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作家的覚書 「自らに問う」高村薫
ちょうどこの小説を書いていたときに、安保関連法案があっさりと衆院を通過していった。この数カ月、いつか集団的自衛権の行使が現実になる日を想像しながら鬱々としてきた。当面は国政選挙がないなかで国民には政権の暴走を止める手段はなかったのだが、内閣支持率がもう少し低ければ―と悔やまれる。採決前、メディアによって不支持率が初めて支持率を上回る結果が出ていたが、それでも四割前後の支持があったことが、内閣に採決を強行させる力となった。支持率がせめて二割台まで下がらなければ、三百議席を有する与党を抑止することはやはり難しいということである。
来るところまで来たいま、こんな一物書きでも自分の無力さに臍をかみながら、これまでにもまして自問に自問を重ねている。世論調査で八割の人が法案について説明不足と答えていながら、かくも重大な法案についてまともに説明ができないような政権に、私たちはなぜ四割者指示を与え続けているのか、と。これは私たち国民の側の大いなる矛盾であり、不作為であり、認識の怠慢というものである。
憲法違反が明らかな法案を強引に成立させるような政権を、私たちはなぜ断罪しないのか。ほんの一部の話ではあるが経済が比較的好調だから?けれども、ひとたび本格的な海外派兵になると、膨大な戦費調達のために膨大な国債を発行することとなり、赤字国債がさらに積み上がって日本経済をますます圧迫することになるのは必至である。
では、東シナ海などへの中国の侵攻が心配だから?けれども、仮に尖閣諸島で不測の事態が起これば、まずは日本が単独で対応しなければならない。それが日米ガイドラインの規定であり、米軍の出動は米議会がそのつど可否を決めることでしかない。すなわち、尖閣有事の際の米軍出動への根拠のない期待に基づいた日本の集団的自衛権行使は、日本の勇み足でしかない。しかも、一度も実戦を経験したことのない自衛隊に直ちに戦闘行為ができるというのも幻想にすぎない。いくら装備を整えても、海外ら出ていった自衛隊は、現状のままでは戦死者の山を築くことになる可能性がある。そこまで考えた上で、私たちは集団的自衛権を望んでいるのか。
何よりも、ほんとうに国外情勢が変化して現行憲法では間に合わなくなったというのなら、まず憲法を改正しなければならない。それをしない現政権の不作為を黙認した上で、私たちは支持をしているのか。大人から学生まで、本の数秒手を止めて、自分に尋ねてみてほしい。
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上記は、岩波書店刊行月刊誌『図書 2015年9月号』に掲載されている、作家・高村薫さんの�犧邁氾�覚書�瓩箸いΕ灰薀爐痢崋�らに問う」の全文である。
このコラムのなかで高村薫さんは一貫して安倍内閣の支持率の高さに悔しさを感じられている。
「採決前、メディアによって不支持率が初めて支持率を上回る結果が出ていたが、それでも四割前後の支持があったことが、内閣に採決を強行させる力となった。支持率がせめて二割台まで下がらなければ、三百議席を有する与党を抑止することはやはり難しいということである。」
と、高村薫さんは嘆かれている。そしてその悔しさの原因がわたしたち国民の側にあることを痛恨を思いを込めて次のように語られている。
「来るところまで来たいま、こんな一物書きでも自分の無力さに臍をかみながら、これまでにもまして自問に自問を重ねている。世論調査で八割の人が法案について説明不足と答えていながら、かくも重大な法案についてまともに説明ができないような政権に、私たちはなぜ四割者指示を与え続けているのか、と。これは私たち国民の側の大いなる矛盾であり、不作為であり、認識の怠慢というものである。」
では、高村薫さんが語られる、�犹笋燭噌駝韻梁Δ梁腓い覆詭圭發任△蝓�不作為であり、認識の怠慢というもの�瓩箸浪燭世蹐Δ�。そのことを高村薫さんは次のように述べられている。
「ほんの一部の話ではあるが経済が比較的好調だから?けれども、ひとたび本格的な海外派兵になると、膨大な戦費調達のために膨大な国債を発行することとなり、赤字国債がさらに積み上がって日本経済をますます圧迫することになるのは必至である。/ では、東シナ海などへの中国の侵攻が心配だから?けれども、仮に尖閣諸島で不測の事態が起これば、まずは日本が単独で対応しなければならない。それが日米ガイドラインの規定であり、米軍の出動は米議会がそのつど可否を決めることでしかない。すなわち、尖閣有事の際の米軍出動への根拠のない期待に基づいた日本の集団的自衛権行使は、日本の勇み足でしかない。しかも、一度も実戦を経験したことのない自衛隊に直ちに戦闘行為ができるというのも幻想にすぎない。いくら装備を整えても、海外ら出ていった自衛隊は、現状のままでは戦死者の山を築くことになる可能性がある。そこまで考えた上で、私たちは集団的自衛権を望んでいるのか。」
そして高村薫さんは、
「憲法違反が明らかな法案を強引に成立させるような政権を、私たちはなぜ断罪しないのか。」
と、その悔しさを露わにされているのだ。そして最後に高村薫さんは読者であるわたしたちに次のように問いかけながら、このコラムを閉じられる。
「何よりも、ほんとうに国外情勢が変化して現行憲法では間に合わなくなったというのなら、まず憲法を改正しなければならない。それをしない現政権の不作為を黙認した上で、私たちは支持をしているのか。大人から学生まで、本の数秒手を止めて、自分に尋ねてみてほしい。」
わたしたちは何故安倍内閣を支持しているのだろうか。自分たちの出した法案が多くの憲法学者や最高裁元判事、内閣法制局元長官たちが�牋齋�法案�瓩世噺世錣譟△靴�も自分たちが出した法案にもかかわらず、国会審議のなかでまともに答弁もできない。そんな内閣を何故四割近くの支持率があるのか。そのことが今一番の大きな問題であるように思えてならない。
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