デタラメというか、相変わらず全く要領を得てない日本のメディアは捨ておき、
アメリカ、ワシンポスト系Slate誌記事より。
著者：スティーブン・Ｓ・ローチ
イエール大学教授。元モルガン・スタンレーアジア会長
https://en.wikipedia.org/wiki/Stephen_S._Roach
【Slate誌の上海株暴落の分析】
中国の家計消費はGDPのわずか３６%であり文字通り、米国の半分に過ぎない。
中国のバブルがはじけることに伴い、諸株を買うために信用取引でカネを借りてい
る投機家達は疑いの余地なく痛みを感じるだろうが、これらの諸影響は限定的な
ものになりそうである。
まだ生まれたばかりの消費部門を持ち、米国型の家計債務の暗雲（overhang カードローン）
を持っていないところの、中国は、米国と日本を苦しめた、厳しい苦しみをもたらす
バランスシート・リセッション（不動産などアセットが大きく減少する）を蒙る可能性は低い。
では、中国の悪名高い投資バブル、すなわち、「ゴーストシティー群（空っぽのマンション・オフィスビルなど）」、そして、鉄鋼、セメント、板ガラス、その他の産業のの過剰生産能力、或いは、
GDPの５０%という、聞いたことのない水準に近付きつつあるところの投資シェアについてはどうか。
懸念すべきではないのか。？
確かにこれらは全て、欧米の観点からは、隠そうとしても隠し切れない、不均衡と差し迫る諸崩壊の諸兆候だ。
しかし、そのような懸念は、中国にはあてはまらない。
それには、以下の３つの主たる理由がある。
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中国は空前の都市化の只中にある。
２０００年以来、その都市人口は、毎年、約２０００万人の市民分が増加してきた。
住居及びその関連インフラ諸所要で言うと、１年でニューヨーク市２個半に相当
するものが追加されているわけだ。
都市化がこの調子で少なくとも２０３０年まで続く可能性が高いのだから、これか
ら何年もの間、高水準の投資が続くということである。
※そうかなあ？ここはやや疑問だが。
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働き手１人当たりの株式資本（stock of capital）が長く生産性の鍵となる駆動源だと
認識されているのだが、
現在、中国は米国と日本のそれの１５%未満である。
しかし、間違いなく、中国の債務負荷そのGDPの２５０%に近いと推定されて
いるのは心配の種ではないのか？
これは、日本型の問題であって、表見的には、最終的に悲劇をもたらすように
見えるではないか。
※これはSlateの間違い。中国の債務GDP比は１５．３％であり比較的健全。
「２０１１年の国債債務残高は７兆２,０４５億元、ＧＤＰ比は１５．３％と比較的健全な
状態を保っている（２０１２年の日本は２１４．１％）」
外務省データ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000024739.pdf
しかし、ここでも、欧米的なレンズを通して中国を見てしまうと、分析が曇ってしまう。
中国の金融システムは、欲目で見ても、部分的にしか発展していないという事情がある。
すなわち、与信（credit）金融の大部分は銀行部門を通じて流れているのであって、
債券市場も大部分の近代的諸経済に比べた場合は小さいし、
バブルに傾きがちな株式市場は、中国諸企業に対する確実な金融源であるとは
到底言えないという事情がある。
※これはバブル前の日本企業と同様であって、株式や社債で直接金融市場から資金調達
できる段階にまで経済のレベルは成熟していないということである。また日本で企業や観光客の外貨持ち出し規制が撤廃されたのが1979年であるから、今の中国は日本の1970〜75年くらいと理解すれば良い。
しかも、債務集中的な銀行与信志向の金融というバイアスは、
中国が、最近の欧米における金融諸危機と大景気後退から自らを守るために
攻撃的に動くにつれて、むしろ、大きくなって行った。
しかし、債務集中的成長の諸危険を自覚し、当局は、現在、地方諸政府と
国有諸企業を彼らの最近の与信諸過剰から離脱させようとしている。
それこそ、実のところ、実体経済において現在展開中の、現在進行形の減速化
の一つの鍵となっている要因なのだ。
中国の当局が、この、いわゆるデレバレッジング（deleveraging）に関して、
成功を収めている以上、最近の諸指標はこの点では心強いものがある。
中国の依然として速い名目GDP成長は、今後数年で、中国の全般的な債務比率を
急速に低下させるはずなのだ。
※ここは納得
（注1）デレバレッジ
「投資家のレバレッジ取引による建玉を解消すること。投資家は、
レバレッジを用いることにより自己資金を大きく上回る資金を動かすことが
できるようになる。これによりハイリターンが期待できる。しかし、
レバレッジ取引はハイリスクも伴っている。デレバレッジは、レバレッジ取引に
よる建玉を解消することによりハイリスクを回避することを目的としている。」
http://www.weblio.jp/content/%E3%83%87%E3%83%AC%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8
