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2015年11月18日11:19

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「アクトレス〜女たちの舞台〜」

「アクトレス 〜女たちの舞台〜」 ’14 (仏・スイス・独)


監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス 撮影:ヨリック・ル・ソー
f :ジュリエット・ビノシュ,クリステン・スチュワート,クロエ・グレース・モレッツ


ベテラン女優マリアは若き日の彼女を見出した劇作家・演出家ヴィルヘルムの死と
気鋭の若い演出家による「マローヤの蛇」再演への出演依頼を
ほぼ同時に受け取る。
「マローヤの蛇」はマリアの華々しいキャリアの始まりの作品で、
若い娘シグリットに中年女性経営者ヘレナが翻弄された挙句
自死に追い込まれる―というお話で、
かつてシグリットを演じたマリアは今回ヘレナを演じることになるのだが
このことは彼女を激しく動揺させることになる…。
40代の大女優マリア,
そのアシスタントで20代のヴァレンティン(ヴァル),
ハリウッドで人気のスキャンダラスな女優20代のジョアン―
の3人がここには置かれているのだが、アサイヤスはこの3人と
「マローヤの蛇」の登場人物シグリットとヘレナを巧みに交錯させ、
マリア=シグリット(かつて10代で演じた)
マリア=ヘレナ
ヴァル=シグリット(マリアの読み合わせの相手役として)
ヴァル=ジョアン(現在を生きる20代女性同士)
ジョアン=シグリット
ジョアン=マリア(若き日にシグリット演じた女優同士)…と
キャラクターが幾層にも重なって読解を複雑にし、
若さと老いが女優という特殊の上に降りるという仕様は
演じるビノシュ,スチュワート,モレッツの3女優をも
映画に取り込んでいるのだ。
おそろしくアタマのいい脚本に驚く!
舞台は“マローヤの蛇”なる気象現象が起きるスイスの山間。
イタリア側からスイス側へ 山峡を白い雲が蛇のように流れる―
その稀少な気象現象が劇中映画とクライマックスに登場して
時と悠久と普遍がマリアを包み込みそして行き過ぎるのを
観客は 女優を演じる女優たちのドラマとして受け取ることになるのだ。
かつてのマリアも現在のジョアンもヴァルも
若さの残酷と無垢を若い女の普遍として獲得して
半ば意識的に使用したり利用したりしていたのだから、
誰もがシグリットであり得たのだ。
40代の社会的成功者ヘレナの身体と内奥は生々しくマリアを苛み
加齢が女にもたらすものに
ヘレナと同様にマリアは慄く。
この動揺はマリアとヘレナしか共有できない。
そうしてヘレナは自死を選ぶのだから
生き残るマリアはその死をも呑み込まねばならない。
ヴィルヘルムの死に慄いたマリアは自らの内にある死もそこに至る老いも
マローヤの雲と同じ
自然の理、時の摂理 だと納得したのだろうか…
そう思わせる「マローヤの蛇」公演初日の舞台のマリアのアップで
映画は終わるのだが…。
心地よい文学的理性に酔うことができる作品である。
佳作。
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