11月27日、この日は全国的に冷え込んで荒れた天気になったようだ。
近畿の山でも雪になりそうということで、翌28日にどこかの山に雪を見にいこうという話になった。
初雪の山だ。
大峰の八経ヶ岳も考えたが、標高の高い登山口の車道が凍結している可能性もある。
相方が稲村ヶ岳を提案してきた。
大峰の山の中でも稲村ヶ岳は行った回数が少ない。
雪が多くなると危険な山のようだが、1日くらいの雪では大したことないだろう。
天川村役場の駐車場で車中泊して28日に登ることにした。
11月28日
天川村役場の駐車場から洞川の母公堂の前の駐車場に向かう。車道に雪はない。
計画では6時に母公堂を出発することになっていたが、目覚めたのが遅くなったせいもあり、6時48分スタートになった。
清浄大橋で山上ヶ岳への道と分かれて林道を歩く。
林道の終点が登山口だ。
歩きだしてすぐに雪道になった。雪のついた谷筋の道は、登山道がわかりにくい。
途中で迷いかけたが、少し戻るとテープが見つかった。それからもテープを見落とさないように進む。
この道は最初に稲村ヶ岳に小学生の息子と登った時に、上で会った人から聞いて下山に使った。
滑りやすく、運動靴の息子は「もう二度とこの道は通りたくない。」と言った。
その後、一人で登りに使った。登りならいいが、下りには使いたくない道だ。まして雪があるときは危険だ。
今日この道を歩くのは私たちが初めてだ。動物の足跡は所々にあるが、人間の足跡はない。
ノートレースの初雪の道を歩くのは気持ちがいい。
レンゲ辻に出る。ここには女人結界門がある。
この結界門の先には女人禁制の山上ヶ岳がある。
ここで防寒対策をしっかりとした。
ここからの道はほとんどがトラバースだ。
ロープが張ってある場所に出た。道はほとんどない。一ヶ所凍っているところがある。
まず相方がステップを切って進む。
その後をロープにつかまって通過した。
ほっとする。ロープがなかったらかなり危険だった。だからと言ってここで戻る気にもなれない。
その後も慎重にトラバース道を進む。緊張する。
多い所は20センチ近く積雪がある。吹き溜まりなのだろう。
「誰も通っていない雪道を歩くのは気持ちがいいけど、ちょっと怖いねえ。」
「思ったより雪が多いし、大日のトラバースはどうだろうね。無理なら山頂まで行かなくてもいいね。」
しばらく進むと前から単独の男性が来た。法力峠からの道を登って稲村ヶ岳に登って、これから山上ヶ岳に登るそうだ。アイゼンを付けている。
「アイゼンは必要ですか?」
「いや、小屋で付けたんですが、いらないですよ。」
「大日のトラバースはどうでしたか?」
「全く問題ないですよ。大きなつららがあるだけです。」
我々もレンゲ辻からの道の情報を伝える。
人と会って話したことで緊張が緩んだ。登山道の様子もわかった。山頂まで行けそうだ。
「やっぱりトレースがあると安心だね。」
稲村小屋に着いた。
小屋の周りには数人の人がいた。皆法力峠のほうから登ってきたのだろう。
小屋も外のトイレも閉まっていたが、小屋の裏のトイレは使えた。ありがたい。
入り口のそばの休憩所は雨風がしのげる。ここでお昼にする。
持ってきたお湯を温め直してカップ麺を食べる。
寒暖計は氷点下3度を示していた。
一息入れたところで山頂に向かう。
大日のトラバースは問題なく、大きなつららが何本も下がっていた。
段々と樹氷が大きくなって行く。
だが、晴れそうにはない。
予報では晴れるはずだったのに・・・
稲村ヶ岳の山頂に着く。
展望台に登るが何も見えない。
小屋に戻る道、真っ白な世界が広がる。
青空と樹氷の組み合わせは素晴らしいが、真っ白なモノトーンの世界も悪くない。
小屋からは法力峠への道を下る。この道もほとんどがトラバースの道だ。
時々出てくる橋の上が滑りやすい。一度滑りそうになったので、橋が出てくるたびに慎重になる。
母公堂に着く。
朝は閉まっていたお堂が空いている。
「疲れたでしょう。どうぞ休んでください。」と言われる。
コーヒーとお菓子でお接待してくださる。温かいコーヒーが染みて行く。
駐車場料金500円は高くない。
洞川温泉に行くと、パイプラインが故障しているので水道水を使っているという張り紙があった。やはり温泉に入りたい。
少し先の天の川温泉に入る。体が温まり、疲れが抜けていくようだ。
酷道168号線に出て帰路に着く。
しかし、この道は本当に酷道だ。すれ違いができない所が何か所もある。そのたびに停まる。
大型がすれ違うと怖い。
登山よりも疲れた。
大峰の山の中で稲村ヶ岳に足が向かない理由の一つはこの酷道なのだ。
うちから洞川までは4時間足らずだが、道が悪いのでもっと遠く感じられる。
だが、何か所かでトンネル工事をしていた。
酷道が国道になったら、また登りに来たい。
雪の稲村ヶ岳、もっと雪が降り積もったら、私たちの技量では登れない。
雪の稲村ヶ岳に登るのはこれが最初で最後かも知れない。
美しい初雪のノートレースの道を歩けた。
稲村ヶ岳と相方に感謝!!
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