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以前かいたこれの続き。
話自体は繋がってないけどね。登場人物とか世界がね。
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とある商店街を横に抜けた路地裏。
薄暗いその道からさらに奥へと向かうと、【有楽堂】と木製の看板が掲げられた小ビルがある。
そこに現れた髪の長い鬼人族の青年が一人。彼は前が見えなくなるほどの荷物を抱え、軽い足取りでそのビルに入っていく。
慣れた足取りで階段を上がり、見えていないはずなのに迷うことなくドアノブを回して室内に入るのは。この有楽堂の…自称"店主のお手伝いさん"である梅月(メイユエ)。
「ただいま〜!…あれ?」
荷物をテーブルに下して顔を上げると、そこには有楽堂の店主である眼鏡をかけた隻腕の鬼人族の青年。黒尖(ヘイジェン)が、かなり体格の良い長身の男性と、どこか蜥蜴を思わせる風貌の青年とテーブルを挟んで対峙していた。
「おう、おかえり。邪魔してるぜ、メイ」
「あ、はがるんいらっしゃ〜い」
店の主人よりも先に蜥蜴風の青年、ハガルが梅月に声をかけ、彼も笑顔で挨拶をした。
ハガルはこの有楽堂の近くで道具屋を営んでおり、有楽堂が差し押さえた物を買い取ってもらうなど店として贔屓にしてもらっているが、気のいい友人でもある。
「んと…お客さん?」
そんなハガルに小さな声で、主人である黒尖が渋い顔をして正面の体格の良い男性とにらみ合っている(男性は穏やかではあるがどこか困ったような表情で)状況を尋ねてみれば。
「ああ。ん〜…まぁ、本来のお前らの商売とはかんけーねぇけど…」
ハガルもまた、小声で苦笑しながらそう言った。
「ふ〜ん…?」
そこからまた黒尖と男性が話し込み始め、梅月は難しい言葉の応酬に。
とりあえず…お茶を出して、ぼくはさっきもらった肉まん食べよう。
難しいことはわからない。
とテーブルの上に置いておいたものをどかして人数分のお茶を出し、自分は奥へと移動してから商店街でもらった肉まんを取り出して食べようとした。
大きく口をあけて肉まんにかじりつこうとしたその時、視線を感じて顔を上げる。
おかしいな?と首をかしげつつも、もう一度口を大きく開け、肉まんを食べようとした瞬間。今度は肉まんの重みが急に増して。
「ふえ!!?………ん?」
ガクンと引っ張られる感覚に驚いて肉まんを持ち上げると、そこには真っ白なロープのような…。
「………へび?」
純白の美しい鱗を持つ蛇が、肉まんを飲み込もうとしており。
蛇が自分の体よりもずいぶん大きな肉まんを丸呑みしようとしている様子に、梅月は驚いて。
「ちょちょちょ、さすがに無理だよ〜。まって、いまちぎってあげるから…」
と言いはしたものの。
「…へびって肉まん食べても大丈夫なの?」
一度蛇を肉まんから離れさせ、自分の膝の上に乗せて。蛇自身に聞いてみるも、返事は帰ってこず。そのつぶらな瞳をキラキラさせていて、早く肉まんをくれと言っているようだった。
「イスティール!?」
さて、どうしたものか。と一瞬考えたちょうどその時、聞きなれない声と聞きなれない名前に顔を上げる。
「すまない、友人が失礼を…」
それは、先ほどまで黒尖と話をしていた客人。
「イスティール、こちらに来なさい」
名前を呼ばれた蛇は、どこかしょんぼりとしながらも素直に客人の差し出された手からその首元へ移動しゆるく巻き付いていた。
蛇の動きを目で追っていた梅月は、そのまま客人とと目が合い。
「あのね、そのへびお腹すいてるみたいなんだけど…肉まんって、食べても大丈夫?」
と持っていた肉まんを見せる。
肉まんにはくっきりと二つの穴が開いており。
「すまない、話に夢中で彼女が空腹になる時間を失念していた。その肉まんを買い取らせてもらいたいのだが…」
