レコード会社時代、ドラクエのレコーディングを行った
エンジニアのT氏と、その頃の苦労話を聞く機会があった。
■マリオ、ドラクエ…なぜ昔のゲーム音楽は耳に残るのか?
(日刊SPA! - 03月14日 09:42)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=81&from=diary&id=3318919
すぎやま氏は音が3つしかなく、しかも効果音で1ch使うから
実質2音で作らなければならないことや、エフェクトが無く
ビープ音でどうするか苦労したようだが、楽しめた仕事だったそうだ。
また、当時のエンジニアなど、色々なアイデアを総動員して、
擬似的なリバーブ効果を狙ったものや、効果音が割り込んでも
元の演奏に復旧するプログラム、1chを切り替えながら
演奏させたり・・・。(だからピコピコになってしまう)
私も苦労した一人だ。
昔のBGMは、音の数の制限があるから、和音はアルペジオ
でしか表現できず、ドラムを使おうものなら、ベースとドラムは
1chで効果音と同じチャンネルを使っていたほど。
だから、アレンジを考えるとき、ベースの音色は
1.ベース
2.ベース+ハイハット(ノイズを使う)
3.ベース+バスドラ
4.ベース+スネア
これを切り替えながら演奏させるんだなぁ・・・
効果音が入ると、なくなってしまうけど、マスキング効果で
気にならないように調整するのだ。
コーラスやエコーの場合は、2ch使って交互に発音。
リバーブはキーオフしても音が小さく出ているなどなど、
もう、作曲というより、パズルのようになっていく。
そんな環境でも、場面によって一瞬で雰囲気を切り替える
必要があるので、メロディが最も重要になってくる。
しかし・・・、印象に残りすぎるメロディだと飽きられるのも早い。
そこで、雰囲気を重視したメロディで、印象に残らず、
繰り返し聞いても飽きないものが求められる。
だから、メロディだけ聞いても、ちょっとヘンとか、難解で
覚えにくいレベルになるのだが、このあたりは難しい。
コツは、口ずさもうとすると、途中で音程が分からなくなるけど
頭の中では、ちゃんと覚えているメロディ。
これ、伝えるのは難しいけど、「頭の中で無い音を補完」する
現象で、いわゆる音の「錯視」とでも言ったところでしょうか。
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8ビット時代のゲームは、その世界を自分のイマジネーションで
広げて遊ぶことが出来た。空想力がBGMにも影響していたんだと思う。
でも、ゲームの世界が現実に近くなり、音楽も現実になってくることで
映画のような作りになってくる。
こうなると、一方的に受け取るだけで、イマジネーションの面白さは
失われつつあるなぁ。(だからマインクラフトがヒットしたのか?)
どちらにしても、ゲームのBGMは、場面の雰囲気を明確に表現
しているので、使いやすく、その根底にあるものも、ちゃんと考えられて
作られているのだ。
しかも、無い音を補完せざるを得ない作りが基本になっているから、
ただ音楽を鑑賞するのと、ちょっと脳の使い方が違うんだと思う。
後にアレンジバージョンが出たとき「これだ!」と思った人もいれば
「なんか違う」と思った人もいるはず。イマジネーションの違いだろうね。
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