あのグレートトラバースの田中陽希さんが二百名山の釈迦ヶ岳に登ると知ったときから、釈迦ヶ岳で陽希さんに会いたいと思った。
釈迦ヶ岳は大好きな山で私が一番数多く登っている山だ。
多くの人は楽な十津川村の登山口から登る。ここは標高が1300mなので500m登れば山頂に着く。コースタイムは2時間ほどだ。
だが、私は昔からの歴史のある前鬼からの道が好きで、大概はここから登っている。
車止めの標高は600mだから、1200mの登りになる。
前日までの情報では5日に釈迦ヶ岳に登る予定になっていた。お天気はいいし、特別な用事はない。これは是非とも行かなくちゃ!!
陽希さんは前日は川上村に泊まって下北山村の前鬼から登るようだ。着くのはお昼過ぎになるかもしれないが、私は朝早くから登りたかった。
前日下北山村で車中泊する。ワクワクしながら眠りについた。
11月5日
駐車場を6時前に出発する。空が明るくなり始めた。
宿坊の小仲坊に着くと、車が止まっている。普通はここまでは入れないが、住職の五鬼助さんはいつもここまで車で入る。
大阪から土日に通っている五鬼助さんは木曜の今日はいないと思っていたので、うれしくなった。
「おはようございます。」
宿坊に声をかけると、五鬼助さんが戸を開けた。今は宿坊の修理をしているので、来たそうだ。
陽希さんのことを話すと、知らなかった。
「でも、釈迦ヶ岳に登るのなら前鬼からでないとダメだね。」と話される。
そう、ここからの道が元々の釈迦ヶ岳への修行の道なのだ。
太古の辻へと続く道は紅葉がきれいだった。朝日を浴びて輝いている。
階段が出てくる。いつものようにその一段目で休む。
二つ岩に出る。ここもいつもの休憩ポイントだ。
太古の辻に出る。ここからが奥駈道だ。
大好きな場所なのでゆっくりする。
陽希さんが山頂に着くのは午後になるだろう。ゆっくり行こう。
釈迦ヶ岳には10時45分に着いた。
山頂には10人以上の人がいた。皆陽希さんを待っているようだ。
真っ青な空の下にお釈迦様が立っておられる。
それだけでうれしい。
スマホで検索していた人が「まだ大迫ダムにいるようだ。」と言った。
地図で見ると、まだまだ遠い。お昼までに着くのは無理だろう。
どうしようか迷ったが、12時まで待つことにした。登りで4時間かかった。下りも休憩を入れれば3時間以上かかる。前鬼の道は谷筋なので暗くなるのは早い。あまり遅くなるのはいやだった。
前鬼から登ってくるのだから、下山中に会えるだろう。
他の登山者とおしゃべりしながら待つ。
それにしても今日はいいお天気だ。
周りの山々はもちろん、遠く淡路島や四国まで見えた。
12時になったが、陽希さんは登って来なかった。
下山することにした。
途中の深仙の宿、太古の辻、二つ岩とポイントごとに待ってみるが登ってこない。
もしかしたら今日は登らないのかも知れない。
そう思い始めたとき、下のほうにカメラと三脚を持った人が2人見えた。
「陽希さんのスタッフのかたですか?」と聞くとカメラマンだそうだ。
「陽希はかなりロードがこたえたみたいで今日は登らないことにしました。多分上北山村で泊まると思います。我々は陽希と別れて、先に写真だけ撮りに来たんです。明日はゆっくり撮る時間がないだろうから。」と言った。
残念だが仕方ない。あきらめて下る。
小仲坊には大工さんらしい人が2人いて作業中だった。
五鬼助さんに挨拶する。
「今日は登らないそうです。」
五鬼助さんは、今日は一旦大阪の家に帰って、明日また朝来ると言われた。
「その田中さんという人は明日登るんですか?」
「そうみたいです。今日は下の民宿に泊まるようですよ。」
また少しお話ししてから駐車場に向かった。
陽希さんに会えなかったのは残念だが、おかげで素晴らしい紅葉と青空の釈迦ヶ岳に登れて、いつもは土日にしか会えない五鬼助さんともお話できた。それだけで充分満足していた。
林道の途中で気を付けていたつもりだったが、落石を踏んでしまった。
国道に出るころにタイヤの異変に気づいた。パンクだ!!
携帯が繋がったのでロードサービスを頼む。しばらくして下北山村のロードサービスの車が着く。
タイヤを取り替えてもらいながら話をすると、その人は私が住む勝浦の出身の人だった。
私が熊野市から169号線で来たと言ったら、新しくできた道を教えてくれた。
帰りはその道を通ることにした。
無事に帰宅した。
陽希さんに会えなかったけれど、素晴らしいお天気の釈迦ヶ岳に登ることができた。
楽しい出会いもいっぱいあった。
陽希さんに感謝!!!
翌日無事に釈迦ヶ岳に登られたそうです。良かったですね!!!
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