「いーよいーよ。もともともらい物だし、まだいっぱいあるし!きみも食べる?」
懐に手を入れようとした客人に、紙袋いっぱいにはいった肉まんを見せにかっと笑う。
「い、いや、しかし…」
「お、なになに肉まん?」
それでも、と戸惑う客人の横から、ハガルがひょいと顔を出し。
「俺にもちょーだい」
「いいよ〜」
と、返事を聞いて軽い動作で袋から肉まんを一つ受け取りそのままかぶりついた。
「こいつがくれるっていうんだからもらっときゃいいんだよ。あんまり考えすぎるとハゲるか…」
そして、そっと小声で。
「誰かさんみてーに胃が痛くなるだけだぜ」
「それは勘弁願いたいな」
そんなハガルに、客人は苦笑して答え。それを見たハガルは満足そうな笑みを浮かべ。
「あ、はがる。向こうに戻るなら黒尖にも持ってってあげて〜」
「おう、りょーかい」
梅月に言われるまま、肉まんを一つもって何やら書類とにらめっこをしている黒尖のもとへと向かった。
ハガルを見送りつつも、客人はしばらくどうしようか迷っていた様子だったが。
「…では、私も一ついただこうかな」
「うん、いいよ〜。あ、ここ座って」
と、笑顔で訪ね、梅月も笑顔で頷き隣に座ることを勧めた。
そうやって二人と一匹で肉まんを食べつつ、客人といろいろ話し。
「へえ〜。おにいさん人間なのに旅してるんだ。一人で?」
人間はこの世界で最も虚弱な種族。捕食される可能性もあるので、あまり旅などはしたがらないのだが。
「いいや、一人ではないよ。護衛もいるし…こうして、友人も一緒にいてくれるし」
と、客人は肉まんを一口サイズにちぎって蛇に与え、その頭を撫でている。
「そっか〜!そのへび、お友達なんだね。名前は…いす…?」
そんな彼らの様子に、梅月はにっこりと微笑んで、先ほど聞いたその名を言おうとするが横文字が苦手な彼は言葉に詰まり。
「この子の名はイスティール。私はウィルド・アウローラ・イグニスレーヴェという。よろしく」
それを見て、そういえば自己紹介がまだだった。と客人、ウィルドが笑顔で名を言い、手を差し出すも。
「いすてぃーる。と、うぃるど…あうろう〜???」
梅月はその少々長めの名を聞いただけで混乱してしまい。
「ウィルドで構わんよ。君の呼びやすいように呼べばいい。彼女も、好きに呼んでいいといっているよ」
それに気づいたウィルドの言葉に。
「んじゃ、いすてぃーとうぃるでもいい?」
「ああ、もちろんだ」
尋ね返すと快く頷かれ。
「わ〜い!あ、ぼくは梅月っていうの。メイちゃんって呼んでね」
と、ようやく梅月も満面の笑みを浮かべてウィルドの手を握り返した。
「ぼくたちも、これで友達?」
「そうだな。イスティールも君のことを気に入ったようだ」
ウィルドの言葉を肯定するように、イスティールがするりと梅月の肩に移動し、その頬に頭をこすり付けていた。
「えへ〜」
「…何を阿呆面さらしてやがる」
その様子を微笑ましげに見ていたウィルドの後方から、あきれたような声が。
皆がそちらに視線を向けると、そこには黒尖が立っていて。
「お客人。一応ここに置いてある物のリストを見てみたが、はやり貴方の求める物はありませんでした」
「そうですか…いや、お手を煩わせて申し訳ない」
黒尖の言葉にウィルドは残念そうに言って立ち上がり。
「私はまた別の方法で探してみるとします。今日は時間を割いていただき、ありがとうございました。イス、おいで」
軽く頭を下げて梅月とじゃれていたイスティールを呼んだ。
イスティールは素直に伸ばされた腕からウィルドのもとへ移動すると。そこが定位置なのだろう、その首に軽く体を巻き付けて落ち着いていた。
「では、私はこれで…」
「うぃるが捜してるのって、胸のぽっけにあるモノに関係してる?」
ウィルドはポールハンガーから帽子を取り、お辞儀をして部屋を出ようとしていたのだが、梅月にかけられた声に目を見開く。
