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2015年05月14日13:07

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生涯メト指揮者の成り行き:5/9レイクス・プログレス

最終公演が終わったらさっさとキャスト表消されるの忘れてた。
Anne  Layla Claire
Tom Paul Appleby
Trulove Brindley Sherrat
Nick Shadow Gerald Finley
Mother Goose Margaret Lattimore
Baba the Turk Stephanie Blythe
Sellem, an auctioneer Tony Stevenson
Keeper of the Madhouse aul Corona

ジョナサン・ミラー演出、指揮はジェームズ・レヴァイン。

個人的には、好きなオペラベスト30には入るかもしれない位の大好きな作品。なんでこんなにマイナーなんだろう。ようやく実演2回目。前回は十余年前のドレスデン、もっさい(重厚とも言う)オケにたどたどしい英語による上演で、とりあえず憧れの作品を見ることができましたというだけのもの。それからずっとチャンスがなく、今回のプロダクションもシーズン(わずか)3回のうちの最終回、メト通算26回目。キャストも他のに比べると相当節約。それでもレヴァインの指揮というのは強烈なドラ。休日出勤の帰りに(というか残務を強制終了して)何とかして立ち寄る。

この作品で好きなところは、音楽が軽やかでチャーミングなところ、個々の登場人物の心象が極めて克明に描き出されているところ、そして何より、最後の息詰まる一連の展開、即ちニックとトムの命を懸けた賭け、放蕩のなれの果てで狂人となったトムをアンが優しく母のように抱いて歌う子守唄(多分、これがストラヴィンスキーが創った最も美しい音楽だろう!)、起きてアンが去ったことを悟ったトムの絶望と混迷、そして最後に出演者一同が訓示を垂れるところの爆発的なエネルギー。初めて聴いた時から虜になったけどなあ。
2回目の実演も、上記の賭け、子守唄、絶望のあたりは期待した高みには達せず。キャストは、フィンリーが若干ウィーンだのコヴェントガーデンだの出ている他は殆どドメな面々。それ自体はリソースの配分としては正しい判断なのだろうが、ただブライスの圧倒的な存在感とカリスマ(初めて生で聴いたが、こりゃなかなか凄い。当地リングのフリッカ。)を除くとまあ小粒。アップルビーはダーヴィッドとしては非常によかったが、トムとしてはまあ、まあまあという程度。クレアはブリテンではチューリヒとかにも出始めているようだが、アップルビー同様、いやそれ以上に、まだまだこれからの世代という印象。非常によく歌えているが、心を動かす方向には行かない。やはりあの子守唄でホロリとさせてくれないと画竜点睛を欠く(といっても、かのヒルデ・ギューデンですらここで合格点を出せなかったのだから(某謎録音。演奏団体不明、但しフリッツ・ライナー指揮、演奏地はNYの由(笑))、ここはシンプルに見えて実は結構厄介なところなのかもしれない)、これからの世代に要求するのは酷か。

そしてレヴァイン。今シーズンは彼の振る6演目中ホフマン物語以外の5演目に行けたが、全て合格点。既にミュンヘンフィル監督終盤の頃からカリスマ懸っていたが、四半世紀前の壮年期の彼は決してこんなんじゃなかった。昔のやっつけ仕事の連発(確かに仕事量は半端なく多かったが)の面影は全くなく、振る演目ことごとく、一見大人しいが聴いているうちに彼の活気と情熱と心地よさに絡めとられていく。歌手を好き放題泳がせていて、でも結局は彼の方向に皆自然と誘導されていく老練な羊飼い。真の劇場畑指揮者の仕事。流石は現役歌劇指揮回数最多(でしょう流石に。ゲルギエフがマリインスキーの、バレンボイムがリンデンの監督やる15年位前から今のポジションいるし、彼らと違って二股は最小限だし。現役でそもそも比較対象になり得るのすら誰かいるかどうか。スタジオーネ劇場の監督だととても公演数が追い付かないだろう。シュナイダー?)の経験。後任含みで首席に迎えられたルイージは結局18年までだったかの任期を延長せず放逐することになったようだが、確かにこの働きぶりを見ると、彼のような働き盛りの世代をいつまでもキープしておくのはもう無理だろう。この日はこの公演後数時間の休息の後に仮面舞踏会の夜公演。


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