mixiユーザー(id:5376428)

2016年04月30日21:26

264 view

「スポットライト 世紀のスクープ」

「スポットライト 世紀のスクープ」 ’15 (米)


監督:トム・マッカーシー 脚本:トム・マッカーシー,ジョシュ・シンガー
撮影:マサノブ・タカヤナギ 編集:トム・マカードル
m:マイケル・キートン,マーク・ラファロ,ジョン・スラッタリー
   リーヴ・シュレイバー,スタンリー・トゥッチ,ブライアン・ダーシー・ジェームズ
   ビリー・クラダップ,ジェイミー・シェリダン
f :レイチェル・マクアダムス

’16 全米映画批評家協会賞 作品賞,監督賞
’16 インディペンデント・スピリット賞 作品賞,監督賞,脚本賞,編集賞
’16 アカデミー賞 作品賞,脚本賞


カトリック教会神父の子どもたちへの性的虐待を暴いた
「ボストングローブ」紙「スポットライト」班の記者たちの物語。
『レヴェナント 蘇えりし者』を押さえてアカデミーの作品賞を獲った…
ことに何より驚く。だって地味…(笑)。
しかし抜群に面白い!
記者たちの地道な取材がズルズルとカトリック教会の巨悪を引きずり出す過程に
ゾクゾクするけれど、
たぶん誰もが思い出す『大統領の陰謀』には
ニクソンの悪行を白日の下に晒すという
我々日本人にも“納得の爽快感”があったのと違って、
いくら数字でカトリック人口を挙げられ
行政・警察・法曹界・地域コミュニティーと教会の親密を説かれても
この事件の衝撃を我々は皮膚感覚で理解できないので、
彼ら記者たちの成したこと―
ひいてはこの映画が作品賞を受賞する意味―に爽快を感じていいものか
今一つ解からないのも事実だったりする。
いや、とてもよくできた脚本だし
記者たちの個性も満足行くものなのだけれど、
彼らが(ユダヤ人編集長バロンやアルメニア人弁護士ギャラベディアンと違って)
自らもカトリック社会を当然のように呼吸して来たボストン市民として
どのようにこの事態と対峙したのか…?
その内奥については触れられないから
(レイチェル・マクアダムスの祖母とか
ブライアン・ダーシー・ジェームズの子どもたちが
その辺りをもっと担うのかと思っていた…)、
途轍もなく面白いけれども
どこか淡白な感じが付きまとったりする。
記者たちの背景のドラマは意識的に排除されているのは解かる。
尺の問題よりも
彼らの取材活動に特化した語りにこそドラマがある…という作りだから。
けれども この映画は
カトリック教会組織の腐敗を暴きました。終り。という映画ではなくて、
信仰が招く権力が常識や慣例を思うままにする社会―
に抗した記者たちの物語であるのだから、
この“社会の気持ち悪さ”が描かれてこそ評価できるんじゃなかろうか…?
たぶんこの“社会の気持ち悪さ”を解かっているのは
ユダヤ人編集長とアルメニア人弁護士の異邦人(?)なのであり、
彼らのドラマにもう少し厚みがあれば…
と思わないでもない。
十二分に面白い佳作なんだけれども…。
3 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する