mixiユーザー(id:7108471)

2015年04月12日20:36

86 view

ベルリオーズ「レクイエム」大野和士指揮都響・東京オペラシンガーズ他(12日)

http://www.tokyo-harusai.com/program/page_2408.html

よく聴かれる他の「レクイエム」(ないし「ミサ曲」)と同様、ベルリオーズの「レクイエム」も、特に、キリスト教の教義やしきたりについての知識や信仰自体を絶対的に前提にするものでもない、と私は思います。絶対たるものへの怖れ・尊敬・憧憬などは、宗教を超えた共通の感情。宗教画には寓意が含まれていることが多く、知識があった方が絵画芸術は理解し易いけれど、聴覚で感じる音楽という芸術では、知識・前提がなくても、作曲家によって表現されている感情は受容できるはず。ベートーベンの「ミサ・ソレムニス」が屈指の名曲であるのは、宗教の枠を超えているからこそ、誰でも感銘を受けるからです。

さて、ベルリオーズといえば「幻想交響曲」がずば抜けて知名度が高いけれど、この頃は、ディスクでもこの曲をあまり聴くことはないしコンサートで聴きたい曲でもない。私は、最近は、物語性があまりにも強い音楽にはちょっと辟易する。もっと素晴らしい音楽がベルリオーズにはある。管弦楽だったら「ロメオとジュリエット」なんかの方が、自分にはよほど聴き心地がよいし魅力的。ベルリオーズで一曲残すなら、本人の弁のとおり、この「レクイエム」かもしれない。動と静の極端なまでの対比・率直な抒情が、この曲の魅力です。

「怒りの日」の強烈な音響は、生コンサートでは確かに聴きもの。でも、大音響で聴き手を圧倒するのは、全10曲のうち3曲でしかない。あとは、合唱が、清らかに、あるいは生き生きと歌う。モーツァルトやフォーレの「レクイエム」のような宗教的な感銘は比較的薄いし、ベートーベンの「ミサ・ソレムニス」の構築性が高い伽藍のような音楽の巨大さや、ヴェルディの「レクイエム」のようにオペラを聴いているような恍惚感はないが、より自然な、人間的感情に溢れた音楽ともいえようか。器楽的には第6曲「ラクリモーザ」と第7曲「オッフェルトリウム」が、管弦楽が伴奏の域をはるかに超えて素晴らしいと思います。後者では、弦楽器の移ろいと重なり・フルートの絶妙なフレーズが幽玄の世界を醸し出す。都響の演奏は見事だった。第10曲「アニュス・デイ」、最後、静かにアーメンを唱えて曲が終わる箇所は、実に美しい。「おどろおどろしい」ベルリオーズではない静謐な彼の音楽に私は同感する。

東京オペラシンガーズ、大野和士指揮都響の演奏に不満はない。4Fレフトながら舞台近くの第一列の席からは、オーケストラの各パートを明快に追えたし、聴こえる響きも、とてもよかった。この曲を楽しめ、満足です。なお、「サンクトゥス」のテノールソロはロバート・ディーン・スミス。

8 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する