「…メイ、ここに何が入っているのか、君にはわかるのか?」
そして、少々厳しい顔つきになりながら尋ね返すと、梅月はきょとんと瞳を瞬かせ、首をかしげて。
「ん〜ん、わかんないよ?ただ、さっきから半透明の女の子が気付いてほしそうにしてたから」
と、にっこりと微笑んだ。
それを受けてさらに驚いた表情をするウィルドに、余計なことを…とでも言いたげに小さくため息をつく黒尖。
「半透明な女の子って、幽霊か?」
そんな中、ハガルはなにやら面白そうだとニヤニヤしながら梅月に質問を投げた。
「うん。死んじゃってるにしては…なんか変だけど」
それにも梅月は顔色一つ変えることなく簡単に答え。
「ん〜…とねぇ、なんか、すごく寒いみたい。ずっと震えてるし…」
じっと、ウィルドを…いや、ウィルドの胸ポケットのあたりを見ながら。
「ふわふわした髪の、とんぼみたいな羽がある女の子。ピクシー族かな?」
そういって、にっこりと笑うと。ウィルドは弾かれたように梅月の肩をつかみ。
「メイ!君の力を貸してくれ!!」
そんな突然のウィルドの行動に、梅月は驚きもせずただ。
「うん。いいよ〜」
と、にっこりほほ笑んだ。
そんな彼らの様子に、黒尖は大きなため息をつき。
「またいらぬ事に自ら首を突っ込むか…」
「え〜?だって、うぃるは友達だもん。困ってる友達は助けてあげないと。ね?」
眉間にしわを寄せ首を振る彼にも梅月は笑みを向けそう言うもので。
黒尖りは再びため息をつき。
「これはうち本来の仕事ではないが、こいつは立派な従業員だ。金はとるぞ」
「ああ、もちろんだ!それとは別に謝礼も出させてくれ!!」
黒尖の言葉は半分、余計な事をさせないようにする脅しのようなものだったのだが、ウィルドは即答でそれを承諾し、さらには謝礼まで出すという。
さすがにそれに面食らった黒尖にハガルがこっそりと。
「あいつんち、想像もつかねーくらい金持ちだから。なんも言わなかったら普通の感覚だと引くくらいの謝礼包んでくるぜ」
含み笑いをしながら言われた言葉に、黒尖は頭を押さえ。
「…面倒ごとは勘弁してくれ」
と、大きなため息をついた。
ウィルドの胸ポケットに入っていたのは、小さな服。
人形の物のようにも見えるが、それは全長が10cmほどしかないピクシー族の服だからだ。
何故、ウィルドがそのような物を持っていたのか。それは彼がこの服の持ち主の両親に、娘を探してほしいと頼まれたからである。
彼は旅をしているが、何でも屋のような依頼も請け負っていた。
その理由は路銀を稼ぐため…ということもあるが、立ち寄ったその街の情勢を知るためでもある。
そして、この街でもそうやって依頼をこなしていたが、今回はターゲットが小さいうえにいなくなってからずいぶんと日が経っているという。
情報があまりに得づらいため、この街で商いをしていた友人のハガルに相談し、そこから有楽堂へたどり着いたのだ。
ハガルがここを紹介した理由は、ここに差し押さえられた道具の中には呪具等も含まれているので"失せ物探し"に使えるものもあるのではないか…といった理由からだったのだが。
「しっかし、道具じゃなくてメイにそんな能力があるとはなぁ」
小さな服を手のひらに乗せじっと見ている梅月を見守りながら、ハガルがポツリとつぶやく。
「お前、知ってたのか?」
「…さあな」
そして、隣にいた黒尖に尋ねるが、彼はそっけなくそう答えた。
小さな小さな洋服をじっと見つめていた梅月が目を閉じると、頭の中に浮かんできた光景は。
「ん〜…。ここから、…北の方。森…山、かな?の、洞窟の奥。泉…氷…」
時折ぶれながら脳内に映し出される映像を声に出す。
なんで?どうして?ここはどこ?どうして?いやよ!かえりたい!!くらい!こわい!いや!いや!いや!こわいくらいこわいくらいこわいさむいさむいさむいさむいさむいさむいさむい…
たすけて…!!!
