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2015年08月26日11:08

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新幹線車内を"広く"感じさせる「錯覚」の力>は>決して、デザインだけで今の快適な車内空間がつくられたわけではない

新幹線車内を"広く"感じさせる「錯覚」の力 デザインに隠されたこれだけの秘密



東洋経済オンライン 金丸 信丈

2 時間前

   【略】

東海道新幹線300系車両をはじめ、700系やN700系、N700Aなど多くの新幹線車両のデザインに参加してきた福田哲夫氏は、こう語る。

 「ある空間の幅や高さといった物理的な距離は、測れば数値が出ます。その数値以上に、“広く”したり、“高く”したり、一方で“狭く”も“低く”もできるのがデザインの力です。空間の物理的距離以上に“広く”感じ、快適に過ごしてもらえるようにするのが、デザインの大きな仕事のひとつともいえるでしょう」

 福田氏らデザインチームは、車内空間のデザインにおいて、カタチ、色のしつらいはもとより、素材の選定などにも深くかかわっている。

 「単にそこにあるカタチだけでなく、光を受けたときのカタチや色、質感、そうしたものを、デザインはコントロールできます。そうしたなかで乗客にとって開放的で、またある時には落ち着ける快適な空間の最適解を探していきます」

 身近な例でいえば、濃い色のカバンより薄い色のカバンのほうが軽く感じる。持つ人から見て上部が薄ければ、底に行くにしたがって厚くても、全体としてボリュームを感じず、結果、実際の重量より重さを感じない。新幹線の室内においても、そういった錯覚を生かした手法が使われている。

 そのひとつが室内の壁だ。天井両端の丸みは認識している人も多いだろうが、実は、床と壁面は直角に交わらず、この部分のカーペットを斜めに立ち上げることによって丸みを帯びたつくりとなっている。丸みを帯びることで、その曲面からの立ち上がり分、直線の壁よりも広がりを感じさせることができ、床面が広く見える。

 加えて天井面ではこの曲面の壁に間接照明で陰影をつけ、光のグラデーションを作ることで、柔らかく、広がりのある空間になる。「奥行と幅」だけでモノを見ると狭く感じるが、放物線でつなぐと陰影ができるので奥行も感じるというわけだ。

 それ以上に、やわらかく広がりのある空間を演出しているのだ。

 照明だけではない。壁面の色は下部分が濃く、グラデーションで上にいくにしたがって明るい色となっている。濃い色のカーペットから壁面につながり、天井に向かうにしたがってパターンの密度が薄くなっていく。全体が一体感のある空間となるような、こうした工夫でより視覚上の錯覚がもたらされ、上に抜けるような解放感を与えている。

 椅子に座った人は、天井面も合わせた四隅の仮想点(virtual point)が広がる。要するに足元の壁側がほんのり暗いことで、その壁までの「体感する距離」が長くなり、窮屈さがやわらぐ。

 さて、ここでもう一度、車両の入り口から座席に座るまでの様子を思い起こしてほしい。新幹線車内には、目に見える範囲で鋭角なエッジがほとんどない。コーナーの柱は大きくR(円の半径)をとるなどといったことが、細部にいたるまで「当たり前のように」(福田氏)行われている。

 東京〜新大阪間の運賃と特急料金は合計1万3620円(自由席、繁忙期)。それに5610円追加することで乗れるのがグリーン車だ。物理的な室内空間の広さは普通車と変わらないが、普通車と一線を画す空間となっている。もちろん座席の数が普通車より1つ少なく、その分ゆったりと座れるわけだが、それだけが理由とは思えない“落ち着き”を感じる。いったいなぜなのだろうか。

 「いくつか理由は挙げられますが、なかでもカギとなるのが、光と音、そして風です」(福田氏)

 まず、目に見えて普通車との違いを演出するのが“光”だ。ビジネスパーソンに限らず、家族連れ、観光客など客層が幅広い普通車では快活さを演出するべく照明の色温度が高めに設定されており、一方でグリーン車の照明は色温度が低い。色温度の詳細な説明は割愛するが、要するにグリーン車では暖色系オレンジ色っぽい照明となっている。その照明にあわせて、シートや壁の色との組み合わせで落ち着きが演出されている。

 700系のグリーン車、N700系全車の天井の照明はアーチ形状になっているのだが、その部分の深さをどれくらいに感じるだろうか。実際には10センチほどの深さしかない。人は経験から、アーチ型を見るとある程度の深さがあると想定してしまう。さらに間接照明によって光のグラデーションがかかっているので、より深く感じる。

