独断と偏見激しい『史上最強ボクサー』ベスト10を発表します。
まず、第10位は…?
と始めたいところだが、今回は『ベスト９』までの発表とする。と言うのも、９人まではサクサクと名前が出て、苦労したのはその順位を決めることだったのだが、どうしても10人目が思い浮かばない。
それと同時に、俺はクリチコ兄弟の試合は殆ど観たことがないので実は評価することができない。かなり強いという意見が多く、少なくともベスト10には確実に入るような雰囲気だ。そこで、選出するのはクリチコ兄弟を含めて11人とし、しかし兄弟は順位に含めないことにした。
そんな訳で、俺が選ぶ歴代ヘビー級、第９位はこのボクサーです。
英国の誇り レノックス・ルイス
1965年９月２日生まれ
44戦41勝(32KO)２敗１分
勝率93％
KO率78％
身長196cm
リーチ213cm
1988年、23歳でカナダ代表としてソウルオリンピックに出場し、スーパーヘビー級で金メダル。
89年６月(23歳)、プロデビュー
92年10月(27歳)、挑戦者決定戦でラドックを２ＲでKOし挑戦権を得る。しかしチャンピオンのボウが対戦を拒否した為ルイスがWBC王者に認定。同王座を３回防衛。
94年９月(29歳)、マッコールに２ＲKO負けで王座陥落。
97年２月(31歳)、空位のWBCタイトルを巡りマッコールと再戦。５ＲTKO勝ちで返り咲き。同王座を４回防衛。
99年３月(33歳)、WBA、IBF王者ホリフィールドと統一戦を行うも引き分け。
同年11月(34歳)の再戦で判定勝ちし、WBOも加えた４団体統一チャンピオンとなる。
2001年４月(35歳)、ラクマンに５ＲKO負けで王座陥落。
同年11月(36歳)に４ＲKO勝ちで王座奪還。
02年６月(36歳)、初防衛戦でタイソンに８ＲKO勝ち。
03年６月(37歳)、ビタリ・クリチコに６Ｒ終了時の負傷によるTKO勝ちを収め、チャンピオンのまま引退。
一口に『ボクサーの強さを比較する』とは言っても、それは極めて難しい。まず、その選手の『全盛期はいつか』を見極めることが既に難しいのである。
ルイスは若い頃は、大きな身体でドンドン前にプレスをかけ、強烈な右を振り回して相手を圧倒するラッシャーであった。このスタイルなら、どんなに強い相手にも勝つ可能性がある反面、格下に足下をすくわれる危険とも隣り合わせだ。実績で上回るラドックを木っ端微塵に粉砕したし、素質も地力も上と見られていたボウがルイスとの対戦を拒否したのも、その爆発力を恐れてのことだろう。
しかしコンビネーションにスムーズさが無く、その僅かな隙をマッコールに突かれまさかの不覚をとったりもした。
トレーナーにエマニュエル・スチュワードを迎えてからは、小柄な相手には左ジャブを多用して突き放し、大きな相手は右の長距離砲の１発で仕留める盤石のスタイルが完成した。
どちらの時期をルイスの全盛期と見るかは難しい。若い頃の彼ならフォアマンを粉砕する可能性は充分あるし、アリにだって勝てるかもしれない。
まぁ一応スチュワードが就いてからの時期として考えよう。
基本的にはルイスの最大の武器はその大きな体格だ。それから史上屈指と言われる強烈な右ストレートであろう。右はアッパーとしても威力充分で、ラッシュの時に上からストレート、下からアッパーとして多用している。接近戦でも使えるから、インファイターに対しても非常に有効だ。
https://m.youtube.com/watch?v=Q3PNEWP_SSU
動画の最初はデビュー戦であるアルコム戦。
意外なことに、２回のダウン共に左ショートフックのカウンターだ。さすがアマチュア上がり。金メダルも納得のテクニックである。
『痛って〜』と顔をしかめるアルコムの表情が痛々しい。
しかしその後の映像はみんなが知るレノルイ。左手で相手を押さえ付け、上から叩き潰すかのようなオーバーハンドライトと右アッパーのつるべ打ちという、豪快極まりない獰猛なファイトスタイル。
02:50、俺がルイスを初めて見たのが『挑戦者決定戦』となったラドック戦。
ラドックの戦慄の左スマッシュがいつ飛び出すかと観ていたら、逆にルイスの豪快な右が炸裂し、ラドックは腰から砕けるようにして吹き飛んだ。
