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2015年10月08日15:47

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被ばく線量の求め方

未だに、外部被ばくでの被ばく線量(Sv) と内部被ばくでの被ばく線量(Sv)がリスクとして同じであると言うことを理解できていない人が多いようですね・・・

外部被ばくであろうと、内部被ばくであろうと、
「実効線量」(Sv シーベルト) に換算された時点で、同じ物差しで比較できるのです。

というか、同じ物差しで比較できる様に、評価しているのです。

もちろん、各臓器が受けた影響から死亡するに至までのリスクというのはそう簡単に評価できる物ではなく、現在も保健物理学会などで評価が続けられています。
そこでは多くの研究者が、より真実の値に近付くために努力しています。
絶対ではないが、非常に細かい部分を除けばそれほど大きな違いはないであろうと
多くの専門家が思える形で評価されているわけです。

ここまでで納得できる方は、ここまでの話だけ覚えて頂ければオッケーです。
シーベルトは、人体に与えるリスクを評価する物差しである、と。


〜〜〜〜〜〜


はい、ここで、政府の都合の良い様に操作しているんだろう、と言うそこのあなた。

ここから話は長くなりますが、放射線に対するリスクをどうやって評価するのかを
知っていないと、批判も納得も出来ないだろうと思いますので頑張って読んでみて下さい。

Sv の求め方は ICRP などの国際組織で世界中のデータを元に組織加重係数などを決定し、
各国にその値を用いる様に勧告を行っています。
(直接その国の法律を変える様に命令は出来ないですからね)

現状で日本は ICRP1990 勧告を元に国内法が定められていますが、
最新の ICRP2007 勧告に更新するために法整備を行っている状態です。
# ちょっと、時間がかかりすぎな気もしますが、震災の影響で
# かなり原子力関係が混乱していますしね・・・

で、実効線量はどうやって求めているかというと、

実効線量(Sv) = 組織加重係数 × 放射線加重係数 × 吸収線量(Gy)

と言う計算を行っています。
組織加重係数はそれぞれの臓器の影響の受けやすさを相対評価した物で、
全身に被曝した場合組織加重係数は 1 です。
一部分だけ被曝した場合には、その組織に対応する組織加重係数をかけます。
もちろん1より小さく、全身の組織加重係数を足し合わせると1になるように定められています。

放射線加重係数はγ線、X線、β線は 1 で、α線は 20 となっています。
局所的にエネルギーを放出するα線は危ない、というわけです。
空気中 5〜6 cm程度で止まりますので外部被ばくでは考える必要が無く
(表皮角質は死んだ細胞なので影響を受けません)
内部被ばくだけ考えることになります。

で、吸収線量(Gy)ですが、これは放射線によって単位質量あたりの
物質に吸収されたエネルギー(J/kg)です。
物理量で話がシンプルな様に思えますが、これがまた複雑です。

放射線のエネルギー(eV エレクトロンボルトで表わされる)が高い場合
(γ線の場合は、波長が短い、と言い換えても良い)、
素通りしてしまって物質に余りエネルギーを与えず、
次第にエネルギーを落としていくと吸収されやすくなるという性質があります。

重粒子線治療などではこれが顕著で、ブラッグピークという、
体の中のある深さに達したところで一気にエネルギーを放出することを
体内深部のガン治療に利用しています。


放射線にはこういった性質があるため、元々のエネルギーによっても影響は違うし、
体の中でどの程度進んだかによっても影響が違う、
と言うことはどの方向からやってきた放射線かで影響も違う、
ということになります。

このあたりは、ICRP で様々なモデルを作り、人体への影響を最も良く模擬できる様に
様々な検証が行われています。
その検証の結果が、我々が一般に空間線量と言っている、測定器で測る周辺線量当量(Sv)です。
これは、ICRU 球という、体組織を模擬したアクリルで出来た半径15cmの球体の深さ1cmでの点の等価線量(γ線の場合は = 吸収線量)に相当するように校正されています。
物理的な測定器で、人体への影響を評価できる様にしているわけです。

