私は被災者のようだ。学校のようなところに大勢集まって避難していた。
取り敢えず水と食料のパックはあるのだが、避難所も浸水してきて腰まで水が来ている。だから机の上に座っていた。
ずぶ濡れである。寒い時期でもないからそれでもいいのだが、困るのはトイレだ。
その場でしても同じような気もするがみんな腰まで水に浸かって、わざわざトイレだった場所へ移動してそこで済ませている。それが最低のモラル、この場での人間の証明であるかのような雰囲気が周囲を支配している。
私はそういう形だけととのえるようなことは気に入らず、ずっと小用を我慢し続けであったが、どうしてもガマンできず、しょうがないからトイレまで出向くことにした。
トイレの部屋は床が低くなっているので肩まで水に浸かってしまった。
ものすごく馬鹿らしい気もするが、数人の先客がしているように、ズボンのチャックを開けて男子用小便器に向かって放尿した。
すると驚くことには、その反作用で身体全体が後部上方にふわりと浮かびあがったのだ。
それどころか、ゆっくりとどこまでも上昇していく。建物の屋根も抜けてしまう。そこは空ではなくて薄ボンヤリとした灰色の空間だった。しかしまったく恐くはない。安らかな気持ちだった。
これはものの本で何度か読んだ幽体離脱というものではないかと思った。
そこで、ああ、自分は実は、避難所で死んでいたのだったと理解した。
人生の最後なら、やり残しの仕事とか女のこととかを後悔するべきだろうと思うのだが、そういうのは何も浮かんでこない。
小便をしたいというのが最後の願いになってしまったわけだなあ、ああ、くだらないなあ、まあどうでもいいか。
ここで目が覚めた。なんかリアルな夢だった。ああ死んでなかったと安心した。また最後が気持ちよかったのでまさか寝小便などしてないだろうなと確認した。
大丈夫でしたが。
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