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2016年04月20日23:47

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「マジカル・ガール」

「マジカル・ガール」 ’14 (西)


監督・脚本:カルロス・ベルムト 撮影:サンティアゴ・ラカハ
編集:エンマ・トッセル
m:ホセ・サクリスタン,ルイス・ベルメホ
f :バルバラ・レニー,ルシア・ポジャン

’14 サンセバスチャンン国際映画祭 グランプリ,監督賞


カルロス・ベルムトの長編2作目だそうである。
タイトルや使用されている楽曲や 重要なモチーフであるアニメのコスチュームから
この監督が相当な日本オタクであることは想像できるのだけれど、
魔法少女の衣装を着た少女の画に惑わされると
裏切られるどころか痛い目をみる映画なのだ。
「いついかなる時にも2+2=4である。完全な真実は常に同じ答えなのだ。」
と語る(観終わって解かるのだが)ダミアンの言辞―
冒頭とラストに登場する掌の物が消失するマジック―
ダミアンが失うジグゾーパズルのピース―
ダミアンとバルバラの関係―
アダの仕切る怪しすぎる商売―
“とかげ部屋”の謎―
と、映画は何も明らかにしないのだが、
それらが喚起する象徴性や深読みの符牒は明らかにされないことで
観客の不穏な気分を醸成して行く装置のようであり、
12歳の白血病の少女が父ルイスに望んだ魔法少女の衣装は
病める人妻バルバラへの恐喝から性をめぐる妖しい商売を招き
ファムファタルたる教え子に脅える元教師ダミアンを招聘して
完璧な魔法少女に変身するアリシアに戻り
円環が繋がり、
不穏な気分だけが読後感として沈殿する…
そんな映画なのだから。
予想外の展開に攫われる体験は映画の醍醐味ではあるけれども、
夫に支配されるがごときバルバラの病の在りようや
想像される彼女の過去の怪しさはともかく、
少女アリシアにとってこんな結末は観たくなかった!
というところまでが予想外になっているから
映画は胸くそ悪い感慨にまず衝撃を受けるわけで、
これはちょっとお目にかかれない稀有な映画なのは間違いがない。
アリシアが父ルイスを
バルバラが元教師ダミアンを 操って
悲劇の円環が成されるところが“マジカル・ガール”なのかもしれず、
この不健康さは「まどマギ」に因るのではなく
スペインの血の濃さによるのではないか…などと思った。
日本人も悲劇が好きだが
スペイン人の悲劇の情念は粘度が違うよな…と思うから。
爽快ではないが 佳作。いや秀作かも。
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