田植えが終わり、野良仕事も一息ついた。
相方と二人の都合が合う6月4日の土曜日に台高の山に行こうと話していた。だが、三重県の天気予報は曇り。山では雨になるかもしれない。
「天気が良さそうなのは、石川、福井、長野あたりよ。」
気象庁の週間予報を見て、私が言った。
「日本海側はいいのかな。なら、雨飾山に行こう。」
「えっ!?遠いいよ!」
「一人じゃ運転が大変だけど二人ならなんとかなるよ。」
最近相方は雨飾山に行きたがっていた。
ということで急遽雨飾山に行くことに決定!
3日の仕事を早く終わらせて、午前9時半過ぎに家を出た。
途中でお昼ご飯を食べたり、給油したりして松本に午後6時頃着く。ここで以前次男と行ったことのある「かつ玄」という古民家を移築したトンカツ屋に入る。
2000円くらいの定食だが、雰囲気のいい手入れのされた庭を見ながら優雅な夕飯となった。
外に出ると、夕焼け空の下に常念岳から後立山の山並みが良く見えた。
明日はお天気持つだろうか。
小谷村に入り、登山口の雨飾高原キャンプ場に着いたのは午後9時半過ぎになっていた。
休憩や食事時間を含めて半日かかった。やはり遠い。
キャンプ場の上には満天の星空が広がっていた。
翌日は午後から曇る予報だ。できるだけ早く出ようということになった。
「3時起床、4時出発!」
「3時半でいいよ・・・」
「じゃあ、3時10分にアラームをかけるわよ。」と折り合う。
トンカツ屋で何杯も飲んだお茶のせいで、私は寝付かれなかった。
6月4日
携帯を見ると2時50分だ。まだ早いが、寝れないので着替えて用意をしていた。
3時10分にアラームが鳴り、相方が何とか起きだした。
空には薄い雲が広がっていた。それでもまだ晴れている。
4時20分出発。もうヘッドランプはいらない。
木道脇には、大きくなりすぎた水芭蕉の葉っぱがあった。だが、まだ見ごろの水芭蕉もいくつかあった。
「花は帰りにゆっくり見ることにして、できるだけ早く山頂に行きましょう。」
登山道に入り、しばらく行くと、大きなブナの木が何本も立っている。
「最初から自然林で気持ちがいいなあ。」相方は満足げだ。
やがて荒管沢の雪渓に出る。すっかり小さくなっていた。
そこから見上げる雨飾山は布団菱の岩峰などが荒々しかった。雨飾山という優しい名前のイメージではない。
雪渓を渡ると急登になるが、早い時間帯なので暑くもないし、急な登りが好きな私は確実に高度を上げて行った。
シラネアオイのうす紫の花が現れ出した。
シラネアオイの花びらは端が枯れたようになっているものもあった。他の葉っぱも枯れたようなのがある。
「きっと遅霜にやられたのよ。うちでもこの数日ずいぶん朝は冷え込んだもの。」
春の花の代表的なカタクリもまだ咲いていた。そうかと思うともう夏の花の代表のハクサンイチゲも咲いている。
春と夏が一気にきたようだ。そんなときに霜が下りたら花たちは風邪を引くだろう。
笹平は気持ちのいい笹原だった。その向こうにやっと雨飾山の山頂が見えてきた。
山頂からの景色を期待して、足は速まる。
7時半に雨飾山山頂に着く。
「わあっ〜〜〜!!!」
思わず声を上げる。
目の前には白馬岳がどお〜〜〜んと大きくそびえていた。
その左には遠く槍穂、そして後立山の山たちが爺ヶ岳から続いている。
その右には糸魚川の平野から日本海が広がっている。
反対側には焼山が噴煙を上げている。
高妻山や戸隠山も近い。
ダイナミックな展望だ。
空には雲も出てきたが、快晴の空よりも味がある。
前日のトンカツ力のおかげで、私は朝から何も食べていなかった。
北アルプスの雄大な眺めを見ながら遅い朝食にする。
山頂に1時間いてから8時半に下山する。
帰りも半日かかるのだ。あまりゆっくりはしていられない。
下り始めると、予想以上に急な下りで驚いた。登っているときはそれほど急に思わなかったのに、下るとなるととても急なのだ。
さらに下からどんどん登ってくる。狭い場所で道を譲るのも大変だ。
さすがにお天気のいい土曜の百名山の山だ。
ゆっくりと花を愛でながら下る。
行きには気づかなかったユキワリソウが1株咲いていた。
登山口近くになってもまだ登ってくる登山者がいた。
暑い時間帯の登りはきついだろう。
駐車場に11時半に着いた。
道路にも車がたくさん駐車している。今頃山頂は多くの登山者で賑わっているだろう。
早く出発して早く下山して正解だった。
小谷温泉の老舗の山田旅館で温泉に入る。
ここには新しい新館の温泉と、古い本館の内湯の温泉がある。別料金だ。
「新館の温泉はシャワーが付いていて、露天風呂もあって700円です。本館の温泉はシャワーがないので温泉のお湯を汲んで使います。江戸時代からの温泉で500円です。」
宿の人が写真を見せて説明してくれる。
私は本館の温泉に入りたかったが、相方は露天風呂のある新館の温泉を選んだ。仕方なく私も新館を選んだ。
新館の湯船は檜だった。建物も檜造りでいい雰囲気だ。お一人様の温泉はぬるめで気持ちよかった。でも・・・やっぱり江戸時代から続くという本館の温泉に入ってみたい。
お湯から上がって相方に話すと、相方も入りたいと言う。もう二度と来ないだろうから、ここは本館の温泉にも入ろう。
レトロなレンガ造りの温泉は他にはない風情があった。滝湯と寝湯もある。
ここでも貸切だ。やっぱり本館の温泉のほうがいい。
ざる蕎麦を食べ、日本酒とワインを買って帰途につく。
何度もサービスエリアで休憩をし、運転を交代しながらのロングドライブだ。
家に着いたのは12時過ぎ。無事に帰宅できてほっとする。
往復で走行距離は1000キロを超えていた。
雨飾山、遥かなる山旅だった。
ここを選んだ相方に感謝!!!
ログインしてコメントを確認・投稿する