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2016年02月11日00:50

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経済談義第16回:需要と供給の絶対不均衡

経済談義シリーズ第16回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



前回は需要供給曲線について説明しました。それをもとに、いよいよ本題の物価下落の考察に入りたいと思います。


世の中にはいろいろな商品がありますが、例として「中古住宅」を取り上げます。
中古住宅も市場で取引されるひとつの商品ですから、需要と供給に応じて価格が変動します。基本的には前回説明したとおりの関係で、「供給が増えれば価格が下がる」、「需要が増えれば価格は上がる」関係です。  しかし今の日本では、それだけでは終わらない変化が起きつつあるのです。

中古住宅市場の今後の動向について、需要の面と供給の面からそれぞれ見てみましょう。


まず需要についてですが、中古住宅の需要はこれから減っていくことが確定的です。
ご存知の通り、日本の人口は2007年をピークに減り始め、今後加速度的に減少していきます。世帯数の観点から見ても、現在のところは単身世帯が増えて増加していますが、2019年をピークに減少に転じると予測されています。

参考:日本の世帯数の将来推計(全国推計) (国立社会保障・人口問題研究所)
http://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2013/gaiyo_20130115.pdf

人口が減って世帯も減っていくわけですから、住宅需要が増えるわけがありません。そのなかで中古を嫌って新築住宅を求める人もかなりいますから、中古住宅の需要はますます減っていくことは間違いないところです。


一方の供給ですが、こちらは間違いなく急増します。今ある住宅には家族が住んでいるわけですが、子供が独立して、残された両親がより小さい住居に引っ越したり、福祉施設に移ったりすれば、その家は空き家に、つまり中古住宅となります。高度成長期にサラリーマンの皆さんが額に汗して働いてこぞって買い求めたマイホームが、中古住宅としてこれから大量に、そして自動的に市場に供給されてくるわけです。


ここで押さえておかなければならない重要な点は、このような変化が価格によらないということです。極端な話、価格が下がりきってゼロになったとしても、需要は減り続け、供給は増え続け、供給が需要を上回る状況が続くことになるのです。

このような状況をグラフにあらわしたのが図です。前回説明したのとは様相がかなり異なっています。
需要曲線が右下がり、供給曲線が右上がりというのは前回と変わりません。しかしひとつ大きな違いがあります。それは、グラフの真ん中にあるはずの「交点」が存在しないということです。あるいは見方によっては、交点がはるか地下に沈み込んでしまっているともいえるでしょうか。

本来なら需要と供給が交わる交点、つまり「均衡価格」を中心に価格が調整されるということになっているのですが、このような両者が交わらない状況においては均衡価格というものが存在せず、市場原理が働く限り際限なく価格が下がり続けることになります。
こういう特徴的な現象に対しては名前を付けておいたほうがよいと思うので、この現象を僕は「需要と供給の絶対不均衡」と名付けました。

そして、ここでは中古住宅を例に挙げましたが、住宅全般、さまざまな耐久消費財など、多くの品目が同じような「絶対不均衡」状況に陥って、価格が長期下落してく可能性が高いでしょう。



「需要曲線と供給曲線が交わる」というのは、経済理論の根本原理のひとつです。経済学の様々な場面において、均衡価格の考え方を応用した論理が展開されます。
その根本原理が成り立たない、これからの日本はそういう特異的な世界に、徐々にしかし着実に突入していくと僕はみています。

需要と供給が交わらないと一体どうなるのか、経済の根本原理が崩れると果たして何が起こるのか。経済学の世界でもこれまでのところ系統だった考察はされていません。今後の研究が待たれるところです。



連載バックナンバー:
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1942875057&owner_id=277042
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