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2016年09月14日19:52

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第三話:それぞれの居場所【その2】

【創作まとめ】
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【前回】
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株式会社フューチャーアイズ。
日本を代表する大手家電メーカーであり、従業員数は全国で5万人を越えている大企業である。
最新の家電製品は他社の製品と比べても独創的で、その性能と遊び心が相まって、一度製品を購入すると、そのまま固定ユーザーになる客も多いと言われている。
去年発売された超振動分子包丁もたった一年で100万本を越える販売実績を残している。
近年では医療用の補助器具や、看護用のパワースーツなど事業を拡大し、特に医療補助器具は手足を失った患者に対し、コネクター手術というものを施すだけで電動の義手や義足を神経と接続し、本当の手足のように動かせるということで世間からも注目を集めている。
またバイオ化学にも着手しており、失った手足の再生治療の分野でも目覚ましい成果を出している。
こういった人体に関する医療技術の根幹を支えているのが、実はシャドールという組織でもある。
シャドールは世間では公表されていない秘密組織である。
私こと小鳥遊桜子もシャドールの一員ではあるものの、表立って組織の構成員であることを名乗ることはない。
シャドールの構成員は、表向きはこのフューチャーアイズの職員として登録されているのだ。
そのため私が開発した超振動分子包丁や、園咲顕将が提唱する技術を応用した医療補助器具も販売可能なのである。
再生治療の技術に関しても、第二開発室で研究しているバイオ兵器の技術を応用されているようである。
また政府を通して様々なスポーツの国際大会にスポンサーとして資金援助をしており、政府からの信頼も厚い。
当然政府にも顔が利くため、政界や警察など、様々な団体にシャドールのスパイを送り込むことにも成功している。
つまり表向きは日本を代表する家電メーカーとして経済と人々の生活を支援し、集まった資金の一部は世界征服を企むシャドールの活動資金となっている。
このカラクリがある限り政府や警察はフューチャーアイズを怪しく思っても踏み込むことができず、捜査もままならないのである。
いつも通り出社した私は普段は誰も利用しない廃材管理棟へと向かう。
そこにある資材運搬用のエレベーターに乗り込むと、シャドールの構成員にのみ渡される特殊な社員証をセンサーにかざす。
するとエレベーターは本来存在しないはずの地下へと動き出していく。
深く深く・・・・・・しばらくするとエレベーターは止まり、地下1キロメートルに存在するシャドールの施設に到着する。
そこには広大な空間が広がり、いくつもの施設が存在する。
元々は地下水源だった空間をジオフロントとして改造したものである。
光ファイバーを利用して地上の光を取り込んでいるため、地下1キロという深さにも関わらず、昼間のように明るい。
まさか地下にこのような施設が存在しているなど誰も想像しないだろう。
私はそのまま研究棟にある第一研究室へと出勤する。

「おはようございまーす」
「あ、桜子先輩、おはようございます!」

元気よく返事をしてくれたのは、エミール・クロスフォードという少女。
彼女はこの第一研究室で唯一の事務員であり、研究資金の運用や書類作成を担っている。
どうも研究ばかりしていると、資金の管理や事務資料の作成などがおろそかになってしまうことが多い。
なんでも以前は大英帝国銀行に勤めており、博士が彼女をスカウトしたと聞いている。
スカウトされたと言っても普通ならシャドールに入ろうと思わないだろうし、博士が普通の人をスカウトするとも思えない。
いきさつには何か事情があるようだが、ここでは過去を詮索しないのがルールになっている。
だから彼女が私たちを裏切ることがない限り、私は彼女を信用することにしている。

「デュフフフ、聞きましたよ先輩」
「どうしたのエミール?」

可愛らしい顔に反して気持ち悪い笑い方をしながら詰め寄ってくるエミール。
この笑い方のせいで、せっかくの容姿が台無しなのよね。

「一昨日はOnI001が逃走して大変だったようですね」
「そうなのよ。おかげで第三研究所を破棄することになったりでてんてこ舞いだったのよ」

さすがに博士が逃亡の手助けをしたことや、私が匿っていることまでは知らないようね。
第一研究室の仲間ということもあって真実を隠すのは心苦しいけど、これが組織にバレると私も博士もどんな処分を受けるか分かったものじゃない。
最悪バレたとしても彼女を巻き込まないようにするために話すわけにはいかないわね。

「で、OnI001の中の人ってどんな人なんですか? イケメンですか?」

中の人って・・・・・・別に着ぐるみやパワードスーツの類じゃないんだけどな。
あくまでも彼女は事務員であり、資金管理が担当なのでオーガインの詳しい仕様などは知らされていない。
知らされていないからこそ興味がそそられるのかもしれないわね。