03:30、長きに渡り英国ヘビー級のスターだったブルーノを血祭りに上げる。
余談だが、ブルーノは１発もらうとその後の対応ができず一方的に打たれる傾向にある。ウィザスプーンに負けた時も滅多打ちされてる。
04:15、ジャクソンを３ＲでKOした３度目の防衛戦。非常に回転の速い左右連打で、特に左ジャブが良く出ている。こりゃ相手はたまったもんじゃないね。
05:35、トレーナーにスチュワードを迎えてマッコールにリベンジを果たしたが、マッコールは薬物の影響で感情のコントロールを失い、試合放棄のような形で不完全燃焼な戴冠。
初防衛戦は同じ英国の、更に長身のアキンワンデとだが、ホールディングにより反則勝ちというしょっぱい試合。
06:10、ポーランドの荒くれ者ゴロタを滅多打ちで粉砕。
06:20、衝撃的なチョッビングライトで、ブリッグズはまるで車に跳ね飛ばされたかのように大の字。
07:25、ホリフィールドとの２連戦は１勝１分。カバーリングの上手いホリフィールドに対し、潜り込もうとする時には右アッパー。離れたら細かい左ジャブ。他にも逆ワンツーや右のダブルなど、この頃は攻撃も多彩。
09:00、グラントとの巨人対決はパワーの差で圧倒。クリンチ直前にインサイドからの右アッパー１発で豪快にKO。
09:30、ボタを子供扱いし、リングの外に叩き出す。
09:40、スイングのような右ロングフックで、ラクマンを失神KOして雪辱。
ルイスは戦績だけ見れば素晴らしい勝率だが、マッコールとラクマンにアッサリ負けた２敗が非常に評価に響いてる。特にマッコール戦は、全盛期にも関わらず完敗している。
10:00、インファイターのタイソンに対して、離れれば左ジャブ。踏み込まれたら右アッパーで迎撃する教科書通りの戦い方。動きの止まったタイソンに右クロスをねじ込んで倒す。
10:55、クリチコとの一戦。体格の利点は得られない相手だが、それはクリチコも同じ。離れれば右ストレートのパワーの差は歴然だし、くっついても右アッパーがスムーズに出る。
試合はクリチコの負傷によりルイスのTKO勝ちだったが、ルイスの顔が綺麗なままな点に注目。
一時期『ルイス史上最強論』が出たようだが、俺にはとてもそうは思えない。レノックス・ルイスが歴代のレジェンドたちと戦ったら、果たしてどのような結果となるであろうか？
まずルイスの最大の武器である体格だが、アリやホームズと中間距離で打ち合った場合、そのスピードとセンスの前にはルイスのリーチ差による利点は小さなものでしかないだろう。パワーではルイスが圧倒するが、ディフェンス力で完敗する。
フォマンと戦った場合はがっぷり四つの超重量級対決となるが、体格でもパンチ力でも優位に立てず、テクニックの差でフォマンに敗れるだろう。
マルシアーノやフレイジャー、タイソンといったインファイターにも負けると思う。
マルシアーノのタフネス、フレイジャーの突進力、タイソンのウィービングを、ルイスの左ジャブでは止められない。またルイスはワンツーコンビネーションが遅く、右を強振すると上体が流れるバランスの悪さがある。その隙に左フックを喰らえば、顎が弱点のルイスにとって致命傷となるだろう。
レノックス・ルイスはヘビー級に超大型時代を築いた。同時期にリディック・ボウ(196cm)、ホルヘ・ルイス・ゴンザレス(201cm)、マイケル・グラント(201cm)、ビタリ・クリチコ(201cm)、ウラジミール・クリチコ(198cm)、といった２m前後のボクサーが乱立したが、その中で頂点に君臨した点は評価できる。
それから、ルイスに対する評価で、『負けた相手には全てリベンジしてる』との意見がある。
もちろんそうなんだけどね。しかし逆の見方をすれば、『きっちりリベンジできるような弱い相手にもあっさり負けちゃう』ってことでもある。ルイスが強いことは間違いないが、弱い相手にコロッと負けちゃうモロさがあるのも事実。その点が、これから述べるレジェンド達に敵わない部分だと俺は評価するんだな。
そんな訳で、レノックス・ルイスは歴代９位です。
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