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2015年03月26日02:15

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『島と人類』というタイトルから、H・G・ウェルズ『モロー博士の島』 を連想していたが、どうやらそうでもないらしい。

島と人類
足立陽
四六判ハード
定価1.300円+税 184ページ
ISBN 978-4-08-774596-5
装幀/緒方修一
装画/スティーブン・キャンベル





内容紹介 著者紹介 堀江敏幸×足立陽対談



内容紹介



人類学者の河鍋未來夫は講義の最中に突如全裸となり、停職処分に。彼の研究テーマは裸体主義であり、自身もヌーディストだった。その未來夫のマンションに、未來夫に賛同する仲間が訪れる。マンションの外では未來夫のスキャンダルを追う、週刊誌記者の田原が張っていた。ある深夜、田原はついに堂々と全裸でマンションから出てきた未來夫らをキャッチするが、何故か彼らは田原の取材車に勝手に乗り込んで……その道程でも続々と新たなシンパが裸体行脚の仲間に加わり、彼らはともにある「島」を目指すことになる。島には未來夫の妻・研究者のマリアがボノボの「アムニ」を連れて先に移住していた。そこでは人類史に新たなる1ページを刻むべく、ある壮大な計画が行われていた――。

   【略】


堀江 今名前が出てきましたが、足立さんの作品を読んだとき想い浮かべていたのは、ウエルベックの『ランサローテ島』や『素粒子』の世界でした。とくに後半、「島」へ向かうあたりで、絶対ウエルベックがお好きだろうと確信しました。彼の小説では、欲情と生殖とを分けて、遺伝子操作によるクローンが次世代をつくっていくわけですが、この作品は、人間の女性とボノボが新人類をつくるんですね。この設定にもウエルベックへのオマージュをすごく感じました。

   【略】

堀江 でも、ウエルベックの小説は、ショーペンハウアー的な哲学的命題を持ち出して、どんどん暗くなっていきますが、足立さんの作品は陽性です。じめじめとした感じがなくて、すこーんと抜けた「青い空」のような。島に行きつく前に、「あおいそら」(蒼井そら)を連呼する場面がありますが、ここには本気で裸になろうとする人たちのあいだでしか成り立たない、美しい絆がある。その明るさが、この小説の一番の魅力ですね。

   【略】

堀江 いくら新しい島でも、あれが今噴火している西之島では危険すぎる。他に無国籍な土地といったら、南極や北極、あるいは宇宙しかないわけでしょう。一方で、島への憧れ、あるいは島をめぐる想像力は、未来よりも過去へ向かうことが多い。太古の生き物が棲息しているイメージですね。ゴジラとか恐竜とか。でも、そこで人間が新しい種をつくろうとする発想は、すごいなと思います。

   【略】


足立 頑張ります。この物語のその後を考えてみたんです。ボノボの血を引いている新種の人類は、きっとあり得ないほどの性欲の持ち主なんですね。すると、この国の少子化問題は意外な形で解決するのかもしれない。でもその新種が見えない形で増えていくとなると、社会が動揺して、とんでもない差別や優生思想を生む可能性もある。歴史は繰り返す。ただし二度目は茶番として、みたいな。

堀江 ウエルベックも突き詰めれば優生思想をテーマにやってきていますよね。よりよい人類をつくるという考え自体が優生思想なわけですから。どう生き延びることができるのか、その可能性のなかにある一つの矛盾です。同じ土壌の中にボノボ化している人もいれば、先細っている人もいる。そこでどんな共通言語を見つけ出せるのかが鍵になる。

足立 異なるものをつなぐ言葉ですね。

堀江 先ほどの「青い空」こと、AV女優の蒼井そらさんの存在もひとつの共通言語かもしれない。国境を超えて、作中の男ならみんな知っている気象なわけですから(笑)。あの海上でのように、突然降って湧いたような共通言語に出会えるかどうか。

足立 はい。僕の小説の問題点は、最初に全体のプランとか全然なくて、浮かんだアイデアの四角いユニットを積んでいくような書き方なので、いつも言葉が後づけになるんです。堀江さんの小説を読ませていただいてすごいなと思うのは、小説全体の流れがあって、その中に言葉が言葉を生む運動がある。川の中で転がっていく石が、だんだん角がとれて丸くなっていくような。そういう文章の書き方にすごく憧れがあります。

堀江 非常にありがたいお言葉ですが、うまく流れる川に行けるとは限らないわけで、場合によってはずっと底に沈んでいなければならない。小説には、どこに進むかわからない霧の中を手探りで行くような姿勢も大切ではないでしょうか。

足立 その霧の中で何ができるか、模索してみたいと思います。

「青春と読書」2015年2月号掲載から
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://renzaburo.jp/shimato/


H・G・ウェルズ『モロー博士の島』

   【略】

ちなみにですが、訳者の解説で、似たようなテーマの小説のタイトルがいくつかあげられている中に、ミハイル・ブルガーコフの『犬の心臓』がありました。

まだ読んだことない本ですし、わりと最近新版が出たはずなので、近い内に読んでみたいなあと思っています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://ameblo.jp/classical-literature/entry-11363582900.html
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