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2015年03月17日14:14

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異次元:3/16 エマール、ステファノビッチ オールブーレーズプロ

Performers
Pierre-Laurent Aimard, Piano
Tamara Stefanovich, Piano
Program
ALL-PIERRE BOULEZ PROGRAM
Douze notations
Piano Sonata No. 1
Piano Sonata No. 2
Piano Sonata No. 3
·· Constellation-Miroir
·· Trope
Incises
une page d’éphéméride
Structures, livre II

社内でうちの部が担当している会議にかこつけた某ピアノリサイタル(別途日記)へのサクラ要員に狩り出されそうになったが、集客にある程度の目途がついてることが確認できたので、我関せず顔でこちらへ。エマール及び弟子によるブーレーズピアノフェスティバル。エマールはノタシオン、ソナタ1,3、une page d’éphéméride、ストルクトゥールは2台、後はステファノビッチ。
体力気力も減退気味だしブーレーズオンリーなんてスーパーガチなプログラム大丈夫かよ、と当初不安で、ノタシオンは管弦楽版をいくつか(当然、全てではないが)聞いているからまだついていけたものの、ソナタ1、それより何より2番が完全にアウト。休憩時には相当グロッキーだった。ブーレージアンな方々、仕事を中抜けしてソナタ2番を根を詰めて聴いた経験のある方ならこの感覚をお分かりいただけると思う(それとも、真のブーレージアンはあの作品を聴いて癒されるのか?)自分にとってやはりブーレーズは相当遠い。

それでも。後半の3番は瞠目、魅惑。
「遠い」「難消化性」の作品の常で、脳内再現できない。自分なりの演奏の方向性というか座標軸が持てない。リゲティとかだったら、ムジカリチェルカータや練習曲(と書くとなんか身も蓋もない響きだが、例えば悪魔の階段とか。)を聴いた直後は脳内で(正確性はともかく)ガンガンに自動再生が続き、自分の「理想的な」スタイルの演奏にどんどん上塗りされていくのに。
なので響きが消えた瞬間に忘れてしまうのだが、でもこの響きは惹きつけられる。エマールの絶妙なペダルワークが繰り出すオルガン、というより洞窟のような音響感。それが突然切り替わったりフェードアウトしたり。一切わからない言語で演じる名優の舞台に釘づけのような感覚。自分は本来は演奏の優劣を論じる資格はないのだが、それでもこの緊張感、この集中力、この音響世界はまさしくエマールの芸なのだろう。ステファノビッチも指が回る回る冴えたピアニストだが、このオーラ、カリスマは流石にまだない。
そしてクライマックスはストリュクテュール。これまた自分はこの作品を聴くのは初めてで、今回の演奏における管理された偶然性の効果やらこのペアの相乗効果について語る資格は一切ないが、冒頭説明(ちなみに、この演奏会では演奏者が演奏前に必ず作品について概要を説明していた。)のとおり、片方が厳格にスコア指定の演奏をしている中、もう片方が即興に近い掛け合いをして、その結果のポリフォニーを愉しむ、という趣旨は伝わった。疲弊した頭を更に極限までオーバーヒートさせる2,30分。流石20世紀の巨匠作曲家ブーレーズ、流石アンサンブル・アンテルコンタンポラン出身のコンテンポラリーの超大家。ちょっと明日以降に響くくらいに脳が疲れたし、別途それはそれで貴重な機会を逃してはいるが、こりゃあ異次元の経験でした。作品からこんなに遠い自分をぐいっと引き寄せた点、エマールは本年マイベストソリストにノミネート。



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