…色々と考えるところはあったんですが、せっかくまとめたので今年中に書き残しておきます。
（ある意味、タイムリーにもなりましたが）
僕は、幼くから真言密流に縁があったことで自らの心の平穏を得て、「ドラえもん」を中心とした藤子・Ｆ・不二雄作品からＳＦに繋がることで科学的思考法を得ることができました。
これらは、それなりの波乱万丈はあっても、のたーりと日々を過ごすことができる糧となったと思います。
読書趣味でも、歴史や科学に親しみ珍説奇説やトンデモ説を正しく楽しめる素養になってます。
「見たいものだけ見て、信じたいものだけを信じるのが現代ネット社会」…なんだそうで（思想信条・言論の自由は、最大限に認められるべきではあります…それが誰かを傷つけなければ、というのが大前提ですが）、トンデモ説はインターネット上に溢れていて、時として正しい情報や検証情報の方が見つけにくいことは珍しくありません。
とはいえ、古くからトンデモ本を楽しんできた身としては今更、「ノストラダムスの大予言（五島勉）」を論拠に1999年の地球への危機やＭＪ１２文書でアメリカ政府とエイリアンの密約の実在を主張されたら、さてどんな態度をとればいいのやら…。
歴史修正主義もトンデモの一ジャンルで、最近では我が国の政権政党やその意を受けた大手新聞がやっている「歴史戦」とやらのお陰ですっかり有名ジャンルとなってしまいました。
ただし、それはそのトンデモ説が「正しいこと」として認識されたのではなく、より事態が深刻化してしまっているだけなのですが。
僕は、歴史的事実や科学的判断には、専門の学者や識者の関連書籍、ネット上でもリテラシーのはっきりしたものを根拠にするようにしています。
従軍慰安婦問題では、吉見義明氏が関わったものや、１０月末に講演に行った永井和氏がそれにあたります（下記の�，榔憤羯瓩裡硲个任后法�
� �日本の慰安所政策について
http://nagaikazu.la.coocan.jp/works/guniansyo.html
�◆Г呂討淵�ーワード：従軍慰安婦
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%BE%B7%B3%B0%D6%B0%C2%C9%D8?kid=25530
�，鉢△世韻能招外岼舵慳簑蠅砲弔い銅腓米睛討鰺�解できるのですが、さらに明確で具体的なものをば。
さて、ようやくお題にとりかかりますが、お題の「テキサス親父文書」（��…ただし、この名称を使っているのは僕くらいでしょう）は歴史修正主義の一つの従軍慰安婦否定論（「従軍慰安婦などは存在しない」から「慰安婦はいたけど、悪いのは民間で軍や政府は悪くない」までそれなりの幅があります）の「有力な証拠」としてよくとりあげられるものです（小林よしのりの「ゴーマニズム宣言」にも取り上げられていて、史実に基づいた批判もされています）。
��：米国国立公文書館よりテキサス親父へ送られて来た封筒と手紙
アメリカ戦時情報局 心理作戦班 アメリカ陸軍インド・ビルマ戦域軍所属 APO689
http://texas-daddy.com/comfortwomen.htm
概要
・「従軍慰安婦」ではなくて「追軍売春婦」
・高給を得ていて待遇もよかった
“テキサス親父”ことアメリカ人のトニー・ラマーノ氏が米国国立公文書館から取り寄せたとされる文書…なんですが、内容はトリミングと恣意的翻訳で文書内容及び事実とは異なることと、そもそも米国国立公文書館から取り寄せたかどうかも疑わしいことが判明しています（�きキΑ法�
それらの致命的な点以外でも、いくら高給で待遇がよくても、兵士の性処理の道具にされることの対価には成り得ないと思うのですが。
�ぁЭ翰�作戦班日本人捕虜尋問報告（Japanese Prisoner of War Interrogation Report）四九号
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130728/1375007977
概要
・「慰安婦」とは、将兵のために日本軍に所属している売春婦、つまり「従軍売春婦」にほかならない
・円支払いではなくてルピー軍票支払い（戦後には紙くずになった）
・未成年者や未経験者が多数いた
・慰安婦達は生活困難に陥った
こちらのブログ記事では、原文と逐語訳で構成されていて、��に載っていない原文の翻訳と��が曲解した内容の問題点も逐一指摘されています。
��と読み比べると、��が恣意的解釈をしていることがよくわかります（概要以外にも詳細な点に言及されています）。
�ァА屮謄�サス親父」が存在を確認した尋問調書は、たしかに重要だ……ただしそれは慰安所の非人道性の証拠としてであり、そもそも昔から知られていた資料だが
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20130724/1374624159
概要
・1992年の吉見義明編集『従軍慰安婦資料集』に収録されており、20年以上前から日本の歴史学において論じられていたもの
・満２１歳以下の女性を売春婦とすることは、「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」に違反
�ΑА屮謄�サス親父」という愛国詐欺師とソースロンダリング
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20130729/1375226214
概要
・��は20年前から研究者に知られていた『従軍慰安婦資料集』が元資料で、新たに米国国立公文書館から取り寄せた文書ではない
・2004年にはインターネット上に挙げられていたもので、詐欺に典型的なソースロンダリング
�イ鉢Δ脇韻舷佑離屮蹈圧�事で、�い諒簑�になります…これで��が歴史修正主義系トンデモ（「おニューの古着はトンデモにはよくあること」なのです…）という論拠は完成かと。
他の人の記事の引用だけでは自分の意見がない（歴史的事実なので、仕方がないのですが）ようになりそうなので、最後に僕個人の感想をば。
当時の法律（刑法226条及び娼妓取締規則）と批准していた国際条約（婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約）に違反する行為を、行政の一環である軍隊がやっていたという事実だけで、大日本帝国とその軍隊の責任を逃れることはできないとしか判断しようがないです…更に、終戦時に関連資料の多くを焼却処分しているのも弁護できる余地をなくしていますし。
国家総動員法の下では、「全国民が軍に従う義務がある」ということは言えるかもしれませんが、
それは日本軍が犯した犯罪を無くすことにはなりません（「受忍論」が通用するのはせいぜい国内限定ですし、それも「正しいこと」ではないでしょう）。
改めて従軍慰安婦制度の実態を詳しく見てみると、法律はあっても現実は蔑ろにされ、悪徳経営者は悪びれずに従業員を悪し様に言い、従業員は困窮する立場から逃れられない…従軍慰安婦制度の問題は、現代のブラック企業問題にも通じることだというのがよくわかります。
女性に限った話でもなく、男性へのタコ部屋的鉱山労働者も同様の構造で、当時の「ビジネスモデル」の一形態ではありました（もっとも、どちらも当時でも「よくないこと・望ましくないこと」とはされてはいましたが）。
７０年以上前のこととはいえ、新自由主義が生活に与える悪影響がより強くなり、歴史修正主義が跋扈する今の世相を鑑みても本質的にはそう遠くない世界なんですよね。
遠くない未来に、自分や知り合いが理不尽な目に曝された時に、「自己責任」「騙される方が悪い」「金を貰っているんだから黙れ」といったような暴言を言いたくも言われたくもない…だからこそ、僕は歴史修正主義が大嫌いなんです。
トンデモ説は楽しめますが、歴史修正主義は時として誰かを傷つける（そしてその刃は自分に返ってくる）ものですから。
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