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2016年02月21日23:39

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経済談義第17回:絶対不均衡への対策

経済談義シリーズ第17回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



前回の記事では、価格がゼロになっても需要と供給がバランスしない「絶対不均衡」状態について書きました。絶対不均衡状態では、供給される商品が市場で消化されずにブタ積みになってしまうなどの混乱が生じます。

それを防ぐにはどうしたらよいでしょうか。単発的な検討はこれまでも行われていて、「マイナス価格」や「政府の介入」などの対策が挙げられています。今回はそれについて解説します。


絶対不均衡状態の対策の第一としてあげられているのが、
「マイナス価格」です。
需要供給曲線のグラフの交点(均衡価格)がX軸(地平線=価格ゼロの線)よりも下に沈んでしまうというのは、数学の観点からいえば、交点の価格が「マイナス」になっているということです。
それならば、何らかの形でそのマイナス価格とやらを実現してやれば、需要が増加して、あるいは供給が減少して、需給がバランスするだろうという考え方です。

でもマイナス価格ってなんでしょうか。スーパーマーケットで価格がマイナスなんて見たことがありません。

考えを巡らしてみると、通常はものを買う人が売る人にお金を支払うのですが、逆に売る人が買う人にお金を支払うことにすれば、それがマイナス価格といえるのではないでしょうか。タダでも欲しくないようなものでも、お金がもらえるのなら引き取ってやろう、そういう人が現れることを期待するわけです。

それには通常の売買とは違った仕組みが必要で、具体的には「引き取り代金」というものを導入します。
代表的な例は粗大ゴミです。売り手(粗大ゴミを処分したい人)が、買い手(ゴミを引き取ってくれる処理業者や自治体)に処分手数料を支払います。これがマイナス価格に相当します。
何らかの理由で粗大ゴミがたくさん出た時には、処分手数料を高めに設定して、ごみ処理業界への新規参入を促します。

ただし、マイナス価格を導入すれば必ず均衡が実現できるかというと、残念ながらその保証はありません。
前回の記事で例にとった中古住宅についていえば、引き取り手数料を導入したからといって供給が減ることもありませんし、需要は一定以上に増えることはありません。いくら手数料をもらえるといっても、条件が悪くて転売できる見込みが全くない空き家を不動産屋が引き取るとは考えにくいでしょう。

前回の記事のグラフを2枚目の図に再掲します。これを見ると、需要曲線と供給曲線がどちらも垂直に近く沈み込んでいて、その先に交点があるかどうかすら疑わしいでしょう。マイナス価格を導入したとしても、空き家問題は完全には解決できないということです。


絶対不均衡のもう一つの対策と考えられているのが
「政府の介入」です。
これはケインズ経済学にもとづく考え方で、公共事業など各種の政策で、需要と供給をコントロールしてやろう、とくに需要を強制的に増やしてしてしまうというものです。土木や建設の業界ではこれまでも一般的に行われてきたやりかたです。
中古住宅の例でいえば、「売れ残っている中古住宅はすべて政府が100万円で買い取る」と決めて無制限に買い漁れば、供給に見合う需要を創出することができます。

しかしこのやり方にも問題があります。日本中の中古住宅を政府が無理やり買い占めたとしても、供給側(空き家の発生)をコントロールすることはできませんし、買い取った空き家が入居者で埋まるわけではありませんから、住宅が活用されることもありません。
税金の無駄づかいというそしりはまぬかれないでしょうし、財源を借金(国債)で賄えばそれはあとあと財政が悪化するという副作用があります。


いずれにせよ、効果が十分でデメリットのない対策というのはなくて、絶対不均衡が経済学の想定を超えた事態であることには変わりはありません。



連載バックナンバー:
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1942875057&owner_id=277042
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