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2016年09月08日19:18

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ドゥーチュィムニー「法的根拠なき「基地政策と沖縄振興のリンク」論」

 安倍政権が「禁じ手」を使って沖縄県を揺さぶり始めた。政府が長年否定してきた「基地政策と沖縄振興のリンク」を公然と認める方針に転じたのだ。

「沖縄の振興策と基地問題は確実にリンクしている」

 鶴保庸介沖縄・北方相は8月4日の就任会見でこう述べ、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設作業が遅れた場合、沖縄振興予算を減らす可能性に言及した。菅義偉官房長官も翌5日の記者会見で「基地問題と沖縄の振興問題は、総合的に推進していく意味ではリンクしている」と述べた。

●政府方針とも矛盾

 沖縄関連予算に詳しい京都府立大学の川瀬光義教授は、「沖縄振興予算は内閣府の所管であり、所管外の基地政策とのリンクは公式にはあり得ません」と断言する。

「沖縄振興」とは一般に、沖縄振興特別措置法(沖振法、旧沖縄振興開発特別措置法)に基づく国庫予算を指す。この予算は、各都道府県が各省庁に行う要求を、内閣府沖縄担当部局が一括して扱う。沖振法は、国が沖縄の「特殊事情」を考慮し、本土との格差是正や沖縄の自立的発展を目的に1972年の沖縄の日本復帰以降、10年ごとに延長・更新してきた。

「特殊事情」とは、首相官邸ホームページによると、沖縄戦の戦禍と戦後米軍統治下に置かれた歴史的事情、離島県であるといった地理的事情、米軍施設・区域が集中している社会的事情である。

 今年6月に閣議決定された「骨太方針」は、沖縄振興について「成長するアジアの玄関口に位置付けられるなど、沖縄の優位性と潜在力を活かし、日本のフロントランナーとして経済再生の牽引役となるよう、引き続き、国家戦略として、沖縄振興策を総合的・積極的に推進する」と明示。沖縄振興を基地政策実現のためではなく、経済再生のための「国家戦略」と位置づけており、「リンク論」はこうした政府方針とも矛盾する。

「民主主義社会における税金の配分は、人口・面積など客観的な数値に基づく『公平な基準』が求められます。政治的な意見の相違など主観や恣意性が持ち込まれないようにしなければなりません」(川瀬教授)

 もちろん、政府が特定の政策を推進するために特別な予算をつけて配分することはしばしばある。現政権の看板政策ともいえる「地方創生」が一例だ。

 こうした予算に関しても川瀬教授は「配分基準は客観的でなければならず、かつ政権に対する姿勢とは関係なく、全ての自治体に応募する機会が保障されなければならない」と訴える。

●予算巡りモラルハザード

 一方、基地政策を所管する防衛省は、全国の基地所在自治体を対象に補助金や交付金を配分しており、これは「基地政策とリンクした予算」と言えなくもない。なかでも、政策への賛否に絡める例外は、首長の姿勢によって不交付にすると規定された、2007年創設の「米軍再編交付金」だ。辺野古新基地建設に反対する現市長が当選した名護市では10年以降、不交付となっている。川瀬教授はこれを「公的資金の配分にあってはならないこと」と指摘する。

 今、問われるべきは、国庫予算の配分をめぐる政府のモラルハザードだ。「辺野古」をめぐっては、翁長雄志知事を相手に国が起こした違法確認訴訟の第1回口頭弁論が8月5日に福岡高裁那覇支部で開かれた。多見谷寿郎裁判長は、翁長知事の本人尋問は認めたが、8人の証人申請は却下。その上で、次回8月19日に結審、9月16日に判決という「スピード審理」を提示した。政府が裁判での勝訴を織り込み、辺野古での工事強行を目論んでいるのは確実だ。

 8月10日に翁長知事と会談した際、菅氏は「リンク論」への言及を避けた。沖縄社会を揺さぶり、翁長知事を牽制するには、現段階では予算カットや特例廃止をちらつかせるだけで十分との判断もあるのだろう。

「恫喝と強権発動」。沖縄に対する政治手法は、安倍晋三首相が繰り返す「県民の理解を得る」姿勢とは対極にある。翁長知事は5日の意見陳述で、国の訴えを否定した上でこう述べた。

「このような違法な国の関与により、全てが国の意向で決められるようになれば、地方自治は死ぬ。地方自治と民主主義の根幹が問われている」

 これは国民全体への警告だ。(編集部・渡辺豪)

※AERA  2016年8月29日号
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