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2016年08月20日13:14

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恋愛障害/トイアンナ【人生危機対策マニュアル】

20代から30代の女性に人気の外資系OLブロガー兼ライターのトイアンナ氏の著作「恋愛障害」を読みましたが、ガチで硬派な心理学書というか内省というか本気のハウ・ツーというか「サバイバーズ・リソース」(※筆者が主催する性暴力被害者の支援を目的とする情報サービス。サバイバーとは極限状況から生き残った人を意味する言葉)の名は伊達じゃねえっていうか、サバイバル本っていうか、とにかく「凄い」本でした。

テーマは「恋愛」をタイトルにうたっていながらそれは看板であり、その本質にあるものは「自尊心」で、

「自尊心を後天的に己で育てることは可能か」

「失われた自尊心を己の力のみで取戻し、守り、高めてゆくにはどうすればよいか」

という人類にとって有益な情報が筆者渾身の力をもって書かれた、これまで泣き嘆き血にまみれもんどりうちながらも這い上がってきた筆者の過去に裏打ちされた確かな「知恵」のつまった本であり、骨身のある実用書でした。

自らの身に何が起き、どう変化し、どうして立ち直ったかについて書かれたサバイバーの本は多くありますが、サバイバー自身が「どうすれば傷ついた心を回復させられるのか」について本気の臨床心理療法すら用いながら、誰しもに通じるよう説明を噛み砕いて一般向けにハウ・ツーに起こした本なんてほとんどないのではないでしょうか。しかも自己をここまで開示して。

めくるページの端々に筆者の血痕と涙の落ちた痕と汗でにじんだ字が見えるような、それでいて一切の感情のブレを見せない、終始徹底した冷静と理知を保って書かれた本書を尊敬と拍手を持って「実用書」と呼びたい。
戦記ほどの背景を持ちながらもそんな己の過去はさておき、あくまで実益のある対処法のみ記した実用書と。

例えるならこれ「毒キノコ大全」って書かれた本で「このキノコ 絶対あかん」ってそこだけ震えた筆跡で書かれた本くらい信憑性あるからねほんま。


【自尊心とはなにか?】

自尊心について書かれた本書のタイトルが「恋愛障害」であることはクレバーだと思うのですよ。
自尊心の無い人って「自尊心障害」と書かれた本なんて手に取らなさそうじゃないですか。
しかも「あなたの恋愛がうまくいかないのはあなたに自尊心がないからだ」という鋼鉄の真実をガツンとたたきつけつるのではなく(そんなことしたら心しぬ)、あくまでもケースとしての実例、事実を淡々と書き連ねて読み進めさせてゆく。
心理学書ってこういう書かれ方が多いですね。
さておき「自尊心」とは何かという話なのですが、本書においてそれは「自分は大切な人間であるという認識」だと明確に描かれています。

つまり自尊心の低い人間は、

己の存在価値が低いという認識故に自分で自分を大切に出来ず
他人(友人や恋人や配偶者など)を通して己を尊重しようとするが
自分自身すら大切に出来ない故に他人のことも大切に出来ず
結果誰も尊重されない暗黒空間を作り出していることが明らかになります。

私は以前の日記(女はどうすれば幸せになれるか問題)で幸せの条件に「自立」を挙げましたがその自立に必要な大前提の土台がこの「自尊心」であることが今回分かり軽く衝撃だったという。
人間の精神ってもう、、もう、、、!

本書では自尊心の低い女が絶対に近づいてはならない男についてもその生態ほかをくわしく分類、分析、対処法までも記されており(まさに毒キノコ大全)、そのレッドリストの筆頭にあげられる「モラハラ男」と「自尊心低い女子」のベスト最悪☆マッチング⇒

自尊心の低い女子は自分に価値がないと思っている故、
自分を大切にしてくれる男を好きになれず(見下してしまう)、
逆に「お前は駄目な奴だ」と言ってくる男に対し(この人はほんとうの私を分かっている・・・!)と惹かれて付き合い、
そばでモラハラを受け続けることによって己の「駄目で、価値の無い、下らない私」像を盤石なものとしていく。

モラハラ男は男で「お前のような駄目な人間は俺以外の誰も受け入れない、そんな駄目な女を許している俺は神」とお互い思い込むことによって二人は容易に離れられない(男は女のそばで貶めているだけで神でいられるから手放さない)。

なにこれ完璧なビジネスモデル?グラミン銀行?という恐ろしいまでに完成度の高いつけ入る隙のないマッチポンプ関係の分析には喝采を送りたくなりました。
すごい〜〜〜〜!こんなんはまりこんだら素人に脱出は無理〜〜〜〜!!

