12月9日
京都にお墓参りに行った後に大阪の娘のところに泊まった翌日、比良山系の最高峰武奈ヶ岳に行く。
10年前の春に比良山系を息子と1泊で縦走したときはあまり展望もよくなく、印象が薄かった。
今日はお天気が良さそうだ。初冬の今なら展望も期待できそうだ。
娘の家を5時前に出る。空は真っ黒でも街灯の多い大阪の街は明るい。ヘッデンなんてもちろんいらない。
新大阪から京都に出て湖西線と乗り継ぐ。琵琶湖の向こうの山から朝日が上がる。
だが、誰も見ようとはしない。私の目だけが釘付けになる。
比良駅に着く。ここは無人駅のようだ。
駅の前では二人の年配の男性が黄色い旗を振って通学生の安全を守っていた。
「武奈ヶ岳に行きたいんですが、イン谷口へはこの道を行けばいいんですか?」
私は町中では方向音痴だ。
「比良山に行くんかね。だったら送って行ってあげるよ。」
「えっ!?いいんですか?」
「ちょっとこの人を比良山の登山口まで送って行くから。10分ほどで戻るわ。」
もう一人の人にそう声をかけて私を車に乗せてくれた。
イン谷口までは車道を1時間歩くことになっていた。11月までの土日ならバスがあるようだが、今は通っていない。それを車で送ってもらえるなんてありがたい。
イン谷口のバス停の先で下ろしてくれた。
この先もしばらくは車道歩きのようだ。10分ほど歩くと車道が途切れた。地図とは違う。
おかしいと思って、ちょうど止まっていた関電の車から降りた男性に聞くと、イン谷口のバス停から少し戻った道を右に行かないといけないらしい。この道は釈迦ヶ岳に行く道だった。
イン谷口に戻る。20分のロスだったが、駅から歩くことを思えば楽だ。
関電の方は工事のために山に入るとのことだった。出会っていなかったら、車道で遭難するところだった。ありがたい。
気を取り直してイン谷口に向かう。地図では車道のようだったが、今は四駆の車でも通れないだろう。
大山口で青ガレへの道から分かれてダケ道の登山道に入る。青ガレの道は落石が多く、避けるようにと看板が立っていた。とは言え最近の記録でもここを通る人は多いようだ。
単独行で初めてなので安全なダケ道を選んだ。
登山道に入るとほっとする。
山の木はすっかり落葉していた。葉が落ちて明るくなった落ち葉の道を登っていく。
傾斜は緩やかで歩きやすい。
明るい開けた場所に出る。北比良峠だ。
昔はここまでロープウエイが通じていたらしい。
琵琶湖がよく見えた。
八雲ヶ原に着く。近畿では珍しい高層湿原だ。
10年前に息子と初めてのテント泊をした思い出の場所だ。
イブルキノコバを過ぎ、なだらかな道を登っていくと、武奈ヶ岳の山頂が近づいてきた。
笹原の道を登ると、武奈ヶ岳の山頂に着いた。
山頂からは真っな山が見えた。白山だ!
その右のほうにも遠く雪をかぶった山が見えた。
山頂にいた人とどこの山だろうねと話す。
よく知った人が「あれが御嶽山だ。」と教えてくれる。
琵琶湖の向こうに伊吹山が正面に見える。その左に御嶽山、右に中央アルプスが細長く見える。
御嶽山の左の山は乗鞍岳だろうか。
「以前来たとき、あべのハルカスが見えるって教えてもらったんです。」
そばにいた女性が言う。
よく見ると大阪方面に高い建物が見える。あれがあべのハルカスのようだ。
「あのあたりは台高山脈の高見山から三峰山だと思いますよ。あっちが鈴鹿山脈。」
目を転じれば白山の左のほうの海は日本海だ。若狭湾だ。
山頂には1本の木もなく笹原の武奈ヶ岳山頂からは360度の展望が望まれた。
写真を撮るが、自分のデジイチが修理中で借りてきたコンデジの使い方がイマイチわからず遠くの山はみんなピンボケになってしまって残念だった。
下りは反対側の坊村に下る計画だ。コースタイムでは2時間足らずだが何があるかわからない。
3時40分過ぎのバスを逃したらもう後がない。余裕を持って12時半に下ることにした。
山頂で話をした単独の年配の男性のKさん、女性のMさんと3人で一緒に下る。
このお二人は以前荒島岳で会って一緒に歩いたことがあるそうで偶然の再会に驚いていたのだ。
武奈ヶ岳の西南稜の道はとても気持ちのいい道だった。
Mさんは武奈ヶ岳にはいつもこの道の往復にすると言っていた。
武奈ヶ岳を振り返る。
武奈ヶ岳の山頂近くだけが笹原になっている。
登りは一人で黙々と歩いたが、3人だと話が弾む。いろいろな山の話に花が咲く。
あっという間に登山口に着いた。
車で来た二人と別れてバス停に向かう。バスまで1時間以上あった。
登山口にあった明王院と地主神社を見て時間をつぶす。
バス停に来た年配の女性と話す。明王院にお参りに来たそうだ。
バスと電車を乗り継いで娘の家に戻る。
今日はいろいろな人と話をした。これも単独行ならではの楽しみだ。
こんなに素晴らしいお天気で展望に恵まれる武奈ヶ岳は珍しいかもしれない。
お墓参りに行った母からのプレゼントかな。
暖かな汗ばむような山歩きにおしゃべり。
娘の家で2歳の孫と入ったお風呂の後の発泡酒がすっと喉を通り過ぎていった。
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