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2016年03月07日22:49

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「キャロル」

「キャロル」 ’15 (米)


監督:トッド・ヘインズ 脚本:フィリス・ナジー 原作:パトリシア・ハイスミス
撮影:エド・ラックマン
m:カイル・チャンドラー,ジェイク・レイシー
f :ケイト・ブランシェット,ルーニー・マーラ

’15 カンヌ国際映画祭 主演女優賞(ルーニー・マーラ)


パトリシア・ハイスミスが別名義で発表しベストセラーとなった
レズビアン小説の映画化…なのだが、1952年が舞台のそれは
『アデル、ブルーは熱い色』のようなセンセーショナルな性愛の描写からは遠く
眼差しや吐息や指先にこもる“人を恋ふ思ひ”を
くどいほど丁寧に演出した作品で、
女同士であることにはあまり意味はなく…というか
男女間の恋愛では もはや禁忌に身もだえする恋情は成立しないのだろう…
と思ってしまう オールドファッションな恋の描写が
世界一豊かな国50年代のアメリカの風俗の中で展開するのだ。
ハイソな奥さまキャロルがデパートのおもちゃ売り場で
売り子のテレーズを見初めることから始まる物語は、
離婚調停中のキャロルの夫の生態や思考に当時のマチズモや偏見が見える構造で
『エデンより彼方に』同様
同性愛者蔑視や黒人差別を抱える50年代のいびつさを
トッド・ヘインズは魅惑的な風俗と共に描き出したいのだと思う。
同時にここでは
夫と離婚したキャロルはインテリアデザイナーとして自立しようとするし
テレーズはニューヨークタイムズで写真の仕事を始めるのだから、
女性が男の所有物・被庇護者から脱して
「私」を生き始める解放の予兆を示してもいるのだ。
この人は女優に賞をもたらす人のようだが
(『エデン〜』でジュリアン・ムーア、『アイム・ノット・ゼア』でケイト・ブランシェット、
本作でルーニー・マーラが、ヴェネツィアとカンヌで女優賞受賞)
彼の演出は微細にわたり繊細で
女優にとって演じ甲斐があり 楽しいのではないかと思う。
肉体関係を結ぶに至るまでに
こんなにも長い行程が必要であること―が、
なんと慎ましく美しく 物語を思いで満たすことだろうか…!と
今となっては懐かしいより羨ましくさえ感じられるのだった。
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