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2016年09月12日21:49

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「 無力 」について


津波に追われて逃げる私たちは
押し寄せる目の前の世界から
逃れることが出来ませんでした
 
「 無力 」について
 
避難した高台では足りず
さらに高い場所へと 私たちは山に這い上がりました
 
お年寄りが山に這い上がり
石垣に足をかけ
それを見た子供たちが
雪でぬかるんだ斜面にしがみつきます
 
数名いた私と同じ世代のお母さんたちは
先に登った子供たちの姿を必死で目で追いながら
震える手や足を石垣にかけ登っていきます
 
私が自分の子供たちの姿を確認し
今度は自分が登ろうとしたとき
当時 小学6年生の娘と3年生の息子が
いったん上がったはずの山から
私が手をかけている石垣の上まで
二人で戻ってきてしまいました
 
下からその姿を見上げて愕然とする私に
「 おかあさんはやぐ! 津波きてっからはやぐ! 」
「 おかあさん津波だ!はやぐ!おかあさーん! 」
その声を聴いたとき 
( なんで戻ってきてしまったんだべ・・・・
 だめだ こどもだぢに 流さいっとご見せらいね )
そう思うと同時に
「 上がれ!上さあがれー! 」そう叫びましたが
子供たちも そこから上に上がろうとしません
「 おかあさん!おかあさん!はやぐー!はやぐー! 」
二人とも必死で叫びます
「 はえぐ上がれ! 上がれー!!! 」
普段叱られるときに聞いている声とは違う私の叫びに
子供たちは 弾かれるようにして
それでも 石垣の下の私を振り返りながら
「 おかあさん おかあさん・・・・ 」
そう口にしながら 山に登っていきました
 
子供たちが再び山に登ったことを確認した私は
今度は 自分の番です
もう時間の猶予はありません
しかし 登ろうとして石垣に伸ばした手が震え
膝がガタガタとゆるみ まるで力が入りません
 
背骨を抜かれたというのでしょうか
内臓がすとーんと落ちてしまって抜け殻になったような
 
力の限り叫んでしまったことと
子供たちが山に逃げてくれた安心感とが
私をそうさせてしまったようです
 
ですが 夫がいないこの状況が頭をよぎったとき
子供を守るためにどうしても生きなければと
手足をばたつかせているうちに
嘘のように石垣の上まで上がることが出来たのです
 
またそこで安心して後ろを振り向くと直ぐに
石垣の下に止めた自分の車が
他の家と一緒に 音を立てて流されていきました
 
これはほんの短い時間での出来事です
力が入らず手足をばたつかせていた時の私には
津波の音も 匂いも 灰色の空も 水しぶきも
全部がその時の世界のすべてでした
 
自然の力の前に 人間は無力です
無力だからこそ どうにかして命を守りたいのです
災害の恐ろしさや真の姿を事前に知っていれば 
守れる命があるのです
どうか 目をそらさないでください

 
被災した人間の気持ちの一端です
シェアしてくださる方がいらっしゃいましたら
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また 必要と感じてくださる場合は
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大切な方と一緒に ご覧ください

 
#語り部佐藤麻紀

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