「うーん、イケメンかどうかは個人の好みによると思うけど、私の好みではないかな」
「ほほう、乙女ゲーハンターの桜子先輩のお眼鏡にかなわなかったということは、少なくとも超絶イケメンってわけではなさそうですね」

息抜き程度に乙女ゲームは嗜んでいるが、乙女ゲーハンターと呼ばれるほどではないんだけどな。

「ウェッヒヒヒ、ではではOnI001×園咲博士はどうですか? 何か漲ってくるような展開はありましたか?」
「なにそれ」
「逃亡する001、それを止めようとする園咲博士! しかし001の圧倒的力の前に押し倒されてしまう博士・・・・・・『俺をこんな姿にした代償、体で払わせてやるぜ』『や、やめろ! う・・・・・・はぁはぁ』『口では拒否しても体は素直なんだな』って」

なに言ってんのこの子。
両方とそれなりに関係のある私としてはドン引きレベルの妄想だよ。

「エ、エミール・・・・・・現実の人間でそういう妄想するのはどうかと思うよ」
「何を言ってるんですか! この世に起こりうる全ての事象は腐妄想で補完できると言うのに!」

そんな変な妄想で補完しないで。

「なかなか面白そうな話をしているね」

自室から出てきた博士が話に混ざってくる。
あ、これ話がややこしくなるパターンだ。

「おはようございます博士。これ、昨日のデータです」

話の脱線を元に戻すべく、昨日のオーガインとコマンダー・オベロンの戦闘データの入ったメモリを博士に渡す。

「ご苦労だったね、桜子君。で、腐妄想で全ての事象を補完できるってのはなかなか興味深いねぇ」

ダメだったー、脱線戻せなかったー!

「それはですね、この世の全ては攻めと受けでカテゴライズが可能であり、これは相対性理論にも通ずるものがあり・・・・・・」

なんか相対性理論とか出てきた。
偉大なる科学者、アインシュタインに謝って!

「ほうほう、それは興味深い。新しいAIにその理論を組み込んでみよう」
「ちょっと待てや! 記憶の消された腐妄想豊かな改造人間とか産廃レベルの役立たずでしょ!」

そんな変なものの開発にはさすがに携わりたくない一心で、咄嗟に話を中断させる。
この二人、私がいなければどこまで話が脱線するのか予想できないわ。

「博士はそのデータを解析してくださいね」
「えー、桜子君のいけず」

そう言うと博士は自室に戻っていく。
一体何しに出てきたの?

「あ、そうそう。桜子君は後で僕の部屋に来てね」
「はい、わかりました」

おそらく今後のオーガインに関する話があるのだろう。
私は研究用の白衣に着替え、身なりを整える。

「ついに博士と助手の一線を越える時が来たのですね? 桜子先輩、個室でのご奉仕・・・・・・ファイトですよ!」
「アホかお前は!」

博士の個室に行くたびに同じセリフを言うの、やめてくれないかなぁ。
根はいい子なんだけど、正直うんざりなのよね。


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「失礼します」

出社後、荷物を片付けてから博士の部屋へ赴いた。
博士は先ほど渡したメモリの中身を確認しているようだ。

「待っていたよ、桜子君」

画面に表示されたデータを一通り確認した後、こちらに振り替える博士。
何か新しく気づいた点などがあるのだろうか。

「データを見させてもらったよ。そこで僕はとんでもない発見をしたよ!」

昨日の戦闘を思い出してみるが、激しい戦闘というわけでもなければ、苦戦を強いられたわけでもない。
人質救出に少し手間取ったくらいで、特別際立った内容でもないと思えるのだが。
それでも私にはわからない、何か博士にしか気づかないことでもあったのだろうか。

「桜子君ヒドいよ! あんなに可愛らしい妹さんがいるのに、何で今まで紹介してくれなかったの!?」
「博士がそんな性格だから言えないんですよ! 毎日毎日休憩時間に飽きもせずに妹系エロゲーしてる人にリアル妹を紹介できるわけないでしょ!」

緑子のデータの消し忘れという痛恨のミスを悔やみながらも反論する。
この人、自分が他人の目からどう映ってるのか考えたことがないのだろうか?
普段の言動から割と本気で言ってる節があるからこそ、今まで妹の存在を隠していたのに、あーほんとミスったわ。

「まぁそのことは後でじっくり話すとして、桜子君はOnI001・・・・・・いや、本人の要望通りこれからはオーガインと呼称しようか。オーガインこと石動雷馬についてどれくらい知っているんだね?」

博士は改造手術の際、私が被験体のパーソナルデータに目を通していないことを知っている。
だからこそ、今後も彼との接触が多くなる私に確認したいのだろう。

「本人からは警視庁の特殊部隊Stedに所属していたことは聞きましたよ」
「そうかい。ではStedがどのような部隊かも聞いたかい?」
「はい。たしか過激派と呼ばれる反政府組織やテロ組織に潜入して、武装蜂起する前に鎮圧する部隊だと聞きました」