 300系、700系、N700系、N700Aと高速化するに伴い天井は低くなっているのだが、このアーチ型の照明が実際よりも高く感じさせている。アーチを深く見せることで高くみせているわけだ。

 次に“音”である。ここまで述べたような見かけ上の演出によって、静かな雰囲気を出しているのもあるが、そもそも音が出ないように、さまざまな配慮がされている。

 まず、床に敷かれたパイル状のカーペットが歩く際の足音を吸収する。普通車であっても足音が気になる人は多くはないだろうが、グリーン車はそのわずかな足音にも気を配っている。通路を行き交う人の足音もそうだが、自らが歩く足音すら消してしまう。人は、こうした細かな差に対して想像以上に敏感だ。その差を無意識のうちに感じ取って、静寂を認識し、そこに「落ち着き」を感じる。

 N700Aの座席のシートを覆うモケットと呼ばれる布地も、普通車ではこれまでのものよりコシがある糸を使い、タッチや風合いがより良く進化している。また、グリーン車においてはさらにモケットの表面積が多く、それも車内で発生する音を吸収する役目も担っている。

 日本を代表する路線の車両を多く手がけてきた福田氏だが、それはすなわち多様な状況に置かれた人々が乗る車両を手がけてきたということでもあり、さまざまな葛藤があったという。

 ビジネスパーソンの乗客が多くを占める東海道新幹線ではあるが、それでもビジネス用の路線と割り切ることはできないし、かといってリゾート列車とは明らかに違う。福田氏は言う。

 「非日常のびっくりするような空間は求められてはいませんが、それでもビジネスライクでデザインをしているかといえば、そうではありません。また、ビジネスユースだから黒と白で統一すればいいのかというと、それも違いますしね。そのあたりのチューニングが非常に難しい」

 チューニングが意味するのは、どういった客層に向けて考えるのか、といった話だけではない。

 車内空間は、単純な機能の足し算で快適性を生み出していくわけにはいかない。乗り物である以上、まして時速285kmという高速で走る車両のなかにしつらえられた空間である。高速運行には車体の軽量化が欠かせない。軽量化を大命題とされた車体にあって、快適さを実現する。それは矛盾を解決していく作業であるともいえよう。

 材料を厚く、重くすれば、走行時の共振や透過音を減らし、静かな車両を作ることができる。だが、そうもいかない。さきほど述べた座席の話にしても、布に編み込む糸を増やしていけばより快適になるし、消音効果も増すわけだが、1両がおよそ40トンもある新幹線車両においては、実に糸の本数までもが軽量化の対象となり吟味されているのだ。とはいえ、もちろん減らしすぎれば、毛倒れしてしまい快適さが損なわれる。

 反比例するような状況にあって福田氏らデザインチームは最適解を求めて試行錯誤を繰り返すわけだが、ときにそうしたトレードオフの関係を突破するようなマテリアルや技術がもたらされることがある。福田氏は言う。

 「これまで一生懸命やってきたひとつの成果でしょう。ありがたいことに、こうしたすぐれたマテリアルが東海道新幹線に集まってくるのです。加えて、そうしたマテリアルを検証して実用化に向けて知恵を絞ってくれるエンジニアチームの存在が欠かせません。決して、デザインだけで今の快適な車内空間がつくられたわけではないのです」

 マテリアルの進歩が美しさに磨きをかけ、その美しさに惹かれ、またマテリアルが集まってくる。

 美しい流線形によって人々に夢を与える新幹線――それは、外からだけでなく、内からもカタチづくられ、日本の誇る「Shinkansen」として、世界をも魅了する。

 訪日外国人観光客は増加の一途をたどっている。東京を経て外国人に人気の古都、京都に向かうケースも少なくないだろう。その道のり約2時間10分が、「日本のおもてなし」を感じる時間となる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e6%96%b0%e5%b9%b9%e7%b7%9a%e8%bb%8a%e5%86%85%e3%82%92%e5%ba%83%e3%81%8f%e6%84%9f%e3%81%98%e3%81%95%e3%81%9b%e3%82%8b%ef%bd%a2%e9%8c%af%e8%a6%9a%ef%bd%a3%e3%81%ae%e5%8a%9b-%e3%83%87%e3%82%b6%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%81%ab%e9%9a%a0%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%9f%e3%81%93%e3%82%8c%e3%81%a0%e3%81%91%e3%81%ae%e7%a7%98%e5%af%86/ar-BBm5ZDl?ocid=SKY2DHP#page=2
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