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2015年02月14日19:18

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「0.5ミリ」

本日は、安藤桃子の新作。

…と言っても思惟太は『カケラ』を観ていなくて安藤桃子は初体験。
妹 安藤サクラがヒロインで
父 奥田瑛二がエグゼクティブプロデューサーで
母 安藤和津がフードスタイリストで
共演でサクラの義父母 柄本明と角替和枝が出演しているから
一家総出…って感じですね(笑)。

いいですっ!
これ、昨年度公開の映画という位置付けだろうけど
昨年観ていたら
「ベスト20」入り確実の優れた映画でした。

安藤サクラ
思惟太が初めて彼女を観たのは『俺たちに明日はないッス』だったと思いますが、
脇役にもかかわらず その時から強烈な印象で
あれから7年
すごい女優さんになったなぁ…!





「0.5ミリ」 ’13


監督・脚本:安藤桃子 撮影:灰原隆裕 照明:太田博 美術:竹内公一
録音・整音:渡辺真司 音楽:TaQ 歌:寺尾紗穂
m:津川雅彦,坂田利夫,柄本明,織本順吉,井上竜夫,東出昌大,ベンガル
f :安藤サクラ,木内みどり,土屋希望,角替和枝,草笛光子,浅田美代子


実妹 安藤サクラがおしかけ介護ヘルパーを演じる安藤桃子の新作。
派遣先の家庭で起こった事件のせいで解雇され寮も出されたサワは
下ろしたばかりのなけなしの貯金の入ったバッグも失って路頭に迷うことに。
サワは町でわけありの不良老人を見つけては
おしかけヘルパーとしてじいさんの住まいに侵入し家事援助を始める…
というお話。
なんかね…出会ったじいちゃんから貰ったぶかぶかのコートを羽織り
同じく別のじいちゃんから貰ったいすず117クーペを駆る安藤サクラが
クリント・イーストウッドみたいなのだ。
“さすらいのおしかけヘルパー”である。
で、彼女 山岸サワは立ち寄る先々で
社会から疎外され ひねくれるしかない老人たちの日常に介入して
彼らを元気にしてしまうのだ。カッコイイ(笑)。
そうして次の場所へと去って行くサワはいつも老人たちから贈りものを貰う。
コートだったり 車だったり メッセージの入ったテープだったり。
それらはものの形をしているけれども
老人たちのサワへの信頼や愛情や感謝であって、
信頼や愛情や感謝が生まれる、育まれる、心の距離を
「0.5ミリ」と言っていいのだと思う。
サワはずうずうしくてあつかましくて ずかずかと他者の事情に入り込むし
言葉づかいや態度も 丁寧でも上品でもなくて
時に老人たちをバカにしたような振る舞いや言辞もあるのだけれど、
失礼で鬱陶しい面倒な事態が生まれるエリアまで踏み込んで来るからこそ
サワは信頼や愛情や感謝に値する。
だってサワは
それぞれの老人の傍にいて 彼らの事情を共に受け止めることに真摯だから。
昭和30〜40年代までどの横丁にもたぶん存在した
“おせっかいなおばちゃん”の胡散臭く厄介な感じ―が
この距離感に似ているのかもしれないな…と思う。
あの人たちが存在できる余地がなくなった頃から
横丁のセーフティネットは壊れたんじゃないだろうか…?
家庭はもちろん隣近所にもお年寄りや子どもを許容するゆとりがなくなって
ここに登場するじいちゃんたちのように
(ひいては自殺する片岡家の雪子やその息子マコトのように)
社会から孤立を深め “私”を肯定できなくなってしまう人たちがいる。
サワは 彼らの傍にいて
そのままでいい、そのまま堂々と生きていていいんだよ…と
言葉で言うのではなく気付かせてくれる。
生きるのが楽になる。カッコイイ(笑)。
別にサワが“スーパーヘルパー”なんじゃなくて、
傍にいる―というのは、家を暮らしやすい環境に整えて
手をかけて料理を作り 一緒に食べて
「お風呂どうぞ」「お先します」と声を掛け合い
暖かい床で眠ること。
こんな当たり前のことが できなくなっているんだな…今。
介護技術だけでいうなら
たぶんサワより優秀なヘルパーは大勢いるだろうけれど、
“0.5ミリ”の距離を踏み越える感覚と勇気を持ったヘルパーは
稀少だろう。
だって介護ヘルパーがヒロインの196分の長尺の映画が
面白くて目が離せないんだから。サワがカッコよくて(笑)。
サワを まるでクリント・イーストウッドみたい…!と思わせた時点で
安藤桃子は成功している。
サワを演じる安藤サクラが素晴らしいのはもちろん
高知の風光もいいし 他の俳優たちの配役も芝居も絶妙。
津川雅彦の7分ワンカットの迷走する独白は圧巻。
優れた映画である。
秀作。
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