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2016年03月05日23:38

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「さようなら」

「さようなら」 ’15


監督・脚本:深田晃司 原作:平田オリザ アンドロイドアドバイザー:石黒浩
撮影:芦澤明子 編集:浦部直弘,深田晃司 音楽:小野川浩幸
m:新井浩文,村上虹郎,ジェローム・キルシャー
f :ブライアリー・ロング,ジェミノイドF,村田牧子,木引優子
  イレーヌ・ジャコブ


10年に初演された平田オリザによる同名のアンドロイド演劇を
『歓待』『ほとりの朔子』の深田晃司が映画化。
複数の原発事故後 放射能に汚染された近未来の日本
諸国への避難計画に則り 町からは粛々と人が消えて行く―
避難優先順位の低い難民であるターニャは生来虚弱で
アンドロイドのレオナのサポートを受けて一人で暮らしている―
という物語は ただひたすらに静謐であり、
死の予兆が不気味や不穏を醸成するのではなく
光が色彩を司るように 寂寥が世界を象り、
命あるものが見せる 狂騒の後のぽっかりと穴の開いた空虚を
命なきアンドロイドが律儀に記憶し続けることの哀しみ…が映画を
こらえ得る涙をこらえ続ける
どうしようもなく切ない気分で満たしていて、
手塚治虫の国でアトムをロボットのスタンダードとして知る我々には
彼の作品と全く同じ 美しくも残酷で透明な哀しみ…を
この作品に感じてしまうのだ。
窓辺の風光がそのままヒロイン ターニャの心象であるような
冬枯れたさみしい空気を捉えたカメラがよくて、
骨という「物」になったターニャを何年も何年も記憶し続けるレオナが
自ら紡ぎ出すことのない「詩」こそが
この映画なのだろう…と思わずにいられない。
超絶に美しい映画である。
佳作。
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