石動君本人から確認した内容を思い出しながら博士に伝えていく。
囮捜査を禁止している警察に、よもやこんな部隊が存在するとは知らなかったが、何事も例外があるということだろう。

「それだけかい?」
「あと任務の特殊性の為、行方不明や殉職をしても、恋人や家族にも知らされないと・・・・・・私が聞いた内容は以上です」

博士は私の言葉を聞き漏らすことなく、慎重に確認するように頷きながら聞いている。

「なるほどね、上手いことボヤかして伝えてあるものだ」
「どういうことですか?」

私の知らない何かがある、博士の言葉からはそう聞き取れる。
内容が内容だけに警察の闇に触れることになる。
私を普通の民間人と思っている石動君が、その辺を察してオブラートに包んだ説明をしていてもおかしくはない。

「まず考えてみてくれ。任務の特殊性を考えると、危険な組織に潜入するのだから、おそらく一組織に配置される人数は一人か二人くらいになるだろう」
「そうですね」

人数が増えれば、それだけで潜入することが困難になる。
Stedが何人で構成されているのかは知らないが、それほど多くはないはずよ。
そうなると潜入する人数は限られてくる。

「そんな少人数でどうやって武装蜂起する組織を鎮圧できんだい?」
「それは・・・・・・」

言われていれば不思議である。
武装蜂起を考える組織なら、相応に武器も所持しているだろう。
いかに石動君が戦闘に長けていたとしても、一人二人で全てを鎮圧するなど現実的に考えて不可能に思える。

「答えは簡単だよ。首謀者を殺すんだよ。武装組織に軍や警察が強行突入したら、組織の代表が既に死んでいたなんて報道、よくあるだろう?」

首謀者を殺す? あの石動君が?
緑子の前で血を見せるのを懸念し、自分を殺しに来たコマンダー・オベロンを逃した彼が?

「強い思想で団結した組織にとって、リーダーは絶対的な象徴であり心の支えになる。だからこそ、そのリーダーが暗殺されれば脆い。メンバーには動揺が走り、指揮系統も乱れる。そうなれば軍や組織が突入した際、簡単に鎮圧できるということだ」
「話の流れとしては理解できます。ただ、彼にそんなことができるとは思えないんですが・・・・・・」

空気が読めない、馬鹿正直で私を訪ねるにしても不審者に間違われる。
そんな不器用な石動君に、暗殺が可能とは思えないわ。

「彼は常に危険と隣り合わせの特殊部隊に居たんだよ? バカでは務まらない」

もし博士の言う通り、道化を演じているのだとしたら、かなりの切れ者だということになる。
それでも彼の間抜けな言動を考えると、にわかには信じがたい。

「ひょっとすると、桜子君の正体にも薄々勘付いているかもしれないね」
「いやいや、あの石動君ですよ? バカで間抜けで中二病で不審者に間違われるような変人ですよ? とても博士が言うような優秀な人物には思えないんですけど」
「可能性の話だよ。彼との付き合いはキミの方が長いから、僕には何とも言えないけどね。ただ・・・・・・」
「ただ・・・・・・何ですか?」

言い淀む博士にも思うところがあるのだろう。

「彼は政府と警察公認の殺し屋部隊出身だ。少なくともその事実だけは変わらない」

博士の言葉にぞくりと背中に冷たいものが走る。
政府と警察公認の殺し屋、それは人を殺しても罪に問われることもなければ、追われることもない。
石動君の言動を見る限り、そのような危険人物に見えないが、部隊にいた以上そうなんだろう。

「簡単に人を殺したりはしないだろうが、必要と感じたら殺すこともいとわない。そのことだけは胸に止めておいてくれたまえ」

博士の言葉に動揺を隠せないでいる私の肩に手を置く博士。

「僕は桜子君のことを優秀と思っているし失いたくはない。僕たちは実行部隊じゃないんだから、身の危険を感じたならすぐに撤退するんだよ」
「わかり・・・・・・ました」

話の内容を消化しきれない私に優しい言葉をかけてくれる博士。
心配してくれる博士の為にも、これからの任務は気を引き締めてかからないといけないわね。
気持ちを引き締めなおしていると、部屋のインターホンが鳴り響く。

「・・・・・・うんわかった、すぐ行くよ」

インターホンに出た博士は何やら了承すると、自室を出ていこうとする。

「面白そうな客が来たから、桜子君も同席するといいよ」

私は博士と一緒に部屋を出て、来客の元へ向かう。
博士の懸念が杞憂であることを願いながら。


【その3へ続く】
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