しかし、最後は何も映らない真っ暗な中に少女の悲鳴が響くだけで。
「……あ〜…見えるの、ここまでみたい」
瞳を開け、困ったように呟く。
「北の山…他に何か場所がわかるようなものはないのか?」
そんな彼に声をかけたのは、以外にも捜索に協力することを渋っていた黒尖だった。
「ん〜とね…。あ!!なんかね、濃い青色のまんまるなお花がいっぱいあったよ!」
「まんまるな花?」
「うん!まぁるくてころころしてて可愛かった!」
「…瑠璃玉薊?…いや、しかし…」
目をキラキラとさせて、その花の可愛らしさを説明する梅月をよそに、黒尖は眉間に皺をよせている。
「…ご主人、一体…」
急に黙り込んでしまった黒尖に、今度はウィルドが声をかける。
すると、彼は小さくため息をついた後。机の引き出しから地図を取り出しテーブルに広げ。
「ここから北にある山はこの三つ。その中で、梅月が見たであろう花が自生しているのは此処だけだ」
と、地図の中の山を指さし。
「この地図によれば確かに洞窟もある…」
「そうか!ではさっそく…」
「だが、ここはある人物の私有地だ」
黒尖が示した山へすぐにでも行こうとしていたウィルドだったが、続けられた言葉に動きを止め。
「もし、この事件とその人物に関わりがあるのだとすれば…。相当、やっかいだぞ」
この失踪事件の裏には更なる善からぬモノが関わっている。そう暗に言われたウィルドはしかし、爽やかな笑みを浮かべ。
「大丈夫だ。何とかして見せるさ」
そして、今度こそ出口へ向かう扉を開けて。
「協力、感謝する!今は手持ちがないあまりないんだ。今回の礼はまた後日、改めて」
そそれを聞いて、黒尖は首を横に振る。
「…これは阿呆が友人のためにやった事だ。礼ならこの阿呆に何か食わせてやってくれ。それでいい」
それを聞いて、ウィルドは少々驚き、梅月は喜びに飛び跳ね、ハガルはにやにやとしていたので。
「イテッ!ちょ!!地味にいてぇ!!」
黒尖はハガルの脛をげしげしと蹴っていた。
「…では後日、食事をしよう。ご主人。貴方も友人だと思っているので招待したいのだが…」
「…好きにすればいい」
「あれ?黒尖てれてる?てれてる??」
「ほほ〜…」
ウィルドの申し出に顔を背け、そっけない返事をした黒尖の様子を見た梅月とハガルが示した反応に。
「…………」
眉間に皺をよせた黒尖は、今度は梅月もろとも蹴ろうとしていたのだが。
「きゃ〜」
「って、地味に痛いから蹴るなって!!!」
梅月はそれをうまくかわして再びハガルのみがげしげしと蹴られていた。
「三人は仲がいいのだな」
そんな彼らの様子をぽかんと見ていたウィルドが微笑み呟いた言葉に、梅月は嬉しそうに笑い黒尖は心底いやそうな顔をし。
「いやいやいや!!笑ってねーで助けろよ!?」
ハガルがツッコミを入れていた。
数日後。
黒尖は自身のデスクで新聞を広げていた。
少し離れた町で行方不明になっていたピクシー族の娘が冷凍保存された状態で見つかったという記事を読んでいると。
つけっぱなしだったテレビからはとある権力者の様々な不正が暴かれ、家宅捜索が入ったというニュースが流れ。
「あ、これってうぃるが探してた子のこと?」
茶を持ってきた梅月が、広げられた新聞を覗き込みながら尋ねてきた。
「…そのようだな、発見場所も一致する」
「この子、生きてたんだね〜」
ピクシー族の少女は洞窟の奥に作られた氷室で冷凍され、食料として保存されていた。
だが、急激に冷やされたことが功を奏し、仮死状態であったために生きて帰ってくることができたのだ。
その氷室には、少女以外にも行方不明とされていた様々な種族が冷凍されており。それは多種族が住むこの世界でも違法とされる行為で。氷室を管理していた権力者にも捜査のメスが入ったというわけだ。
「…まぁ。俺達には関係のない事だがな…」
そう言って、新聞をめくった黒尖はとある記事に目を止めた。
それは、外遊しているとある国の第3王子が近々この国へやってくる。というものだったのだが。
その記事に掲載されている写真に写る人物が…。
「あれ〜?この人、うぃるによく似てるね」
黒尖が記憶していることが正しければ、この国に王子が4人、王女が2人いて、4人目の王子はめったに公に顔を出さないため顔を知る者は少ないという…。
「いや、まさか…」
上等にしつらえられた衣服、品のある立ち振る舞い、一般的感覚で引くほどの大金持ち。
己の眼で見て、ハガルに言われていた言葉を思い出しつつも、黒尖は首を横に振る。
そんな時、コンコンとドアをノックする音が。
「はぁ〜い」
扉を開けに走った梅月が、ノブに手をかけ来訪者を招き入れる。
「あ、いらっしゃい!!」
「やあ、メイ。先日は本当にありがとう」
そこには、写真の人物とよく似た微笑みを浮かべるウィルドの姿があった。
END
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読み直してないので誤字脱字はご了承ください←
そしてハガルとイスティール借りちゃった!だってあんな絵描くんだもんwww
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