なお、吸収線量の単位は Gy = J/kg であり、密度などの差は考えなくても良く、物質が変化してもそれほど大きくは変わらない事が知られています。


〜〜〜


さて。
ここまで、外部被ばくか内部被ばくかは区別していませんでしたね。
どこから放射されたかにかかわらず、人体がどれだけ放射線を浴びたかが問題だからです。

外部被ばくと内部被ばくの違いは、放射性物質 = 放射能がどこにあるかです。
内部被ばくが怖い、言われるのは、

・α線、低エネルギーβ線の影響を受ける
・長期間同じ臓器が放射線に曝され続ける

によるもので、前者は内部被ばく特有の物です。
が、後者は外部から照射を受け続けるのと違いはありません。

外部被ばくは今だけだけど、内部被ばくは体内にずっと残って照射を受け続けるから・・・
というのは、そもそも放射線と放射能を混同していることに起因します。
違う物を比較しているので、意味がないのです。
同じ期間、同じ量を照射されれば影響は同じです。

で、内部被ばくはどのように評価されるのでしょうか。

実は、摂取した放射性物質の量(Bq)から、将来にわたって受け続ける影響というのを
評価する方法があります。

それが、預託線量という考え方と、実効線量係数という物です。

預託線量は、摂取したときから以後50年間に被ばくするであろう量を全部
積算した量で、これを、摂取した年に全部被ばくしたことにする、
と言う管理上の考え方です。

現実的には、線量率効果という物があり、いっぺんに被ばくするよりも少しずつ被ばくした方が、
修復する時間がある分影響は少なくなりますが、それも無視して厳しく評価しているわけです。

次に、摂取した放射能(Bq) を実効線量(Sv)に換算する考え方です。

放射性物質は、同じ Bq の放射能でも核種によって放出する放射線の量もエネルギーも種類も違います。
これをまず吸収線量に換算してやる必要があります。
これはたとえば Cs-137 なら 662keV のγ線を 85.1% の確率で、
514keV のβ線を 94.4% の確率で放出する、と言う様に分かっていますので、
それほど難しい話ではありません。
(非常に細かい話をすると662keVのγ線を出すのはCs-137 ではなく
その娘核種の Ba-137m ですけどね)

次に、半減期について考慮します。
物理的半減期によってすぐに消えてしまう核種もあればずっと残っている核種もあります。
Cs-137 の半減期30年と言っているのがこれです。
これは煮ようが焼こうが変わりません。
(中性子当てたりして核反応させずに変えられたら大発見です)

さらに、代謝によって排泄されていく、生物学的半減期もあります。
これは、元素によって、また化学形態によっても変わってきます。
ばけがく的にどういう振る舞いをするかが関係してくるわけです。
トリチウムはすぐに排泄されるがストロンチウムは骨に、セシウムは筋肉に蓄積しやすく排泄されにくい、というのはここに効いてきます。
なお、放射性のセシウム137も、放射性でないセシウム133も化学的挙動は同じです。
# トリチウムだけは、重さが違いすぎるので挙動が若干異なります

さらに、特定の臓器への集積も考慮されており、それぞれの臓器毎の影響を集積して
ある核種を摂取した場合の実効線量が評価されます。

もちろん、それぞれのファクターの評価は完全ではなく、
新しいデータが得られる毎修正されていくと思われますが、
世界中の研究者がお互いに検証し合いながら真実に近付いていると言うことだけは忘れないで下さい。

放射線を使っているのは原子力発電の関係者だけではないのです。
医療関係者も、トレーサー実験を行っている生物関係者も、非破壊検査を行っている技術者も、
工業製品の加工を行う工場の人も、みんなみんな関係してくる話です。
実はこういった発電以外の放射線関係の医療、工業、農業分野での
放射線利用だけで巨大な経済規模(H19年度で4兆円産業)を持っており、
発電による経済規模を超えています。
(アメリカでは食品照射などもあるためさらに巨大で、発電の4倍程度の規模になっています)
こういう人たちは、キチンと危険性を評価してもらわないと困る人たちです。
日本一国の原子力ムラの力だけで左右できるわけではないことを知っておいて下さい。



■内部被曝「知っている」45% 放射能への理解度が低下
(朝日新聞デジタル - 10月08日 00:13)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=3653082
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