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2015年11月28日23:45

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「1001グラム ハカリしれない愛のこと」

「1001グラム ハカリしれない愛のこと」 ’14 (ノルウェー・独・仏)


監督・脚本:ベント・ハーメル
m:ロラン・ストッケル
f :アーネ・ダール・トルプ


『キッチン・ストーリー』『ホルテンさんのはじめての冒険』の
ベント・ハーメルの新作。
「国際キログラム原器」なんて言葉も実物も全く知らなかったが、
それがパリの「国際度量衡局」に厳重に保管されていて
40個の複製が世界各国にあって
定期校正のために「国際キログラム原器」と比較される―というのが
モチーフになった物語なのだ。
いったいどんな難しいお話かと思うけれども、
「ノルウェー国立計量研究所」に親子2代で勤務するヒロインが
病に倒れた父に代わって「ノルウェーキログラム原器」を携えてパリに赴く…
というお話で、
あのいつもの美しき構図の中で 今回は“青色”が実に印象的な画作りになっていて
愛らしい電気自動車やキログラム原器の円筒形の容器の形状が
ものものしい国際度量衡局でのセミナーを軽やかに彩って、
きっちり計るわけには行かない人生のギクシャクに
ため息をついていたヒロインが
きっちり計れないからこそ豊かで面白い
人生の妙味に気付いて行く…そういう気持ちのいい作品になっている。
この人の作品はそこはかとなく(・・・・・・・)可笑しいのが可笑しい。
そこはかとなくが画作りに拠っていたりするのが上等。
面白さや感動が言葉(台詞)に拠らないのがお見事。
映画だから醸し得る可笑し味と情感が
ベント・ハーメルを読む愉しみなのだ。
亡くなった父の遺灰は計量機の上で1021グラムからスルスルと減って
1001グラムで止るけれど、
ヒロイン マリエはその1グラムに微笑む。
人生の妙味はキログラム原器の正確無比にではなく
およそ1グラムの曖昧さにあるのだから…。
作品中に“メートル原器は失われた”という場面があるが、
実際にはキログラムも再定義により原器は失われる予定らしい。
3重のガラスに守られた原器の何とも言えない愛らしさがなくなるのは
ちょっと寂しい気もするけれども、
映画は嬉しい佳作である。
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