何とも無粋な表題をつけたものです。アベノミクスを考えていたら、もう一つ「キーワード」が出てきました。手短に言えば、日本が高度成長を遂げた背景には「ビジネスの基礎＝陸軍」がしっかりできていたからこそ、その上に「工業技術の進歩＝海軍」と「マーケッティング＝空軍」の充実を図り、世界第二の経済大国にのし上がったのです。ところが、「失われたの２０年」を経過して、肝心の「ビジネスの基礎＝陸軍」を見失い、やたらと「空軍」や「海軍」の軍備にばかり目が行ってしまって「陸軍」がおろそかになってしまってはいないかと思います。
ご存知のように、東日本大震災での「陸自」の活躍は見事なものでしたが、それに引き替え「海自」や「空自」は出る幕がありませんでした。イラクやベトナムでもアメリカ軍は圧倒的な破壊力で軍艦を派遣し、爆撃を繰り返しましたが、結局陸軍がサダムフセインを捕まえなければ、何も結果は出ませんでした。今、シリアでの「イスラム国」との戦闘でも、空爆だけではほとんど降伏させることはできません。
戦後の物不足の時代には、貧しい庶民の欲しがるものを手っ取り早く作って、すぐに売却して現金化する「自転車操業」しか道はありませんでした。宣伝するにもテレビはなく、高級なものを作るには機械もなく、とりあえずナケナシの資金とわずかばかりのかき集めた資材、それにトンカチやのこぎりで作る作業員。みんな必死でした。「失敗作は許されない」「売れ残りは許されない」と言う背水の陣でその日暮らしをしていました。ですからみんな「自分が欲しいもの」「自分が作りたいもの」は脇に置いて、まず「買ってもらえるもの」「お客が欲しがるもの」を作りました。毎日がお客様との格闘でした。つまり「白兵戦＝陸軍」だったのです。
しかし、世の中が落ち着いてくると、資金も資材も設備も整ってきて、お客もさらに高額で便利なものを求めるようになりましたし、それを告知するために便利なテレビも普及して、「大量生産大量販売」の時代を迎えました。ハイテク技術を駆使して丈夫で良い品質の商品を大量に作って売価を下げる「技術革新＝海軍」と作った製品を莫大な宣伝費をかけて浸透させ、流通を整備し、アフターサービスを徹底する「販売網整備＝空軍」で一気にシェアを高めて、会社の規模を拡大しました。その結果、物を作っている会社と物を買ってくれる顧客との間の距離が大きく開いてしまいました。会社はお客の欲しい商品よりも、自分たちが作りたい商品を作るようになり、お客は「一品生産の自分仕様の高額商品より、安価な大量生産品を買う」ことになりました。あたかも「空自」と「海自」さえあれば「陸自」は要らないかのような錯覚を持ち、「ガラパゴス商品」まで突き進んだのです。
僕の息子が僕の知らない間に転職しました。その理由を聞いて唖然としました。息子がいた会社はあの「打撲や肩こりの湿布薬」で有名な会社で、辞めた理由は「新しく通販ルートの開拓を命じられた」からだといいます。僕ははらわたが煮えくり返りました。転職先の会社は伸び盛りの会社で、待遇はぐっと良くなるものの、会社の体制は未完成で苦労が多いといいます。何故はらわたが煮えくり返るのかと言うと、彼が全く「顧客のこと」を知らないからです。
あの「湿布薬」はいったい誰が使っているのか？その人たちはその商品にどんな不満を持っているのか？
�ー腓文楜劼惑浦辰簑破个把砲澆魍个┐襯好檗璽珍�手、肩こりや神経痛に悩むお年寄りを主な顧客としています。
��貼り付け面のセロファン紙がはがしにくい。貼りたい患部に自分一人で貼れない。薬局が大型店に成ったり、スーパーの中に入って、近所の薬局のシャッターが閉まったままになっている。
この「陸軍」のような泥臭さい相手との接触をしていないと、いくらコマーシャルを流しても、物は売れません。ネスカフェと言うコーヒー・メーカーが「ネスカフェ・アンバサダー」と言う簡易式「カセット・コーヒーメーカー」を売り出してかなりの実績を上げています。スーパーの食料品売り場で夕方「半額」と言うラベルを片手で張り付ける機械があります。ロール紙に湿布薬を並べて貼り付け、「ラベラー」のような仕組みで売り出せば、顧客は非常に楽にたくさん張ることが出来ます。何キロも離れた大型店まで老人やスポーツ選手が「湿布薬」を買うためにわざわざ行かなくても、配達してくれる仕組みがあれば顧客は時間の節約になるのです。
このように、大手企業は「お客目線＝陸軍」を無視して、「自分たちが作りたい商品＝海軍」「自分たちが売りたい方式＝空軍」をお客に押し付けるだけで、勝てると思っていることが問題ではないかと思います。「陸軍」から出発したセブンイレブンや「陸海空三軍を揃えたユニクロ」は着実に業績を伸ばしています。今、肝心なことは、「今一度、自分の顧客は誰なのか？そのお客様は何を望んでいるのか？」を「現場の白兵戦」で肌感覚で掴むことではないかと思います。歌人が現場で「歌枕を見つけて感動」せずに、「写真やビデオ」を見て和歌や俳句を作るような「手抜き」では「歌のレベル」が低下します。「岩盤規制の破壊」その前に「岩盤頭の破壊」があるように思います。
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