「レバレッジ（leverage）とはテコの意味。レバレッジを反対売買するのがデレバレッジ（deleverage、テコの解消）
「21世紀に入ってから、レバレッジを効かせた取引の担い手はヘッジファンド。
世界の金融・資本市場や商品市場に巨額の資金をつぎ込んだ。低金利の円を
調達し、高金利通貨などで運用する「円キャリー取引」もレバレッジ取引の一
種。２００７年夏以降、サブプライムローン問題の深刻化に伴う信用収縮で多く
のファンドが資金難に陥り、デｲレバレッジを余儀なくされた。円相場急騰や証券
化商品の急落など波紋が広がり、ファンドに融資していた金融機関にも打撃を与
えた。」
http://www.nikkei.com/money/investment/toushiyougo.aspx?g=DGXIMMVEW4049008072008000001
だから、私見では、欧米の新聞論調とは対照的だが、中国は次の日本や次のギリシャではない。
※そりゃそうだろう。
逆に言えばインドやバングラデシュ、ミャンマーでは中国の代替や後釜にはなれないということでもある。
また、現在、成長のエンジンを、製造業が主導する諸輸出と投資からサービス業が主導する消費に切り替える、という中国の挑戦が行われているところだ。
以上をまとめると、中国の心強い事情が三つの諸前線において示されているということ。
第一、サービス部門の発展
サービスは、製造業や建設の組み合わせで４３％のシェアを得て、２０１４年に中国のGDPの４８％に上昇しました。
サービス業は、中国の他の非農業部門よりも単位当たり約３０％より多くの雇用を必要として、やや遅いGDP成長率は失業率と社会不安のリスクを減少させます。
第二、eコマースの爆発的成長
コマースは、2009年から毎年７０％以上によって成長している。米ベイン·アンド·カンパニーによると、２０１３年に中国は世界最大のデジタル市場として米国を上回りました。
※これは知りませんでした。アリババがアマゾンよりも売上を上回るはずですね。
第三、都市化が恐るべき速度で進行中であること。
２０１４年のOECD予測によると、中国の都市部の人口シェアは、１９８０年には２０％未満であったが、２０３０年には５５％以上となり、約６９％に向かう途中である。
都市化は新たな中国の消費者の出現を表すものです。
それは実質所得で、都市部の労働者は農村部よりも約３倍の所得を後押しするだけでなく、
都市化は、ローカル輸送、通信、公益事業、ならびに卸売·小売業などの新しいサービスの開発を支えます。
【まとめ】
あなた方は、中国が直面する危険を熟考する前にもう一度考えてみてください。
中国は欧米の経済を苦しめている症状の多くを持っているが、それは経済発展の途上であり、欧米とは非常に異なる状態であります。
我々は自分自身を振り返って見てください、それを通して見れば、
中国の下振れリスクを必要以上に過大評価してしまい、その新生構造への転換の戦略的な基礎要素であることを見逃します。
殆ど問題なく、今後も中国経済は世界の他の国の追随を許さない成長の可能性を提供し続けています。
http://www.slate.com/articles/business/moneybox/2015/07/china_stock_meltdown_why_its_actual_economy_will_be_just_fine.html
※この記事はアメリカ人がアメリカ人向けに書いたものなので、私達も我々もあなた方も全てアメリカ人のビジネスマンのこと。
要するに
・上海株式市場が高騰しようが暴落しようが、そこは所詮、バクチの鉄火場に過ぎず、上場企業はその資金で設備投資などの資金調達をしているわけではない。
銀行借り入れで資金調達をしているので、実態経済には影響が余り及ばない。
ＮＹＳＥやナスダックとは全く異なるマーケットであって、まともな中国企業はＮＹで上場している。
従って現在の上海市場は、仕手筋や総会屋が仕切っていた昔の日本の株式市場と市場規模が違えど似たようなものであり、それは第一勧銀総会屋事件の１９９７年ごろまで続いたので、さほど昔の話ではない。
http://www.tokyo-np.co.jp/hold/2008/anohi/CK2007061502124479.html
・中国は都市人口４億人、農民人口９億人で、この９億人が毎年２千万人ずつ各都市に流入してサービス業や付属関連業が伸びるので、ＧＤＰの伸びシロがまだまだあるのだと。
こんなところでしょうか。
中国は実際、農村からの都市部流入は止まらず、現在、上記の二つに分かれている戸籍も２０２０年には統一するそうである。
http://www.sankei.com/world/news/140801/wor1408010006-n1.html
アメリカも子分の比島の手前、南沙諸島で八百長プロレスやっても、結局は中国のGDP成長頼りであるという褒めちぎった批評ですね。
しかしSlateは中々読ませる良い記事を書く。
■中国株、止まらぬ下落 下支え策空振りで募る不信
(朝日新聞デジタル - 07月09日 05:14)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=3506983
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