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2016年04月18日02:03

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「チャイナ・ゲイト」 「裸のキッス」 「ショック集団」

15日は「冬冬の夏休み」、

16日は「ロブスター」
     「SPY TIME スパイタイム」

17日は「チャイナ・ゲイト」
     「裸のキッス」
     「ショック集団」 を観に行きました。




色々間に合っておりませんが、
本日はさっき観て来た
「『サミュエル・フラー自伝』刊行記念 サミュエル・フラー連続上映」のことなど。


福岡では本日のみの上映会なので
元々劇場ではない場所にイスを並べての3本連続は相当きつかったかも(笑)。
件の自伝を刊行した樋口泰人氏のトーク付き。
サミュエル・フラーはたぶん『最前線物語』をTV放映で観たことがある…?
もちろん当時はリー・マービンで観てて監督の名前なんかよく知らなかった…?
以来 映画を観始めてからも(98年とか99年頃)彼の名前に遭遇することはなく
今年の初め『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』で
彼の『ホワイト・ドッグ』を知って監督名が『最前線物語』と繋がるまで
サミュエル・フラーのことは名前を聞いたことがある…程度だったわけです。





「チャイナ・ゲイト」 ’57 (米)

1954年ベトナム。第一次インドシナ戦争。フランス軍傭兵となったアメリカ人が
モン族と欧州人のハーフで元妻のリアの助けを借りて
ベトミンの武器集積場“チャイナ・ゲイト”破壊に赴く…というお話。
敵陣潜入・爆破工作アクションの体裁なのだが
主人公の東洋人蔑視と共産主義嫌悪,ハンガリー人傭兵の大戦のトラウマ,
アメリカ黒人傭兵の差別体験,わけも解からないまま使い捨てにされるモン族…と
ミッションとアクションとは関係のないモチーフやテーマが出張って
お話の語りに滑らかさがなく、
映画としてはいびつな感じがする。
それは後の2本も同じで、
この人は園子温みたいに描きたいことやものを演出することに引っ張られて
全体がゆがんでしまうことを厭わない人のようだ。
ボートで川を遡上してベトミンの首領に会いに行く…ってのは
『地獄の黙示録』みたいだし、
その首領を演ってるのがリー・ヴァン・クリフだったり
おばさんにはおあちこちとても懐かしかったり面白かったりするのだけど、
身も蓋もない白人至上主義を披露する主人公の偏見と
それに激怒し噛みつきながら それでも愛してしまうヒロインの哀しさと
いったい
この映画はどこを見せたいんだろうね…と思ってしまうのだが、
後の2本を観ると
サミュエル・フラーはこのするっと呑み込めない
いびつでザラザラした質感をこそ読む監督なのだ…と理解できると思う。





「裸のキッス」 ’64 (米)

冒頭いきなりヒロインが男をボコボコに殴打するシーンから始まるのだが、
この売春婦であるヒロインが都会とヒモから逃れて小さな町にやって来て
障害者施設の看護助手となり
町の名士である病院の所有者と恋をして結婚が決まるのだが、実は…というお話。
これもヒロインの(売春婦からの)更生・恋愛・結婚と展開する女性譚ではあるけれども
搾取される者としての売春婦,偏見と蔑視の対象である売春婦
障害児のケアと教育,未婚女性の妊娠,普通の娘が売春婦となる陥穽,
小児性愛者の偽装結婚…と
女性に関する差別と偏見をダメ男たちに照らして言い出したら止まらない…
みたいな体裁になって(しまって)いて、
売春婦が看護師になる(ナースの服着てキャップ載せてる)展開にあんぐりしてると
ベタ甘の恋愛シークエンスにはぁ?となって
婚約者が少女にいたずらしようとしているところを発見
売春婦は変態で同類だと言われて逆上し殺害(!)
保身や悪意や偏見のお蔭で孤立無援のままただの犯罪者に?!
またまたまた…いったいどこを見せたいの??と呆れてしまう。
しかし面白いのだ! 絶対!
ヒロイン コンスタンス・タワーズのゴージャスな美貌と肢体
60年代初頭の美麗なファッション…は
いかにもアメリカ製スタジオ映画なのに
内容は小児性愛者から少女を救った売春婦が町を去って行くお話なんだから
サミュエル・フラーのヘンさが解かろうというもの(笑)。





「ショック集団」 ’63 (米)

これは観てないけど話は聞いたことがあるような気がする…。
精神病者を装って精神病棟に潜入、患者を観察・捜査して
そこで起こった殺人事件の犯人をつきとめようとする新聞記者のお話。
新聞記者はこの記事でピューリッツァー賞を狙うという野心家で
その恋人でクラブの踊子が妹を装い
レイプ未遂の告発をして強制入院させるのだから
今観るとあまりに大雑把だし 患者の人権無視も甚だしい(笑)。
事件の目撃者は3人いて、記者はそれぞれに近付き情報を得ようとするが
朝鮮戦争で共産主義に洗脳され帰国するも発狂した兵士
南部の大学の初めての黒人学生で激しい人種差別に発狂した青年
原爆開発に寄与し倫理的葛藤から発狂した科学者…の3人は
混乱と混沌の独白の末そこだけカラーの映像挿入の後
一瞬正気を取り戻す…というシークエンスをフラーは繰り返し見せる。
フラーはやはり戦争という暴力が人間にもたらすもの
根深い人種差別がはびこるアメリカの実相―を
語らずにおれない強い衝動があるのだろうと思ってしまう。
精神病院の異様は表面上の不安を象っているけれども、
主人公が病者の中で暮らすことで正常を侵食され
正気を失って行くさまがサスペンスになってはいるけれども、
圧巻は3人の病む過程が暴露される件りであり
アメリカと戦争が作り上げた大いなる病が3人に仮託され
非常に気持ちの悪い結末に落とし込まれているのだ。
無理矢理でおかしなエピソードもあるけれど
不穏が牽引力となって物語を読ませ
暗澹たるラストに導く“映画の勢い”にやられる。
ゴダールが65年のベストランキングに選んだことで有名だそうな。
3本続けて観て
サミュエル・フラーは差別と偏見と戦争の暴力を語りたい欲望が
時に映画を歪めてしまっても
そのいびつさがフラー色となってしまう奇妙な監督なのだな…と思ったのだった。
園子温が好きだから
サミュエル・フラーも好き…と言いたい(笑)。





あ、「サミュエル・フラー自伝 わたしはいかに書き、闘い、映画を作ってきたか」
も買っちゃいました。(だって定価の¥1000引きだったんだよ!)
でもこれ
上下2段784ページもあるのよ。
厚くて重くて持って歩けないから映画に行く時携行できないよ…とほほ(笑)。
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