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2015年07月09日22:22

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東芝。日本ものづくり企業の終焉・・・

漸く本日の日経新聞で東芝の不正経理の実態が明らかになった。

今まで不正経理の事象ばかり書いていたが、原因は2006年の米ウェスチング・ハウス社の原子力部門買収である。

【東芝のWH社買収に関して】

米ウェスチングハウス(以下WH)、東芝に5800億円で売却へ・英紙
23日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)は、英国核燃料会社(BNFL)関係者の話として、同社が傘下の米原発メーカー、ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を東芝に売却することをこのほど決定したと報じた。売却金額は50億ドル(約5800億円)で、26日に開く取締役会で正式決定するという。

WH社をめぐっては、米電機・金融大手ゼネラル・エレクトリック(GE)が日立製作所と共同で買収を提案していたほか、三菱重工業も名乗りを上げていた。
http://plaza.rakuten.co.jp/heat666/diary/200601230000/
フォト

東芝はその後株を買い増しして総額約7000億円の巨額買収となった。

しかし3.11以降はダメになった商用原発事業は実はとっくの昔に終焉していたのである。
でなければ売却をするわけがないと思うべきだったのだが、原発事故以前の日本は原発事業を伸ばすことしか考えておらず、英米は軍用以外の商用原発事業は見切っていたことに気がつかなかったのである。

ウェスティングハウスwiki
電気、機械関係を中心に軍事用・民生用の双方で多岐に渡る事業を展開。1950年代以降は加圧水型原子炉(PWR)の開発・製造で独占的地位を占めた。
しかし、1980年代頃からそれまでの中心事業の売却や分離が相次ぐようになる。1997年には放送以外の大半の事業を売却し、社名も伝統的なウェスティングハウスからCBSコーポレーションへ変更した。1998年には最後に残っていた製造部門である原子力部門も英国核燃料会社 (BNFL)社に売却した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF

80年代、すなわち1979年スリーマイル島事故でアメリカは商用原発ビジネスを見切っており、それ以降は商業原発は米国内では設置されていないし、許可も下りていない。
ロシアも1986年のチェルノブイリ事故以降は同様である。
大量の核兵器や核動力艦船を保有している両国がその状況だったのに日本は気がつくのが余りにも遅すぎたのである。

東芝がWH株を購入した先は英国核燃料会社(British Nuclear Fuels Limited)であるが、WH株を売却後に会社は全ての資産を売却して解散。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E6%A0%B8%E7%87%83%E6%96%99%E4%BC%9A%E7%A4%BE
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しかも3.11以降もWH株を買い増しして87%保有に。
(2011.9.6)
<東証>東芝が一時6%下げ 「WH株買い増し」で負担警戒
米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は、傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)の株式を米ショー・グループから買い取る交渉を行っていると報じた。市場では株式の買い増しに伴う資金負担を警戒する声が出ており、株価の重荷となっている。「(東電福島第1原子力発電所の事故で)原子力事業に逆風が吹くなか、株式取得の詳細や今後の効果を見極める必要がある」(準大手証券ストラテジスト)との声があった。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL0605E_W1A900C1000000/

米ショーグループ
1889年シカゴ設立されたエンジニアリング会社
通称CB&I(Chicago Bridge&Iron  シカゴ橋梁鉄鋼会社)
HPでは中国での原発事業を行っている様であるがWHや東芝との現在の関係は不明。全株を放出したのだからもう無いと考えたほうがいいのではないか?原子力事業もHPに掲載されているが現在進捗中のプロジェクトは上記中国の原発含めてなさそうである。
この会社の主力は天然ガス、石油油田開発、水力発電事業とそのエンジニアリングであり、要するに厄介ものの原発事業を売却したというだけである。
http://www.shawgrp.com/about-cbi
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まとめると英国核燃料会社とCB&I社の不良資産を東芝が7000億円で購入。
早い話が「上手いことやられた!」ということである。

【東芝の決算】
2015年3月期決算どころか、2014年最終四半期(1〜3月)の短期決算も出来ない状態なのは何故なのかを推考する。

東芝がWH社を資産計上したのは2007年3月期。約6000億円が「そのほか資産 のれん代及びそのほか無形資産に計上されている。(総額1兆1000億円)
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/sr/sr2006/tsr2006_08.pdf

それが2014年3月期バランスシートでは、約1兆円に増加。(総額1兆4000億円)
CB&I社からの買い増しもあるのだろう。
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/sr/sr2013/tsr2013_08.pdf

売上6兆5025億円だが、当期純利益508億円。
のれんだいの年次原価償却500億円とトントンである。

では同じ重電3社の残り2社である日立製作所と三菱電機決算と比較してみよう

日立製作所2015年3月期決算書。
売上9兆7619億円 当期純利益2413億円。
http://www.hitachi.co.jp/IR/library/stock/hit_sr_fy2014_4_ja.pdf

