものを映画祭２日目に観てしまうと
もうこれ以上の作品はない―と判ってしまうから困る。
それくらい衝撃的にいい！
長回しが始まる鎮遠の対岸の村 蕩麦(ﾀﾞﾝﾏｲ)に立ち寄った男は
複数の人間を負って
時計や扇風機やかざぐるまといった 明らかな“円環”をモチーフに
過去現在未来を往還する。
どこまで溶けたら私は私でなくなるのか…
私と外界の湿潤を隔てるのは記憶だけなのかもしれない…
時の円環に囚われた男は
カメラの映す湿度の中で眠りながら思っている。
ビー･ガンは詩人であるらしい。
その彼の長編デビュー作。瞠目せよ！
「ぼくは詩の王様と暮らした」 ’15 (ﾌｨﾘﾋﾟﾝ) 監督：カルロ･エンシーソ･カトゥ
フィリピン パンパンガ州に暮らす“詩の王様”と関わることになった高校生のお話。
パンパンガ州は91年ピナトゥボ山大噴火により荒廃した地域、
高校生のジェイビーが祖父ほども歳の離れた“詩の王様”と心を通わせるお話は
そんな四半世紀経っても灰だらけで復興の成らない土地と
固有の言語パンパンガ語の衰退と
その言語圏に生きる詩の文化を語るお話でもある。
特に何があるわけでもなく
王様ののんびりゆるい日常につきあうジェイビーが
地域の“詩の文化”を体感するさわやかな映画になっている。
“詩の王様”は地域の祝宴や式典に呼ばれて詩を披露したり
あるテーマについて詩で討論するイベントに参加したりする。
尊敬されてるけど 報酬があるわけじゃないので
暮らし向きはよくなくて
奥さんにいつも文句を言われていたよ(笑)。
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