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2015年10月01日22:49

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本 泣いたらアカンで通天閣  坂井希久子

泣いたらアカンで通天閣  坂井希久子

関西出身(和歌山)、元SM嬢という変わった経歴ということで
ちょっと気になっていた作家さんです。
”ヒーローインタビュー”とか最近出た”ウィメンズマラソン”も評判良く、
文庫化された今作も北上次郎氏が解説で熱く褒めているので読んでみることに。

大阪新世界、通天閣の北側(昨今の繁栄しているあたりとは逆方向)の商店街にある
ラーメン屋味よし(みよし)、放蕩親父のゲンコが作る不味いラーメンで
閑古鳥が鳴く店を、OLをしながら手伝うしっかりものの一人娘のセンコ。
いつもボケとツッコミでけんかばかりしている親子だが、美人の嫁を早くに
亡くし男手ひとつで育ててくれたことに、センコは陰ながら感謝している。
ボケ始めているおばあちゃん、東京の銀行を辞めて帰ってきた幼馴染のカメヤ、
育児放棄された近所の子供スルメ、よくも悪くも干渉しすぎの商店街の面々、
そして会社の上司と不倫しているセンコ。
下町商店街に息づく、鬱陶しいけどあったかい、とびっきりの浪速の人情物語。

もう、設定や登場人物、会話がほとんど吉本新喜劇かじゃりん子チエ!
なので関西人で小さい頃からそれらに慣れしたんだものとしては、
面白くないわけがない。 
親子ゲンカを中心に、カメヤが帰ってきた理由、センコの不倫問題、
亡き母のラーメンの味の復活、
スルメをほっとけず実の母と対立してまで面倒をみようとするゲンコ、
センコの出生の秘密、カメヤとセンコの恋の行方。
そんな感じで、物語の展開自体に特に突飛なところはないけども
愛すべき関西の小市民キャラと、そのボケとツッコミのやりとりを
劇やマンガではなく、ちゃんと文章で面白おかしくいきいきと
表現できているのはさすがでございました。
かといってベタ過ぎないのもよろしい。
タイトルの語感もよい!

センコが落ち込んだ時に登る通天閣、
阿倍野ハルカスでも梅田の空中回廊でもない、
ましてや東京タワーでもスカイツリーでもない、
そのいなたさの味わいがまさにこのお話、そして登場人物のよさを
象徴してるような気がします。

通天閣界隈小説といえば、西加奈子の”通天閣”、宮本輝”夢見通り人々”を思い出しますが、
この話が一番カラっとしてるかも。これは作家のサービス精神のなせる技?
ちなみに映画では坂本順治”ビリケン” 山本政志”てなもんやコネクション”なんかを
思い出します。(”夢見通りの人々”も)

テレビか映画化されてもおかしくないと思ってたら、
大阪ローカルで2年前にされてたみたいです。
大杉漣(徳島出身)と木南晴夏(豊中出身)主演、う〜んどうやったんでしょうかねえ。
地元やけど演技が一本調子の赤井英和と関西出身でないタレントがするよりはましかな。
新喜劇でやるんやったら岡八郎と中西貴美恵かな。どちらも、もういないけど。
今やったら老け役させた小藪と宇都宮まき。
映画・ドラマなら國村隼と谷村美月、あるいは今話題の吹石嬢。

大阪離れて21年になりますが、やはり大阪の話には惹かれます。
前から好きな西加奈子、先日読んだ津村記久子、そして新しく坂井希久子(Wきくこ!)
この浪速三人娘それぞれの書く大阪の鬱陶しいけどあったかい庶民話、
これからも期待したいです。

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