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2015年08月23日23:49

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「日本のいちばん長い日」

「日本のいちばん長い日」、

67年の岡本喜八版がとんでもなく面白い映画だったので
さて原田眞人は同じお話をどう見せるのだろうか…? と思っていたら、
岡本版が録音盤をめぐる宮城事件のサスペンスの趣きだったのと比すと
阿南惟幾陸軍大臣,鈴木貫太郎総理大臣,昭和天皇の人柄をしっかり描く仕様で
岡本版における畑中健二少佐らが牽引する鬼気迫る熱量ではなく
“今この時”を俯瞰し得る3人の理性を
描こうとしている静かな印象を受ける。
鈴木貫太郎のしたたかさ
阿南惟幾の懐の深さ
昭和天皇の正しすぎる思考…それらを追うことが
宮城事件の顚末と同じ24時間のサスペンスであることを証して
岡本版および
NHK製作の「玉音放送を作った男たち」(8/1放送)と合わせて観ると
あの24時間をより興味深く眺め渡すことができると思う。
個人的には鈴木貫太郎の人と立ち位置が
こちらの不勉強もあって大変新鮮。
阿南大臣は家族との団らんだけでなく侍従武官時代のエピソードも容れて
“人間阿南”を演出している。
昭和天皇も“やんごとなきお方”ではなく
民主的な知性を有する教養人として人間らしく造形されている。
畑中少佐は岡本版の黒沢年男、TV版の高橋一生と違い
松坂桃李は内なる熱量を理性で抑制している感じで
近衛師団長を斬り殺し絶望の中にピストル自殺する男ながら
狂気じみた印象は受けない。
これは新しいかもしれない。
映画を読ませる力で言えば岡本版が優れていると思うが、
人間を読ませる―という企図でこの映画は成立していて
それは成功しているのではないか?
「わが母の記」「駆け込み女と駆け出し男」と
原田眞人は人間をしっかり描きそれを上等な役者が演じる作品を撮っていて、
本作もまたその系列であるような気がする。
良作である。
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