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2015年06月05日04:55

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【喘息と体罰の少年時代】/第二部 体罰/第三章 日記を書け!/第二節 たけしくんにケガを負わせてしまった

【喘息と体罰の少年時代】
第二部 体罰
第三章 日記を書け!
第二節 たけしくんにケガを負わせてしまった


そんな小学五年生の毎日、僕はやはりストレスが溜まっていたのでしょうね。ある日のトイレ掃除の時間に事件は起こりました。その日のトイレ掃除担当は、僕とのぶおくんとたけしくんの3人でした。僕が遅れてトイレに行くと、既にのぶおくんがデッキブラシでタイルの床を擦っていました。のぶおくんは、入り口の方向に向かってデッキブラシでタイルの床を擦っていました。僕はフト、のぶおくんのデッキブラシの先端を蹴飛ばしました。
「ぎゃぁ!」
悲鳴はたけしくんでした。のぶおくんのすぐうしろにたけしくんがいたのです。体の大きなのぶおくんの影に隠れてしまい、僕にはたけしくんが見えていませんでした。クラスのコメディアンだったたけしくん、「デッキブラシ二人旅〜♪」のようなギャグのつもりだったのかも知れません。僕が蹴飛ばしたのぶおくんのデッキブラシ。のぶおくんの手をすり抜けて、柄の先端が、背後にいたたけしくんに当たってしまったようです。床に座り込んで、左目を抑えて足をばたつかせるたけしくん。左目を抑えた指の隙間から血がしたたり落ちました。
「痛いよ〜 目に刺さったよ〜」
「ごめんね! たけしくん! すぐ先生を呼んでくる!」
僕は走って、野川先生を呼んできました。野川先生がたけしくんのケガを確認したら、幸いなことに目に刺さったわけではなくて、目の下3cmくらいの場所に切り傷がありました。
 その後は、先生が病院に連れて行ったり、僕と母親がたけしくんの家に謝りに行ったり大騒ぎでした。たけしくんがこの事件を恨みに思わないでいてくれるのがせめてもの救いです。でも、デッキブラシを蹴飛ばすなんて、やはり野川先生の「両手挙げ」の体罰と日記強制の日々でストレスが溜まっていたのでしょうね。
あとにも先にも、僕が「憂さ晴らし」の行動を見せたのは、「たけしくんにケガを負わせた」こと、一回のみでした。しかし、他人に見えない場所でもう一つの「憂さ晴らし」がありました。その頃、自宅で犬を買っていました。名前は「エス」、雑種犬でした。僕が帰宅すると尻尾を振って出迎えてくれる毎日でした。その「エス」の頭を撫で、喉を撫で、フト意地悪な行動が出ました。僕は、左手で「エス」の上顎と下顎を握りました。驚いたように目を丸くして僕を見つめる「エス」。僕は、握った手にさらに力を加えました。まだ子犬だった「エス」。抵抗も出来ず、僕の手を振り払うことも出来ません。丸い目で僕を見つめていました。虐待という酷い行いをしている僕を責めるわけでもなく、「助けて」と懇願するわけでもなく、ただただ、驚きに満ちた大きな丸い目。江戸川乱歩の作品「芋虫」の主人公/時子なら、「なんだい、こんな目」と言ってその目を潰してしまうのでしょう。僕の中にも時子と同じ凶暴性があったのかも知れません。いえ、芽生え始めていたのでしょう。それは、長い悪夢の始まりに過ぎなかったのです。

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