マイミクの日記を読み、「そういえば自分も忘れがたい講義のワンシーンってあるよなー」と思いだしたので久々に日記を書いてみます。
何の講義だったか……シニフィアンとシニフィエについての講義をやっていた際の出来事。
これは「意味するもの」「意味されるもの」を表し、例えば「紅白の幕」「おめでたいイメージ」はそれぞれシニフィアン、シニフィエになるわけですね。指示語とは違うとかどうとか習った気もしますが割愛。
広義の際、それぞれにシニフィアン・シニフィエの礼を書かせたメモを回収した先生はそれらの中から気になったもの読み上げていきました。
「��はバカ」
誰だよ書いたの……
ご存じない方のために解説しますと、東方シリーズでチルノというキャラがとある説明書で「１：自機」などにまじって「９：バカ」と書かれたことに由来するスラング的なものだそうです。詳しくは比良坂も存じません。
ほんと誰だよこんな馬鹿な事を大学の講義で先生相手にぶち込んだの…
さてこんなバカだけを忘れていないと思われてはそれはそれで心外なので、真面目方向でも。
小森先生の講義……確か推理小説史論……で、ドロシー・セイヤーズの「ワトソンの洗礼名」というものを取り上げて教わったこと。
シャーロック・ホームズに登場するジョン・Ｈ・ワトソンの「Ｈ」が何の略であるか、作者であるサー・アーサー・コナン・ドイルは明らかにしていません。
しかし、セイヤーズはそれが「ヘイミッシュ」ではないか、という案を提出しています。これはワトソンの妻であるメアリー・モースタンが
……今「モースたん」と変換しかけました。うちのＰＣは何か新しい萌えキャラでも作りたいのか。
さて、メアリー・モースタンが夫であるワトソンを「ジェームズ」と呼ぶシーンがあるからです。
先述の通り、ワトソンのフルネームは「ジョン・Ｈ・ワトソン」。ではなぜジェームズと呼んだか？
それはＨがジェームズのスコットランドでの呼ばれ方、ヘイミッシュだったからではないか、というのがセイヤーズの仮説です。
メアリーは「四つの署名」という事件でワトソンと知り合うのですが、彼女の父を殺した男の名もジョンであったため、その名を嫌って夫であるワトソンをジョンと呼ばず、Ｈ部分から転じたジェームズと呼んでいたのではないか、という事なのです。
この説を採用したのか、２０１０年から放送されているＢＢＣのドラマではワトソンのフルネームは「ジョン・ヘイミッシュ・ワトソン」とされています。
自分はこういった「一理ある、明確な反論ができない仮説」というのが大好きでして、今に至るまで小森先生の講義で印象的だったワンシーンとして脳裏に刻まれております。
他に小森先生の講義で印象的なのはアンリ・カミの「インクは昇る！」のとんでもないトリック、そして清涼院流水のキャッチコピーを考えてくれと講談社に頼まれた先生の考案した「最もカミに近い男」。多少なり知識を付けた今、改めてこのキャッチコピーを見るとこれほど清涼院を適切に表し、かつ洒落の利いたものはそうそう作れるものではないと思います。今風の言い方をすると、なかなかできることじゃないよ。
まあそんな感じで先生をよいしょする感じでおしまい。
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