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2016年01月22日21:07

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ドゥーチュィムニー「勉強会には百田よりナベツネが適任!【報道圧力発言】で安倍首相に求められる責任の取り方」

 自民党の勉強会で、報道への圧力を求めたり沖縄の世論について侮蔑的な発言が出た問題について、安倍晋三首相は「国民の皆様に申し訳ない」と陳謝した。問題が指摘されてから1週間かかり、安保関連法案の審議への影響を懸念して幕引きを図るための対応だろう。とはいえ、このところしきりにメディア・コントロールを強化してきている自民党の総裁自身が、「安倍政権を厳しく非難している報道機関でも、言論の自由が侵されてはならない」と約束したことの意義は、決して小さくない。私たちも、よくよくこの言葉を記憶しておきたい。

●暗黙の了解がある“壁耳”取材

 問題発言があったのは、安倍首相に極めて近い議員たちで作る勉強会の席上だった。しかも、議員たちは記者が部屋の外で、やりとりを聞くべく壁に張り付いているのを知っていた。

 この日の講演者で、その発言も問題視されている作家の百田尚樹氏は、「週刊新潮」(新潮社/7月9日号)で次のように書いている。

「講演を始めてしばらくすると、ドアのすりガラスに耳がいくつもへばりついているのが見えた。どうやら廊下にいる記者が部屋の中の会話を聞こうとして、ガラスに耳だけをくっつけているのだ」

 百田氏は、これを「盗み聞き」と怒っているのだが、少なくとも議員たちは、これが「壁耳」と呼ばれる取材方法であることは知っているはず。百田氏や安倍首相らと気が合いそうな産経新聞の阿比留瑠比記者も、2006年6月2日付の自身のブログで「壁耳で始まる一日」というタイトルで、こんなふうに書いている。

「あほらしくもありますが、会合後のブリーフが(実際の発言と)微妙にニュアンスが違うことがありますので仕方ありません」

「こんな原始的な手法は、記者だけがやっているかというと、霞ヶ関の官僚のみなさんも国会内でよくやっています。与党幹部の記者会見や議員同士の話し合いを、若手の官僚が通風孔に耳をあてて必死にメモをとる姿は日常風景です」

 また、6月27日付東京新聞記事によれば、質疑では発言者がマイクを使ったため、発言の多くは室外まで聞こえていたという。

 会合すべてを公開したわけではないが、聞かれているのはわかっていて、それについては暗黙の了解がある。ということは、議員たちは聞かれていても困らない、問題になるようなことはないという認識であのような発言をしたのだろう。現に、「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」「経団連だとかに働きかけしてほしい」などと発言した大西英男議員は後日、報道陣の取材に対し、会合での自身の発言について「問題があったとは思いません」と述べている。

 政治とメディアの関係や報道の自由などに関して、根本的な理解を欠いていると言わざるをえない。そのうえ、沖縄の普天間基地がどのように作られたのか、住民がなぜその周辺に住まざるを得なかったのかも知らないまま発言をしている。彼らは、インターネット上に転がっている出所不明の情報を安易に信じ込んでいるようだ。

 日本の政権与党の議員、それも首相に近い議員たちがかくも質が低いのかと知って、暗然とした気持ちでいる。まさに「政治の劣化、ここに極まれり」といった体である。こういう質の問題は、党幹部の「厳重注意」で改善するものではあるまい。

 安倍首相は陳謝する際、一連の発言を「大変遺憾で非常識な発言」としたうえで、「党本部で行われた勉強会だから、最終的には私に責任がある」と自らの責任を認めた。ならば、これで幕引きではなく、責任はきちんととってもらわなければならない。

●自民党はもっとまともな「勉強会」を

 何も、党総裁を辞めろとか、腹を切れなどといった物騒な話ではない。かくも質の低い議員たちを、党総裁の責任において、きちんと教育するために、もっとまともな「勉強会」を開いてもらいたいのだ。安倍首相自身も、「言論の自由」について誤解があるのではないかと思われる発言がこれまでにあったので、一緒に勉強していただけるとなおよい。

