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2015年05月27日19:06

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アニメ史を振り返る2 3DCGの躍進

アニメ史を振り返るといいながら、最も最新の話題を早くも二回目にやります。
といってもこれがアニメ界を揺るがす大事件ですが。(実は今回はアニメだけに留まらず、一般映画にも波及するお話ですが、文字数が多いため最後の余談で話します)


セル画で作られているテレビアニメは今何本でしょうか?
答えは0。
今のテレビアニメーションにおいてセル画は絶滅してしまいました。意外にも移行したのは最近で、2013年10月からサザエさんがデジタルアニメーションになって移行が完了しました。今の世の中、そもそもセル画自体が中々売っておらず、絵の具やその他消耗品もほとんどが生産中止になり、時代の変化を考えればいたしかなたないでしょう。


そのデジタル化と時を同じくするように勢力を伸ばしてきたのは、3DCGでした。世界初のフル3DCG長編作品『トイストーリー』がアメリカ、ピクサーから1995年に公開。これ以降アメリカのアニメや一部の映画がCGへと移行していきます。
しかし日本ではCGを使用した作品は数あれど、フル3DCGはアニメを含めてもそんなに多くありません。なぜアメリカと日本ではこれだけ需要に差があるのでしょうか?
もちろん技術の差もありますが、それだけではありません。
これから3DCGの特性のお話をしていきます。


ではまず、日本で作られているアニメにおいて、3DCGはどのような場面、物を書く際に使われているでしょうか?
答えは爆発などのモーション、ロボット、車などの機械。つまり、無機物が多いです。これは3DCGの特徴ですが、どうしても描いた物が有機的に見えず、無機的なものに感じてしまう。
CGで作られた『人間』は精巧に作られれば作られる程、より不気味さを増してしまう。まるでよくできた人形を見ているかのような感覚に囚われます。
これが一般にいう『不気味の谷』現象です。
これは人形も同じですが、人間の形に精緻に作られれば作られる程に不気味さを増していきます。それはさらに精巧に作るか、デフォルメ化すればその不気味の谷はこえます。だから日本のアニメやマンガは、ある程度デフォルメ化された作品が多い。


ではなぜピクサーが作った世界初の3DCGアニメが『トイストーリー』なのか?
それは主人公達の『人物』がデフォルメされていれば不気味の谷は超えられるし、何よりも無機的に感じてもおもちゃだから問題ないわけです。元々無機物ですから。つまりピクサーは、CGが無機的に感じるならば、無機物を主人公にしようと思いついた。
その次が『バグズ・ライフ』。つまり虫です。虫、魚を含めた動物を擬人化する際には不気味の谷は起こりにくい。なぜなら元々人間からかけ離れてますから。
その後も『カーズ』や『モンスターズインク』など無機物、動物は続きます。


ピクサーは今最も理詰めで物語を描き出す集団です。そのピクサーが今日に至るまで、3DCG作品ではリアルな人間を主人公にしていない。必ず三頭身前後の体型です。それはなぜかというと、それ以上リアルに近づけると『不気味の谷』が発生してしまったり、FFなどの日本のゲームに使われるCGのように粗が目立ってしまう。だから三頭身前後に抑えれているのですが、これだとキャラクター達は可愛いですが『萌え』にはならない。
また、アメリカは小さい頃からカートゥンなどに見慣れてますから、その頭身でも全く違和感がなく、問題ありません。


しかし日本の場合はある程度デフォルメ化されているとはいえ、元々リアルなキャラクターデザインをしています。リアルというと語弊があるかもしれませんが、頭身などはそこまでいじられていない。それだとCGにした時にどことなく『気持ち悪さ』がただよってきます。だから日本はあくまでもキャラクターを描く時は手書きにこだわります。また、カートゥンのような三頭身のキャラクターを作りCG化したら、それだけで子供向けアニメになってしまいます。
無機物、動物ものも機関車トーマスやハローキティ等の影響があり、子供向けに受け取られやすい。
日本の中高生、また大人向け作品のキャラクターデザインは語弊がある言い方をしますが、様々な種類の『萌え』を基調としたデザインで成り立っている。その萌えの中の有機的な部分とCGはあまり噛み合いません。(この場合の萌えは女の子のみに限らず、おっさん萌え、枯れ専等も含んでいます)


そのため、今日本が力を入れているのが『セルルック』という技法です。これは簡単いえば「手書きに近いCG」を作るということです。今の段階でCGと手書きが混在すると水と油のようにCGが浮いてしまう。それならば手書きに近いCGを作るという技法です。
この分野が一番盛んなのがプリキュアやアイカツのような『女児アニメ』です。
男の子は単純にロボットやバトルを出しとけば満足する(CGはロボットやバトルに使う)。女の子はそうもいかないからどうするかというと、EDなどでアイドルのように踊ったり歌ったりさせるわけです。その時は当然主人公達が踊る。その時に全て手書きを使うと動画枚数がとんでもないことになるから、CGを使います。
CGは一度モデリングしてしまえば後は楽です。

例を挙げると、手書きは絵です。紙とペンがあれば何枚でも低コストで書けますが、たくさん書くとなると時間もコストも掛かる。
一方、CGは人形遊びです。人形を作ったり、衣装や小物を揃える手間と時間はかかりますが、一度揃えればあとは動かすだけなので比較的楽です。


このセルルックという技法は賛否があって、CGを手書きに見せるなら手書きでいいじゃん、という当然の指摘もあります。(押井さんはこの論調のようです)
ただ私は、この技法はとても面白いものだと感じています。

私感では、日本のアニメーションがアメリカのアニメーションを技術的に超えた瞬間など一度もなかったように思います。フルアニメーションの『ピノキオ』『白雪姫』のクオリティはそれほど高い。(並んだ時はあったかもしれないけれど)
しかしその制限の中で、リミテッドアニメやバンクシステム(第一回を参照)、シナリオなどの工夫で特殊な需要を生み出してきました。
私はガラパゴス化が悪いとは思いません。グローバルスタンダードが正解とも思いません。日本には日本の技術があっていいと思います。
その一環としてこれから先、どのようにCGが成長していくか、非常に楽しみです。


ガンバの冒険がフル3DCGアニメになるようですね。
3DCGには無機物以外に動物にも向いていますので、どのような形になるか注目したいものです。

次は『ガンダムがアニメ史に与えた影響について』考察していきます。





※ハリウッドにおける3DCGについて。
実写映画においてもCGが多用化されて、なんでもできるように思われてますが、それは大間違いです。
パシフィック・リムやゴジラがなぜあんなに暗い場面や海、雨のシーンが多いかというと、CGの粗を隠して、さらに水を動かすことによって大きさや重量感を演出している為です。
CGがあるから何でも迫力を出してとれるわけではないんだよ、というお話でした。
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