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2015年04月09日08:33

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大野和士指揮都響定期「マーラー交響曲第7番」8日東京文化会館

マーラーの交響曲の中でも第7番は一番とらえどころがないかもしれない。第一楽章にしたって、葬送行進曲のように始まって、その後、気分は実に気まぐれに変節する。統一した気分というものには落ち着かない。終盤に差し掛かって、ハープとともに望洋と視野が急に開け、広大な風景が一瞬現れる幻想的な広がりが眼前に見えるが、それも束の間。滑稽・シニカルな行進曲の第二楽章。グロテスクな第三楽章。聖なるものと俗なるものの混在。そんなコラージュ風の特異な音楽が、この曲の魅力。大野さんプレトークで曰く「シンフォニーに新しい窓口を開いた点では、先日演奏したシュニトケにも通じる」という多様性の是認。

これらの断片・断片その瞬間を、いかに切実に聴かせるか、あるいは、全体の流れ、統一感を模索するのか、演奏がとても難しい曲ではないかな、と思います。流麗なベルティーニ・緊迫感に満ちたインバルのマーラーに比して、大野さんは、どうするのかしら。多分、あまりえげつなく対比を描く人ではなかろう、という予感をもって臨みました。概ね予想通り。グロテスクに怪奇性を強調する趣はない。耽美的に歌うこともしない。前述、第一楽章の幻想的な広がりも比較的あっさり。小細工のない、スマートでストレートな音楽だった。素直に、ともに歩める。

「粘着質の演奏こそマーラー」という信者には多分物足りないと聴かれたかもしれない。でも、いろんなマーラー演奏があっていい。クレンペラー翁のなんとも変態的演奏もありだし、今日の演奏もありだな。優等生的と言われようが、この演奏が今の大野和士!それに立ち会う。文化会館のデッドな響きもプラスに作用し、マイシート(5FのLサイド)からは、どの楽器も過不足なく聴こえる。木管は浮かび上がり、第二楽章のトロンボーン(バストロ、存在感あり)もばっちりだし、オサムさんのTpは今日も全開。コントラバスが依然として快調。あっという間の時間だった。コンサートで、一瞬、音楽から離れ雑事などが頭をよぎることもあるけれど、この晩は、まったく演奏されている音楽に、すべて時間、没頭できた。最終楽章のストレートな盛り上がりには揺さぶられ、ちょっと涙が。堂々たるエンディング。

大野和士・都響、これから、どんどん進化していくのだろうな。来シーズン以降、どんなラインナップを音楽監督として作っていくのだろうか。とりあえず、このコンビの演奏、もう1回ベルリオーズ「レクイエム」(12日)が残っている。

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