 とりわけ、言論・表現・報道の自由を含む憲法についての勉強は必須だろう。講師にふさわしい人材は、今回の「文化芸術懇話会」の面々が嫌う“左翼的”でない、むしろ自民党に協力してきた人たちの中にも、たくさんいる。

 例えば、佐藤幸治・京都大学名誉教授や長谷部恭男・早稲田大学教授。佐藤名誉教授は、先月行われた「立憲デモクラシーの会」主催のイベントで講演し、立憲主義を揺るがす改憲論に関しては「いつまで日本はそんなことをぐだぐだ言い続けるんですか」と厳しい批判をしたが、橋本龍太郎政権以来、行政・司法制度改革のブレーンとして自民党政権を支えてきた1人である。また、長谷部教授は衆院憲法審査会で集団的自衛権の行使を「違憲」と批判したが、特定秘密保護法の制定時には自民党の推薦で参考人として賛成意見を述べている。そういう2人から、日本国憲法の立憲主義的意味やその基本をじっくり聞くのは、とても有益だろう。

 情報メディア法の専門家としては、田島泰彦・上智大学教授はどうか。特定秘密保護法などについては批判的だが、産経新聞の前ソウル支局長が名誉毀損罪に問われた事件の裁判では同社が弁護側証人として申請し、ソウル中央地裁に認められた。産経新聞も、日本を代表するメディア法の研究者の1人と考えたからこそ、重要な裁判での証言を依頼したに違いない。やはり有益な話が聞けるだろう。

 さらに、政治とメディアの関係について、政治学の立場からも話を聞いたらどうか。政治家からじっくり話を聞き出すオーラルヒストリーの仕事などに取り組み、長らくたくさんの政治家を見てきた御厨貴・東京大学名誉教授などが適任だろう。

 マスメディアからは、渡辺恒雄・読売新聞主筆にお出まし願うのもいいかもしれない。今回の問題発言について同紙は、「報道機関を抑えつけるかのような、独善的な言動は看過できない」とする社説を掲載した。しかし、今回の安保関連法案など、安倍政権の政策の多くは支持しており、長く政治記者を務めてきた渡辺氏の助言は、安倍首相シンパの議員たちも、耳に逆らうことなく受け入れられるのではないか。

 ちなみに、同紙は安倍首相が戦後70年談話で「侵略」などの言葉を避けようとしている態度を懸念し、4月22日付社説で次のように書いている。

「談話が『侵略』に言及しないことは、その事実を消したがっているとの誤解を招かないか」

「政治は、自己満足の産物であってはならない。70年談話はもはや、首相ひとりのものではない。日本全体の立場を代表するものとして、国内外で受け止められている」

 学生時代に戦争で徴兵され、陸軍二等兵となった経験のある渡辺氏の歴史認識が、ここには反映されているに違いない。歴史に関しても、戦争体験者である渡辺氏の話を直接聞くことは、よい勉強になるだろう。

 さらに補講として、沖縄の歴史や沖縄の人々の民意について、翁長雄志知事の話をじっくり聞いてみるのもいいのではないか。翁長知事は、元々は自民党員で党沖縄県連幹事長まで務めた人だ。基本的な価値観は、自民党の議員たちとそれほど違わないだろう。その翁長氏がなぜ、かくも強く辺野古移転に反対するのか、よく聞いたうえで、政権与党としてどのように対応するかを議論してみるのも、大事な勉強ではないか。

 同レベルの仲間うちだけで盛り上がり、講演者である百田氏自身が「飲み屋の席でしゃべっているようなもん」と評するような集いで、議員たちはいったい何が「勉強」できるのか。もっと政治家としての質を高めるような勉強会を、安倍総裁の責任において開催してもらいたい。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)
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