三菱電機の同年3月期決算書
売上4兆3230億円 当期純利益2346億円
http://www.mitsubishielectric.co.jp/ir/data/negotiable_securities/pdf/144.pdf

やはり東芝の決算がカツカツだというのが一層理解できます。

さてこののれん代の償却についてはよく海外決算の場合には問題になるのだが、以下の説明を読んで欲しい。

「のれんだい」
(買収金額)―(被買収企業の時価純資産額)。買収金額は、被買収企業の株主に割り当てる新株総数に買収企業の株価を乗じたもの。時価純資産は、被買収企業の資産と負債を時価評価したもの。4月から適用される企業結合会計基準で、これまで簿価で引き継がれてきた資産や負債を時価会計し、発生したのれん代を20年以内の複数年で均等に費用処理(償却)することが求められる。
https://kotobank.jp/word/%E3%81%AE%E3%82%8C%E3%82%93%E4%BB%A3-881323

日本の会計処理ではのれんだいは20年掛けて均等償却しなければならない。
従って東芝も日本式会計なので、1兆円ならば毎年500億円の原価償却をしなければならない。
しかし原発事業は赤字でその償却費用が捻出できない。仕方なく不正経理をしたということではなかろうか。

しかしこの「のれんだい」、IFRS国際会計基準では原価償却しなくても良いのである。
そこで東芝も導入しようとしたのである。

東芝は2015年1月29日、IFRS(国際会計基準)を任意適用すると発表した。2017年3月期(2016年4月〜2017年3月)の期末決算から、従来の米国会計基準に代えて、IFRSに基づいた連結財務諸表や有価証券報告書を作成する。東芝は2012年10月に、IFRSに移行するためのプロジェクトの一環として会計システムを刷新。子会社に新たな会計システムを展開することで、IFRSの任意適用の準備を進めていた。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/012900342/

発表したのが2015年1月であるから、ここでかなり決算が行き詰っていたのであろう。
これで2015年の最終四半期決算を乗り切るつもりだったが、利益が追いつかずに今回の事態となったのである。
WH買収から7年経過しており、単純計算で500億円×7=3500億円。
合計3500億円を利益計上するのは東芝といえどもかなりキツイ。

「今日の追加報道」
東芝は不適切会計問題を巡り、原子力事業子会社、米ウエスチングハウス(WH)などの株式の一部や不動産を計2000億円規模で売却する検討に入った
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ08IJ1_Y5A700C1MM8000/

上記の通り、2000億円が資金ショートしており、この金額は上記の償却金額と大雑把だが適合するだろう。
また金融機関から追加で5〜6000億円を調達するとあり、要はWH社買収金額全額を損金処理するということである。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ08IJ1_Y5A700C1MM8000/

【結論】
結果的には東芝のWH社買収は大失敗であった。
買収当時の責任者で常務だった佐々木副社長は退任するそうであるが、日本を代表する大企業で大メーカーがこの様である。
東芝は誰でも知ってる有名企業で、大スポンサーであるからマスコミも書きたくないのは理解できるのだが、完全に死に体だった原子力事業を買収して、結果がゼロ円というのでは、従業員や下請けなどステークホルダーに何と説明するのか?
従業員だけで全世界で20万人(半分は海外)、下請けや家族を入れたら100万人にはなる。
記事には簡単にリストラするなんて書いてあるが、工場閉鎖や解雇で人生を棒に振るのは何も知らない従業員や地域社会である。
私企業の町工場とは全く違う。そこまで考えていないだろう。
だから今の日本の経営者の殆どがダメなのである。
有望な後継者もいないみたいであるし、いい機会だから元GEのジャック・ウェルチなど米英からプロ経営者を呼んでやらせるべきでしょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%81
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ソニーのハワード・ストリンガーみたく失敗したケースもあるが、何しろ日本は外国人社長、女性役員が余りにも少なすぎる。
新卒プロパー社員で技術者も経営者も何もかも調達できる時代はこれまたとっくに終焉しているのである。

例えば製薬メーカーの武田製薬
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E7%94%B0%E8%96%AC%E5%93%81%E5%B7%A5%E6%A5%AD

社長のクリストフ・ウェバー(Christophe Weber)
https://jp.linkedin.com/pub/christophe-weber/26/896/91
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彼は武田製薬がヘッドハンターを雇い、ライバルのグラクソ・スミスクラインから引っこ抜いた人材である。
こういうやり方が日本企業も必須であろう。

日本は例えば東芝みたいな大企業の社長を歴任後、顧問になり会社から運転手付き車と秘書を宛がわれて、経団連の理事になって、勲章を貰えば良いと考える俗物の経営者・役員が余りにも多すぎる。

これを機に会社の人事を猛省すべき事項でしょうネ。




焦点:東芝不適切会計の究明大詰め、「予算の圧力」裏付けへ
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=52&from=diary&id=3508457
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