私積年の疑問だったのですが、何故モラハラ男の恋人(上司でもいいけど)を持つ女の人が自分の人格を傷つけられることに甘んじるのかというのに、「己のことを価値が無いと思っている女は「お前は駄目な奴だ」と言われると傷つく一方で「ですよね〜」と納得するので思っていることと矛盾しないことに安心する(そして心は少しずつ死んでいく)」みたいなことを、これは「恋愛障害」ではなく田房永子氏の著作で前後して読んだのですが、あまりにもなるほどと、とにかく長年の疑問がすっきり解けてAHA。

だからどれだけ「自尊心」が人間が幸せになるために重要なのかという話で、こうして書いていてもますます「女性に自尊心をつける」ことはもはや国家の急務でもよいのではないかというくらい大事なことだと思えます。

「女性の自尊心」って男の自尊心はないがしろでよいのかと言えばもちろんそんなわけがなく、さいきんうちの会社で「企業不当要求対応研修会」というものがあって全社員が受講したのですが、教材を見ていて客からの無茶苦茶なクレーム、要求に対していざ自分がその現場に直面した時にNOと突っぱねられるかどうかって企業人として以前に一人の人間としての尊厳の部分がめちゃくちゃ大きいのでないかという感想を持ったんですよね。
ものすごく威圧的な客から「土下座しろ」だの、上司から暴言を吐かれたりだのした時に断固拒否する、「おまえふざけんなよゴラ」という気持ちを湧かせる源は自尊心ではないかと。

小さなことで言えばたとえばうちの会社で昔、コンピュータ室勤務の男性社員がお昼に食堂へ向かおうとしたら営業部の上司に「儲けてもいない部署なのに食べることはしっかりするんだな」という主旨のことを言われた、とぼんやり思い出話をされたのですが、そこはもう絶対に違うだろうと。
それはもう侮辱で人格の攻撃だから拒否しなければならないだろうと。(だって今でも心に残っているくらいなのだから)

侮辱は論外としても「その仕事が終わるまで飯を食うな」と言う上司って(トラブル時などは特に)けっこういると思うのですが、トラブル時ですら待ち時間ってけっこうあるしその間「俺が見てるからお前ちょっぱやで腹になんかいれてこい!」って交代で飯に行くのが合理的だし結果的に作業効率は上がると思うんですよね。だって食べないと仕事出来ないし。

なんでここだけこんなにくどくどとしつこいかと言えば昔、私が当時の上司に同じことを言われて「私は食べないと仕事が出来ないので食べます。お腹がすいているんです。」とキレたことがあるからです。お腹がすいているとものすごくイライラする。

そういう小さいけれど大事なことにも自尊心って関わりがあるのではないかと。

いや、やっぱり食事って小さくなくて自尊心と結構密接じゃないのかなとも思う。
「きちんと食事をとる」ことって「自分を大切にする」ことだから。

だから残業続きでいい加減な食事をとっている頃って気持ちがすさんでいたしあんまりその時のことを覚えていない。
よくコンビニの梅おにぎりと茹で卵を食べていたけど、そこにちゃんと生わかめのお味噌汁がつくだけですごくほっとしたことは覚えている。
だからあの時の私の自尊心を守ってくれていたのはわかめの味噌汁だったとも言える。(その目は優しかった)

さておき、男性はこんな風に職場で自尊心を冒される機会が多いのでモラハラ男化することも多いのかなと書いていて思いました。(加害者であるモラハラ男は自分もモラハラの被害者であるなんて当たり前の公式はもうわざわざ説明すまい)

となればやはり「自尊心を育てる」ことは男女両方ともに必要なんだなぁ。
そもそもがこの「恋愛障害」という本自体、自分でも分からないけれど何故か女を傷つけてしまう男性に向けての本でもあるわけだし。(男性向けの項目にもすごくページが割かれている)

肝心の「じゃあ、自尊心ってどうすれば育てられるの?」という切実な問題にも本書は大樹のようなゆるぎなさで構えて答えてくれているのであんしん。
モラハラ男との手を切り方、こう言われた時はこう!という就活面談並みの一問一答もありますので後学のために読んでおいて損はないかと。

私は自尊心ちゃんとあるから大丈夫、と言えども確かに自尊心は幼少期に形成されるのですでに自尊心が身についている人間には本書は必要ないか…と言うとそんなことは決してないと思うのですね。
だって自尊心はきっと、暴力によってなら簡単に挽き潰される。
事故でも災害でも暴力でも外的要因によって肉体ごと「自分を大切に思う気持ち」をずたずたにされてしまった時、そこからどうすればよいのか。どうすればどん底から這い上ってゆけるのか。
そういった知識を得て心構えを作りもしもの時のために備えるという意味では本書はひとつの危機管理対策マニュアルであるとも言える。
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