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2015年06月18日12:41

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これをやったら引退する

唐突に古い映画を思い出しました。

Un uomo da rispettare。直訳すると「尊敬すべき人」というところですが、
意味的には「名人」とでも訳すべきところでしょうか。日本語のタイトルは
「ザ・ビッグマン」。英語では The Master Touch。「熟練の指」とでも
いった感じかな。

主演はカーク・ダグラス。

老練の金庫破りの物語です。映画は金庫破りの常習犯スティーブが刑務所から
出所してくる所から始まります。出所に付き合ってくれた顔見知りの警部から
「もうこれを最後にしろよ」と言われて奥さんの待つ自宅に送り届けてもらう。

ところがそこに昔の仲間ミラーが来て、彼を拉致同然に連れ去る。ミラーは
保険会社の最新セキュリティを供えた金庫を破って200万ドルを強奪しないか
という話を持ちかける。しかしスティーブはもう静かな暮らしがしたいのだと
言って彼の誘いを断った。

断ってはみたものの、金庫破りのプロとして、その最新鋭の金庫というのが
どうにも気になる。とうとう彼はその金庫に掛かっているロックの仕様を入手
して研究を始めた。

その金庫のロックは、わずかな足音でもするとたちまち警報が鳴る。ところが
このロックは騒音ではなく美しい音楽が鳴り響いていても、それは異常音とは
みなさず警報は鳴らないのである。

彼はこの金庫を純粋な動機で破ってみたいと思った。妻は反対するが「これを
やりとげたら、もう本当に引退するから」と言って、仕事に取り組む。

彼はアリバイ作りのために、若い曲芸師マルコを手下にする。このマルコを
演じるのが、なんとジュリアーノ・ジェンマ。

この映画、実は二大スターの共演なのです。

スティーブはマルコに自分の古い金庫破りの仕方を教え込む。そして決行の夜。

スティーブは保険会社に忍び込むと足音も立てずに金庫に近づき、警報装置に
テープレコーダーに仕込んだ美しい音楽を聴かせる。そして音楽によって警報
装置が微細な音に対して鈍感になっている間にロックを解除していく。

一方でマルコは同じ夜、別の場所でスティーブに教えられたやり方で金庫破り
の作業を始める。しかし物音に気づいた警備員が・・・。

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やがてスティーブは美事に保険会社の金庫を破り、200万ドルを手にした。
そして金を隠してから、マルコが金庫破りをした会社に赴く。そしてマルコを
返してからわざと警報を鳴らし、警察に捕まる。

先日刑務所からスティーブを送り出してくれた警部が来る。

「ふーん。今度は昔のやり方を使ったんだな」
「どうもすみません」

と警部とたわいもない会話を交わしていた。ところがひとりの刑事が警部を呼ぶ。

「警部ちょっと来て下さい」

警部がそちらに行くと、そこには警備員の死体が転がっていた。

警部が言う。
「スティーブ、お前らしくもないことをしたな。お前何歳だ?」

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感想。

「音楽で警報装置を眠らせる」というのがなかなか面白い発想ではあるのですが、
この映画が作られたのは1972年です。私がテレビのロードショーで見たのが
おそらく1983-84年頃ではないかと思うのですが、1980年代の技術でもこの「騒音
には反応するが音楽には反応しない」という警報装置の原理が全く分かりません!

それ以外にもこの物語はいろいろ穴があるんですよね。

自分は200万ドル強奪ではなく、しょぼい金庫破りで捕まって2年くらいまた
くらい込めばいいやということなのでしょうけど、その2年間に手下のマルコ
がおとなしくしている訳が無い。

教えられた金庫破りのテクで、どこかで仕事をするかも知れない。ヘマやって
捕まる可能性もある。そしたらそこからバレちゃうと思うのよね。更に200万ドル
を強奪したけど、それ持ってて使ってたら、その金の出所はなんだ?というのを
警察だけでなく、仲間のミラーも疑う。アリバイがあるなんて話は無意味です。

そう考えると、この計画ってあまりにもずさん過ぎるんだよね。

でも音楽を警報装置に聞かせながら、楽しそうにロックを解除していくスティーブ
の姿というのが美しかったです。職人冥利に尽きるみたいな感じ。

この映画って、やはりそういう名人のサガのようなものを描いた映画なのでしょうね。

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